「データサイエンティストは経営幹部候補」? コニカミノルタジャパンとNTTドコモが語るキャリア:データサイエンティストが活躍する現場(1)(1/2 ページ)
データサイエンティストが活躍する現場とはどのようなものなのか。2018年5月に開催された「SAS FORUM JAPAN 2018」で、データ分析関連人材の雇用や養成に積極的な企業のデータ関連部署担当者やデータサイエンティストが集まり、各社の事業におけるデータ分析の役割や、データ分析スペシャリストのキャリアについて、学生に向けて4セッション、約4時間にわたって説明した。本記事では、これらのセッションのうち、コニカミノルタジャパンとNTTドコモの講演をリポートする。
データサイエンティストが活躍する現場とはどのようなものなのか。2018年5月に開催された「SAS FORUM JAPAN 2018」で、データ分析関連人材の雇用や養成に積極的な企業のデータ関連部署担当者やデータサイエンティストが集まり、各社の事業におけるデータ分析の役割や、データ分析スペシャリストのキャリアについて、学生に向けて4セッション、約4時間にわたって説明した。本記事では、これらのセッションのうち、コニカミノルタジャパンとNTTドコモの講演をリポートする。
「データサイエンティストは経営幹部候補」
「データサイエンティストは経営幹部候補」と、コニカミノルタジャパン マーケティング本部 データサイエンス推進室の松木順氏は話した。
コニカミノルタジャパンは、コニカミノルタグループの中で、オフィス機器事業を担う他、センシング、ヘルスケア、デジタルマーケティングなど、データが大きく関わる事業を手掛けている。こうしたことから、2016年にデータサイエンスの専任部署が発足したという。
その過程で、データサイエンスチームは多数の予測モデルを開発。例えばオフィス機器事業の営業に関しては、顧客の買い替え時期を予測し、営業効率が3倍に達したという。また、コピー機の保守では、故障時期の予測に基づいて、事前に交換する取り組みを開始。さらに受注予測に基づくコピー機の在庫調整を実現。これら3つの取り組みで、年間7億円に上る効果をもたらしたという。
松木氏自身は約2年前、「データサイエンティストになりたい」と考えて銀行から転職。現在は行動最適化モデルにより、コピー機の保守員の働き方改革を進めるプロジェクトを任されているという。これは全国150拠点、約1000人の保守員に対し、機械学習モデルが適切な行動を示唆する大規模なもの。
「転職して2年で、これだけ大きなプロジェクトを任せてもらえるようになっている」(松木氏)
コニカミノルタジャパンでは、データサイエンティストのキャリア形成プランを既に整備していると、松木氏は説明した。
「弊社では、データサイエンティストが幹部候補生であると考えている。意外に聞こえるかもしれないが、私たちは優れた分析スペシャリストや技術者を目指しているわけではない。分析や数理モデルはツールにすぎず、これを使って経営課題を解決できる人材になることを目的としている。分析・数理モデル作成スキルは初級データサイエンティストに求められるもの。中級ではこれらをビジネス現場に適用できるマネジメントスキルが求められるようになる。そして最終的には、経営陣に対し、データを使ってコンサルティングができるようになることを目標として、キャリアを歩んでいくことになる」(松木氏)
こうしたキャリアを歩んでいく上で必要なスキルは、「分析スキル」「ITスキル」「ビジネススキル」だという。このうち、分析スキルとITスキルは、研修などを通じて取得することができる。教育が困難なのは、ビジネススキルだという。
「ビジネススキルが不足しがちなことが、データサイエンティストにとって最大の課題」(松木氏)
では、コニカミノルタジャパンでは、この課題をどうクリアしようとしているのか。同社では、課題別に高度なビジネススキルを持つ他部署のメンバーを招いて、データサイエンティストがこれらの人々と一緒に、業務課題を分析する仕組みを構築しているという。
とはいえ、データサイエンティストには、高いコミュニケーション能力が求められる。「相手を理解するために、幅広い(業務)知識を習得する」「相手に理解してもらえるように、データサイエンスを見える化して分かりやすく伝える」の2点を自ら磨いていく必要があると、松木氏は話した。
さまざまな角度のデータ活用人材がビジネスの推進力になる
NTTドコモはデータドリブンな経営を推進していることで知られる。同社ではこれを支える情報戦略担当部署の人員が、急速に拡大してきた。2009年時点では54人だったが、現在では145人だという。このチームはデータ分析・抽出グループ、ダッシュボードグループ、基盤グループで構成。全社的なデータ活用を支援しているという。
データ分析・抽出グループでは2017年度、NTTドコモのグループ企業や+dのパートナー企業を対象に、年間5250件のアウトプットを実施したという。そのうち分析は約1500件程度。後はデータの抽出作業という。
NTTドコモ 情報システム部 情報戦略担当 担当課長の川崎達矢氏は、「データサイエンティストによる予測分析などに脚光が当たりがちだが、組織においては単純にデータを可視化することも重要」と付け加えた。
さまざまな部署が新たなデータを活用し、角度を変えてリポートを作成する作業を毎日繰り返している。このため、働き方改革の観点から、15億件のデータを3秒で可視化できるようなデータ可視化基盤を構築し、全社的な活用を進めているという。
データ分析・抽出グループには、多様なスキルを備えた人々がいるという。例えば、分析のリーダーを務めている人は、年間1000以上の案件に関わっており、社内のデータに関する知識もトップレベルだという。
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