ミッチェル・ハシモト氏に、自動化とクラウド、そして日本について聞いた:HashiCorp共同創業者インタビュー(1/2 ページ)
Vagrantから始まったミッチェル・ハシモト氏の旅。同氏が共同創業したHashiCorpは、多様なクラウドインフラの利用を抽象化し、自動化する包括的な製品群を提供するようになっている。一方、HashiCorpは、ハシモト氏の父の国である日本での本格的活動を開始。国内のコミュニティおよびパートナー支援を進めている。HashiConf ‘17の翌週に来日したハシモト氏に、HashiCorpの「今」を聞いた。
ミッチェル・ハシモト(Mitchell Hashimoto)氏が7年前の2010年に、アルバイトで顧客の多数のコンピュータを設定する作業を自動化するために作った「Vagrant」は、インフラ構築をコマンド1つでできるツールとして、開発者に大人気となった。
ハシモト氏が大学の同期生と設立したHashiCorpは、さらにパッケージングの「Packer」、インフラ構築自動化の「Terraform」、シークレット管理の「Vault」、障害検出・復旧の「Consul」、アプリケーション大規模デプロイメント/クラスタ管理の「Nomad」を提供。2017年9月18〜20日に開催したイベントHashiConf ‘17ではポリシー管理機能「Sentinel」を発表した。
一方、HashiCorpはHashiConf ‘17で販売パートナープログラムを発表。エンタープライズ向け事業の強化を進めている。
同時にHashiCorpは、ハシモト氏の父の国である日本での本格的活動を開始。国内のコミュニティおよび、発表したばかりのパートナープログラムに基づくパートナー支援を進めている。
HashiConf ‘17の翌週に来日したハシモト氏に、HashiCorpの「今」を聞いた。
HashiConf '17における最大のメッセージとは
――「先週開催したHashiConf '17におけるメッセージを要約して、5分で話せ」と言われたら、どう答えますか?
ハシモト氏 やってみましょう(笑)。
今年の大きなメッセージは、過去12カ月にこれまでで最多のオープンソースソフトウェアのアップデートを行ったことです。会社としては5年目、ソフトウェアは7年目ですが、純粋なオープンソースで過去最多のリリース、機能改善を実施しました。これは、ビジネスとしても伸びているからこそ可能になりました。ビジネスがうまくいっているからより多くの人材を獲得でき、オープンソースへの投資も増すことができました。
次のメッセージは製品発表です。過去数カ月にアップデートしたいくつかの製品を除く全てについて、アップデートを発表しました。
より大きなテーマとしては、コラボレーションの強化と、企業におけるガバナンスおよびコンプライアンスのニーズへの対応があります。
――新発表のSentinelは、ガバナンスニーズに向けたものというわけですね。
ハシモト氏 そうです。これ自体については後で話せるかもしれません。
(コラボレーション強化に向けては、)他にも「Terraform Module Registry」を発表しました。再利用可能なインフラ構築コンポーネントのレジストリで、1週間足らずのうちに50以上のモジュールが登録されています。ユーザーは出来上がったコンポーネントをすぐに使えます。本番で使う前に、他の人たちがどんなやり方をしているのかを学ぶことにも使えます。例えばMicrosoftはMicrosoft Azureモジュールを提供しています。これによって「Azureをどう使ってもらいたいか」を表現しています。Microsoftとは、パートナーシップも発表しました。
エンタープライズ製品(注:Terraform、Vault、Nomad、Consulにはエンタープライズ版がある)の全てで機能改善を行いました。
そして「Sentinel」を発表しました。Sentinelはエンタープライズ製品全てに適用できる機能です。(HashiCorpが注力してきた)自動化は、5年、10年前には難しかったことを簡単にしました。一方で、5年、10年前にはなかったような新たな課題をもたらしました。例えば(自動化ツールに)ゼロを1つ余計に入力してしまったがために、必要な数の10倍のサーバを自動的に作り出してしまうということが発生します。
Sentinelは自動化されたシステムに対し、ポリシーを自動的に適用します。人を介在させてチェックするのでは時間がかかります。代わりにポリシーを書いておいて、自動的に適用すれば、ポリシーチェックを自動化のスピードに合わせることができます。
以上が、5分での要約です。
7年前に始まった旅は、どの地点にたどり着いたか
――では、7年前に(Vagrantで)始まったあなたの「旅」は、どれくらいの地点までたどり着いたのですか?
ハシモト氏 私たちは、当初私が思い描いていたよりも、はるかに遠くまで来たと感じています。5年前にアーモン・ダッドガー(Armon Dadgar)と会社を始めたとき、私たちは「自分たちのソフトのどれかを誰かが使ってくれたら、ラッキーだよね」と話していました。
なぜなら、私たちは「人々がクラウドを使うようになる。さらにこれまでよりもはるかに多くのアプリケーションを書くようになる」という大きな賭けをしました。この2つのことが起こるという前提で考えると、アプリケーションを管理し、クラウドにデプロイするための良いツールが存在していない、と考えました。そこで私たちは、「数年後に、モダンなデータセンターにおけるアプリケーションの動かし方を実現する原動力になりたい」と考えました。
HashiConf '17で、私は多数の顧客を紹介しました。そのうちのいくつかは、壇上でHashiCorpについて語ってくれました。例えば、Fortuneの大企業ランキングで5位以内に位置する企業が、全てのサーバにConsulを適用していると話しました。ほんの7年間で、これまでの広がりとインパクトを発揮できたことは、かつての想像をはるかに超えています。
――あらためてHashiCorpの製品群を要約し、「多様なインフラを抽象化する共通な統合的API群を提供するもの」と表現したとしたら、この表現で不足している部分は何ですか?
ハシモト氏 その表現は特にTerraformに当てはまると思います。それぞれの製品が解決する具体的な問題への言及が不足していると思います。ですが、大まかなゴールとしては合っています。私たちは、単一あるいは複数のクラウド環境の利用を、クラウド基盤提供者に直接結びつかない形で実現することを、全製品の目標としています。一方で、例えばVaultは、サービスとしてのセキュリティを実現しています。暗号化、シークレット情報や証明書の管理、アイデンティティ管理など、クラウド基盤提供者の機能を超えた機能を提供しています。
それでも大まかな表現としてはいいと思います。会社の中核的なミッションは、「あらゆるアプリケーションのため、あらゆるクラウドのプロビジョニング、セキュリティ確保、接続、稼働を可能にすること」だからです。
仮想マシン、コンテナ、Amazon Web Services、Google Cloud Platform、社内データセンター、そしてJavaだろうがPHPだろうが、あらゆるアプリケーションについて、これらをどう組み合わせたとしても、効率的なデプロイ(と運用)を実現しています。
――視点は、アプリケーションのライフサイクルに置いているということですよね。
ハシモト氏 ええ。インフラとアプリケーションのライフサイクル双方が必要です。
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