第48回 ものづくりを良くしていきたい――たどり着いた、QAエンジニアの矜持(きょうじ):マイナビ転職×@IT自分戦略研究所 「キャリアアップ 転職体験談」
「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなたのキャリアプランニングに、ぜひ役立ててほしい。
29歳で転職し、現在32歳。約2年間で「Gunosy」QA(Quality Assurance:品質保証)チームの礎を築き、情報キュレーションサービス「グノシー」など同社が提供するスマートフォンアプリのクオリティーを担保するエンジニアがいる。
関根龍太さんは、これまでに4社の企業を渡り歩いてきた。その都度学び、前進してきた彼は、社会人になった当初からの“思い”を、今Gunosyで実現している。関根さんが実現した思いにどのような経緯でたどり着いたのか、転職ストーリーを聞いた。
【転職者プロフィール】
関根龍太さん(32歳)
Gunosy 開発本部 開発・運用推進部 副部長(2015年5月入社)
【転職前】
東京工芸大学工学部卒業。回路CAD、スマホアプリの開発などに従事した後、QAエンジニアに。ソフトウェアの第三者検証会社でキャリアを積み、マネジメントも経験
【転職後】
GunosyのQAチーム立ち上げメンバーとして入社。現在はQAチームのマネジメントを行いつつ、自らもQAエンジニアとして、Gunosyの「最後の砦」を担う
バグが少ないと、達成感があった
“新しい物好き”の関根さんが初めてPCと向き合ったのは、中学生のころ。両親が購入したPCで、いろいろな人とチャットをしたり、オンラインゲームを楽しんだりした。それをきっかけに理系の進路を選び、ITの道へ。大学では工学を専攻し、電気電子回路、機械工学、プログラミングとさまざまな分野を学んだという。
「どの分野も楽しかったのですが、世の中の主流はソフトウェアになると考えていたので、プログラミングを主に学びました」
最初に就職したのは、電子回路設計などを行うシステムインテグレーター/パッケージソフト開発企業だった。関根さんは回路設計を行うパッケージの開発部隊に配属され、要件を機能仕様に落とし込み、実装、開発テストまで行う業務に携わる。大きな機能追加を担当し、「あまりバグが出なかったりすると、楽しく、達成感がありました」と振り返る。
あたためていた思いを呼び覚ました1通のメール
次の会社は転職サイトで見つけた。社風や就業環境についても口コミサイトなどを駆使して事前に調べた。
関根さんが選んだのは、スマートフォンアプリを制作する企業だった。スマホアプリの開発は、iOS/Android共にイチからのスタートで、苦労しつつ覚えたが、思っていたよりはすんなりとできるようになったそうだ。
アプリ開発を行いつつプロジェクトマネジャーとしての役割も担い、短期間で重要なメンバーになる。信頼できる上司もいた。しかし、関根さんはこの企業を1年程度で離れることになる。
「仕事に慣れてきたと実感し始めた1年目の終わりごろに、信頼していた上司が社外常駐になり離れてしまいました。頑張っても評価してくれる人がいなくなり、それにもかかわらず仕事量は増え、スキルアップは見込めない……」
そんなときに、以前登録していた転職サイトのアカウントに、ある企業からのメッセージが届いた。QAを専門に行っている企業だった。
「実は、新卒で就職した企業で会社説明を受けたとき、1番気になったのが『品質管理を行う部署』でした。最終的な品質を担保し、使いやすい製品を作ることに興味がありました。残念ながら配属の希望は通りませんでしたが、それでも新卒のころから、こういう仕事に就きたいという思いはずっとあったように思います」
そうして選んだ次の転職先は、スマートフォンアプリやWebサイト、ゲーム、パッケージソフトウェアなどさまざまなプロジェクトのQA業務を請い、専門のチームがブラックボックステストを行い、利用者目線で問題を洗い出す、QA専門企業だった。開発エンジニアからQAエンジニアへの転身には、関根さんなりの「限界突破」の考えもあったようだ。
「私は理系の学部を卒業しましたが、プログラミングを系統立てて学んだのは社会人になってからです。学生時代から努力していた同期はもっと速いスピードで成長していて差が広がるばかり。劣等感さえ感じていました。そこで、自分にしかできない、何か別の価値で業界に携われないかと考えるようになりました。それが、QAエンジニアだったのかもしれません」
