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「とうふ指数」で廃棄ロス3割減も、気象情報を売上予測に生かす日本気象協会が説明

豆腐を主体とした食品を製造・販売する相模屋食料は、気象情報を活用した「とうふ指数」に基づく売上予測の適用で、廃棄量を約30%削減できたという。この予測には、SNS分析を組み込んでいる。

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 豆腐のような商品は、気温による売り上げの変動が大きく、賞味期間が短い。一方、工場生産のリードタイムは2日で、当然ながら見込み生産になる。このため廃棄が発生しやすい。豆腐を主体とした食品を製造・販売する相模屋食料は、気象情報を活用した「とうふ指数」に基づく売上予測の適用で、廃棄量を約30%削減できたという。


日本気象協会の環境・エネルギー事業部エネルギー事業課課長、森康彰氏

 このプロジェクトに関わった日本気象協会の環境・エネルギー事業部エネルギー事業課課長、森康彰氏が、2017年5月23日に東京で開催された「SAS FORUM JAPAN 2017」で説明したところによると、この売上予測におけるポイントの1つは「体感温度指数」だという。

 体感温度指数は、「暑さ」「寒さ」に関するツイート数の変動分析から生み出された新たな変数。気温による需要変動が大きい商品でも、購買行動に至るには「体感」気温が重要な役割を果たすとの認識から、さまざまな商品に適用できる指数として、日本気象協会が開発した。「これによって、売上予測の精度を大きく向上することができた」(森氏)。


Twitterのつぶやきから、「体感」温度を知る

 とはいえ、個々の商品について見ると、体感気温に対する売り上げの感度は異なり、曜日や特売の影響も受ける。日本気象協会では、これらの要素を加味して過去の売り上げデータを機械学習にかけ、商品ごとに「とうふ指数」を開発。これを生かした生産調整で、前述の廃棄ロス3割減が実現したという。


「とうふ指数」を生産調整につなげる

 日本気象協会がSASの協力を得て開発した機械学習による売上予測は、豆腐のような日々の需要変動に生産を対応させなければならない商品だけでなく、いわゆる季節商品にも適用できるという。

 森氏が例として挙げたのは冷やし中華つゆ。生産リードタイムは1〜2週間で、賞味期間は長いものの、売れ行きに合わせた在庫調整に課題がある。また、季節の終盤になると、需要の読み違いによって終売時に大量の廃棄が生じてしまう可能性がある。

 従来の手法による売上予測では、独に季節の終盤における予測と実需との乖離(かいり)が大きくなりがちという。対して新手法では、図のように実需にかなり近い予測ができ、この結果、終売時の廃棄ロスを約2割減らせることが分かったという。


新手法では、季節終盤の予測の乖離(かいり)を縮小できたという

 森氏は、多くの食品で、気象情報を生かした需要予測をサプライチェーン全体で共有し、これに基づいて全体の最適化を行うことで、廃棄ロスを大きく減らせる可能性があるとする。今後もさまざまな食品で、同様のプロジェクトを進めていきたいと話した。

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