VirtustreamがNTT Comと提携して国内データセンター開設を発表:SAPなど基幹アプリケーションにフォーカス
米国のユニークなクラウドサービス、「Virtustream」が、NTTコミュニケーションズ、EMCジャパンと提携して、国内データセンターからサービスを提供開始すると発表した。99.999%の可用性で、SAPなど、基幹アプリケーションのクラウド移行に焦点を当てている。
米国のユニークなクラウドサービス、「Virtustream」が、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、EMCジャパンと提携して、2017年春に、国内データセンターからサービスを提供開始すると発表した。Virtustream、NTT Com、EMCジャパンの3社は協力してサービスを開発、デルも含めてそれぞれの販路を通じ、これを販売する。
Virtustreamは、同名の企業が提供してきたサービス。同社はEMCに買収され、現在はデルとEMCの統合に伴い、Dell EMC傘下のブランド/独立法人となっている。
日本では伊藤忠テクノソリューションズがソフトウェア(「xStream」)のライセンス供給を受け、2016年から「CUVICmc2」という名称でサービスを提供してきた。Virtustream CEOのロドニー・ロジャーズ(Rodney Rogers)氏は2016年5月、「自社ブランドでのサービスもできるだけ早く日本で提供したい」と筆者に話していた。
今回の発表では、NTT Comの日本国内データセンターを活用し、デルおよびEMCジャパンは「Virtustream」ブランドでサービスを展開する。NTT ComはEnterprise Cloudのサービスメニューの1つとして販売するという。今回はNTT Comへのライセンス供与でなく、Virtustreamも投資して共同で事業を展開していく。
Virtustreamはこれまで、米国および欧州でIaaS「Virtustream Enterprise Cloud」、ストレージサービス「Virtustream Storage Cloud」を提供してきたが、今回の協業では、日本のデータセンターからこの2つのサービスを提供する。
インフラとしてはNTT ComのEnterprise Cloud上でハイパーコンバージドインフラを動かす。この上に、Virtustreamのソフトウェアを稼働して提供する。関東・関西に対となるノードを配置、災害復旧(DR)は標準で提供するという。NTT ComのEnterprise Cloudは、既にOpenStackベースの共有型クラウド、VMware vSphere/Hyper-V/ベアメタルの専有型クラウド、そしてコロケーションサービスを提供。これらに、Amazon Web Services、Microsoft Azureなど外部のパブリッククラウドを含めて、全てをグローバルにVPNでつなげられることも1つの特徴となっている。新サービスでは、このネットワーク機能を活用できる。
新サービスは共有型だが、セキュリティとコンプライアンスについては監視をはじめとするさまざまな対策をとっており、数々の認証を獲得しているという。
Virtustream Enterprise Cloudは、サービスレベルと効率の両立を目指したサービス。基幹アプリケーションのクラウド移行を特に重要なターゲットとしており、海外ではSAPとも提携して、SAPおよびSAP HANAの移行サービスを提供してきた。
VirtustreamはVMware vSphereをベースとしており(KVM対応もある)、その可用性やサービス品質維持関連の機能を活用する。加えて大きな特徴となっているのは、CPU、メモリ、ストレージI/O、ネットワーク帯域幅を組み合わせたきめ細かな単位で、リソース管理を行う「µVM」と呼ぶ技術。
これにより、サービス提供者にとっての効率も高まる一方、課金は仮想マシンタイプとその数ではなく、µVM単位であるため、「使った分だけの支払い」により近い従量課金を実現している。
サービスレベルに関しても、µVM単位の監視に基づき、可用性だけでなく、アプリケーションの遅延レベルで保証を提供する。パフォーマンスに応じてリソースを再割り当てすることで、サービス品質を確保する。可用性に関しては最上位プランの場合、99.999%。同プランにはDR(災害復旧)機能が含まれ、その目標復旧時間(RTO)は4時間、目標復旧地点(RPO)は15分だという。
Virtustream Storage Cloudについては、99.9%の可用性と最高99.99999999999%の耐久性を発揮するといい、アクセス頻度および可用性ニーズに応じて複数の選択肢を提供している。EMCのストレージ装置あるいはソフトウェアとの間で、データの自動階層化管理も実現できる。基本的にはオブジェクトストレージであり、IoTなどにも適用しやすいサービスとなっている。
VirtustreamのCOOであるサイモン・ウォルシュ(Simon Walsh)氏は、「(米国などでは)ちょうど多くの企業が10年といったアウトソーシング契約の終了時期に差し掛かっている」と話し、基幹アプリケーションのクラウド移行ニーズが高まってくると話した。
[追記] 実は、Virtustreamの見えにくい魅力の1つに、「Playbook」の存在がある。同社は特にSAPのクラウド移行を多く手掛けてきたが、Playbookでは、そのベストプラクティスをドキュメント化し、標準化されたプロセスとして組み立てている。NTT Comは200人規模のSAPスペシャリストを擁し、同社としてもSAPの移行案件を手掛けてきたが、複雑な個別対応となりがちだった。今回のサービスではVirtustreamのPlaybookに基づくプロセスにより、効率よく的確な移行ができるようになり、サービスとしてスケールしやすくなるという。
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