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キユーピー、機械学習を生かした原料不良検査は、「現場力を生かすためのAI」の第1章Google Cloud Next Tokyo 17(1/2 ページ)

キユーピーは、ベビーフードの原料検査で機械学習/AIの活用を進めている。同社の取り組みはこれにとどまらない。現場力を生かすためにAIを活用、これによって企業価値をさらに高めていくとしている。

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「AIは使い物になるかどうか分からない、それなら試してみよう」

 食品メーカーのキユーピーは、TensorFlowを使った機械学習によるベビーフードの原料検査を、2017年8月に稼働開始する。検査対象は「ダイスポテト」と呼ばれる、細かなサイコロ切りにしたポテトが中心。カット後に、皮が付着していたり、変色していたり、形状が異なったりしているものを取り除く。


キユーピー生産本部次世代技術担当担当次長の荻野武氏

 形や色が多少異なるからといって、安全でないというわけではない。だが、「安全だからといって、必ずしも安心につながるわけではない」と、キユーピー生産本部次世代技術担当担当次長の荻野武氏はいう。ブランド価値を維持するためには欠かせない作業、ということになる。

 とはいえ、微細なポテト片が多数、ベルトコンベヤー上を流れてくるなかで、色や形状が多少異なるものを見つけ排除するという作業は、製造業における検査で一般的に使われるマシンビジョンシステムなどでは対応できない。人がやらなければならないばかりか、判断が微妙であるためベテランの人が担当せざるを得ないという。集中力を必要とし、作業者には大きな負荷がかかる。

 「担当者は毎日、大変な思いをしながらやっている。心の中では他のことをやりたいと思っているかもしれない」(荻野氏)。商品の増産をすれば、同じ苦労をする人を増やさなくてはならなくなる。

 この、大変な仕事の自動化を、荻野氏たちは機械学習/AIに関する同社の取り組みの第1弾として選んだ。ちょうど、AIブームが高まってきていたが、「AIは使い物になるかどうか分からない、それなら試してみよう」と考えた。大変な仕事を減らし、現場の人々がもっと生きるようにしたい。そのために、人が培ったノウハウを機械に移植して代行させ、それでも足りない部分があれば、人がサポートすればいいという思いだった、という。

 今回の原料検査システムについては、2016年の夏から検討を開始した。各種の機械学習ライブラリを、性能、汎用性、グローバル性、マルチプラットフォーム性などの観点で比較した。マルチプラットフォーム性については、PCだけでなく、クラウド、組み込み機器などで動かすことを想定した。

 結果として、TensorFlowが優れていると判断。そこで、TensorFlowの生みの親であるGoogleの日本法人であるグーグルジャパンに相談。グーグルジャパンとそのパートナーであるブレインパッドの支援で、プロジェクトが進むことになった。


人手では辛い作業を自動化する

 「TensorFlowは優れた機械学習ライブラリだが、自由度が高い一方、最適なアルゴリズムを見いだすのが難しい」(荻野氏)こともあり、機械学習に関しては、ブレインパッドに協力してもらうことにしたという。

「われわれの強みは現場力。AIではない」

 一部では、機械学習/AIに関するノウハウをユーザー企業が自社で蓄積し、自社のコアコンピタンスとして育てていくべきだとする論調もある。だが荻野氏は、「われわれの強みは理念に立脚した現場力であり、AIではない」と言い、今後もキユーピーとしては利用に徹するつもりだと強調した。

 ダイスポテトの検査システムは、ハードウェアを含めた構想を2016年12月に作り、ベルトコンベヤーとカメラ、コントローラ、パソコンを組み合わせたプロトタイプは約2カ月後に完成した。

 機械学習については、上記の通り不良品の識別が難しい点が根本的な課題だったが、これを「逆転の発想」(荻野氏)で乗り切った。つまり、不良品を学習させるのではなく、良品の画像を大量に読み込ませて、「良品とは何か」を学習させることにした。従って、現実のライン上では、「ダイスポテトの良品」ではないものは、全てはじき出すことになる。

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