もっと良くしたい、もっと良くなりたいという思い
「開発者の視点と、QAエンジニアの視点は別です。だからこそ、QAエンジニアは重要なんです」と、関根さんはQAエンジニアの必要性を語る。
「開発側はどうしても『作る側の論理』を優先させがちですが、QAは『使う側の論理』で品質を見ます。動くだけではダメで、使い勝手を見る。この考え方が自分に合っていると感じました」と関根さんは分析する。
これまでのマネジメント経験やプロジェクトマネジャー経験が生きた。関根さんの交渉能力も評価された。QAという立ち位置こそが、自分にとってぴったりだという実感もあった。
すると、さらに「もっと良くしたい」という思いが湧いてくる。
「QAを受託する企業は、テストが終わればプロダクトと関わりがなくなってしまう」という構造的な問題を何とかしたくなってきた。オリジナル製品を内製し、QAとしてずっと携わる仕事ができないだろうか。第三者ではなく「自分ごと」として携われる道が。
そのとき声を掛けてくれた企業が、Gunosyだった。
QAエンジニアの矜持(きょうじ)とは
そのころのGunosyはまだ、立ち上がったばかりのベンチャー企業だった。
「当時はまだ、『アプリがよく落ちる』という声が多く、品質を向上しよう、そのためにQAチームを内製化しようという話が出たタイミングでした。自社でQAチームを抱えているとアピールしている企業は今でも少ないですが、当時はもっと少なかったのです。品質に対して真剣に取り組んでいるとアピールするのは重要なことですし、何よりQAチームの立ち上げに携われることにやりがいと魅力を感じました」
GunosyのQAチームは現在3人。関根さんたちのOKが出ない限り「グノシー」や「ニュースパス」の新機能はリリースされない。
仕事柄、開発チームとかなり険悪な雰囲気になるのではないかと危惧される立場だが、社内の評判によると、関根さんの人柄でコミュニケーションは円滑に行われているという。関根さんは「開発エンジニアが品質の重要性を理解しているので、仕事はとてもやりやすい」と述べる。
関根さんは転職を経てキャリアを軌道修正し、自分にとって理想の仕事とは何かを常に模索してきた。そしてたどり着いたのが、「ものづくりを良くしていきたい」「ユーザーが使いにくいアプリを世に出したくない」という、品質に対するこだわり=QAエンジニアの矜持(きょうじ)だった。
QAエンジニアは、マルチタスクが得意で、ひらめきや勘、想像力のある人が向いていると関根さんは考えている。「新しいもの好きで、いろいろな考え方を許容できるような人。『これ、何でだろう?』と思ったらすぐに調べられるような人」がQAエンジニアに向いていると関根さんは言う。
願いや思いはすぐには形にならないことが多い。だが、心の片隅でいつもその願いや思いを意識していると、より良きタイミングでヒントになったり、状況を打開するきっかけになったりする。
社会人になりたてのころに感じた「品質」への思いが、今の関根さんの仕事につながっている。このストーリーが、もしかしたらあなたの人生においても、変化のきっかけになるかもしれない。
Gunosy 新規事業開発室 執行役員 CTO 松本勇気氏に聞く、関根さんの評価ポイント
関根入社前の社内では、品質、特にiOSやAndroidアプリのクラッシュがDAUに与える影響など、定量的にもQAの重要性が認知されつつありました。一方で、開発者が兼任でQAを行うような体制で、改善がなかなか難しい状況でもありました。
関根が入社してからは社内の品質意識が大きく変わり、品質に関する数値ではさまざまなKPIが1桁以上の安定化を果たし、かつ実質のリリースの速度はむしろ上がっているのではないかと思います。ここまでのグノシーというプロダクトの成長を支えてきたもの、そしてGunosyという組織としての品質意識を高めていくということ、その柱として関根率いるQAチームの存在は大きいものです。
現在はプロダクトが増えていく中、関根主導で「どういう体制であれば、プロダクトの成長が加速する品質保証になるか」を、新規事業含め意見をもらいつつ、QAチームをより拡大しています。今後もGunosyという会社が出すプロダクトの品質と改善速度を担保する「攻めるQA」として活躍を期待しています。
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