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CIOはブロックチェーンをどう考え、どう行動すべきかGartner Insights Pickup(82)(2/2 ページ)

ブロックチェーンは、まだ成熟した技術ではない。それでも、CIOはブロックチェーンへの取り組みを開始し、戦略的なビジネス展開を探るべきだ。今後の脱中央集権的オペレーションや分散型ビジネスモデルなどがもたらす脅威を軽減するために、計画を立て始める必要がある。

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先を見通すことが重要

 CIOは、今なら他社に後れを取ることなくブロックチェーンについて検討を開始できるし、そうしなければならない。CIOを対象としたGartnerの調査「2018 CIO Survey」では、何らかの形でブロックチェーンを導入している回答者は1%にすぎず、近いうちに導入を計画しようとしているか、パイロットプロジェクトを実施しようとしている回答者も8%にとどまる。一方、77%もの回答者が、「自社はブロックチェーンに関心がない」、あるいは「ブロックチェーンの調査や開発に乗り出す計画はない」としている。

 Gartnerは、これは危険な姿勢だと考えている。Gartnerのハイプサイクルレポートでは、ブロックチェーンが陳腐化するとの見通しは示されていない。ブロックチェーンにおける想定に沿ってビジネスをリエンジニアリングするには時間がかかる。だが、そうしたビジネスリエンジニアリングが行われないということではなく、ブロックチェーンはビジネス、産業、社会に大きな変化をもたらすだろう。CIOがその流れを無視するのは危険だ。

 なお、2017年1月以降、ブロックチェーンはgartner.comで最も検索され続けている言葉だ。IT関係者の間で、関心が高いことがうかがえる。

金融サービスを超えて導入が進むブロックチェーン

 CIOはブロックチェーンの検討を始めるに当たって、まず、さまざまな業種でのブロックチェーンのユースケースを調査するとよい。ブロックチェーンは、サプライチェーンでは農園から販売店までのマンゴーなどの追跡(トレーサビリティ確保)や、工場から販売店までの純正品の追跡(詐欺対策)、書類管理(効率化)に応用される可能性がある。

 政府機関もブロックチェーンの用途を探っており、多くはまだ初期段階にあるが、興味深いユースケースも出てきている。例えば、ウクライナは地方選挙でブロックチェーンを試験的に利用している。ブラジルもブロックチェーンを使って国民投票を行うことを計画している。

 米国国土安全保障省のような政府機関にとっては、ブロックチェーンはデジタルアイデンティティー(ID)ネットワークを構築し、シングルサインオンを効果的に実現する機会を提供する技術だ。また、英国労働年金省とニューヨーク市ホームレスサービス局は、社会福祉サービスの一環として提供しているクレジットによる支援を、暗号通貨を使って安全で信頼性の高い方法で管理している。

 ブロックチェーンは、金融業界に対しては国際決済、貿易金融、証券決済の効率化や、より安全なIDシステムの構築の機会を提供している。

宣伝に惑わされない

 ブロックチェーンは非常に有望だ。だが、現在提供されているソリューションは、どのような用途に使えるのか分からない場合が多い。ブロックチェーンプロジェクトを成功させるには、ブロックチェーン技術を本当に使う必要がある用途に、この技術を適用しなければならない。さらに、市場でエンタープライズ“ブロックチェーン”ソリューションとして販売されているものの多くには、「暗号化」「不変性」「分散」「脱中央集権化」「トークン化」という5つの中核要素のうち、少なくとも2つが欠けている。

セキュリティ、技術、法律上の限界

 新しい技術の常として、ブロックチェーンは完全無欠ではない。例えば、ブロックチェーンのユースケースが成り立つには、既存の法律の改正や改訂が必要になる。財務報告のルールも、現行通りでよいかどうか不明だ。ブロックチェーン技術に関する法律、税金、会計の枠組みは整備されておらず、この技術はネイティブな相互運用性やスケーラビリティも備えていない。

 「ガバナンスモデルや標準が限定的、あるいは不十分」という問題もある。ブロックチェーンのバリエーションの多くは、既存の業務モデルの枠内で作られているが、ブロックチェーンではもともとオープンソースや民主的な取り決めを利用して、中央集権型の機関、業務、プロセス、ビジネスモデルに破壊的改革をもたらし、それらによる仲介を不要にすることが意図されている。

 さらに、ブロックチェーンのセキュリティにも課題がある。ベストプラクティスや標準が欠けているからだ。例えば、暗号通貨では数千万ドル相当が行方不明になったり盗まれたりしており、その原因は、誤解や基本的なコードエラー、詐欺、セキュリティエラーだ。ブロックチェーン台帳を取り巻く技術にもセキュリティ的な脆弱(ぜいじゃく)性があることから、全てのブロックチェーンプロジェクトについて、技術、ガバナンス、コンプライアンス、人間の誤解、価値喪失のリスクを精査しなければならない。

 「ブロックチェーン台帳は健全な暗号技術を採用しているが、ブロックチェーン全体を構成する一連の技術には大きなリスクがある」と、Gartnerのリサーチディレクターを務めるマーク・ホーヴァス氏は指摘する。

 「その結果として、多くの人がブロックチェーンシステムのリスクと、基本的なセキュリティプロトコルを適用する価値を、双方とも過小評価し、軽視している」(ホーヴァス氏)。こうした問題は、現時点では克服できないと思うかもしれない。それでも企業は、「ブロックチェーンがもたらす破壊的改革によって、自らの産業がどう変わるのか」を探ることを避けてはならない。

破壊的変革をもたらすブロックチェーン

 ビットコインのリリースのタイミングは、金融業界や銀行業界の破壊的改革を狙ったものだったように見える。だが、確立した効果的なソリューションの欠如や技術的な限界のため、それは成功しそうもない。

 これまでのところ、ブロックチェーンがディスラプションをもたらす可能性がある他の業界でも、リスクを嫌う企業が依然として厳しいリスク管理を続けていることから、ブロックチェーンは段階的な改善にしかつながっておらず、目が覚めるような破壊的改革は起こっていない。こうした業界としては、ヘルスケアやサプライチェーン、政府機関などがある。

 UberやAirbnbのような典型的な破壊的変革者も、ブロックチェーンの実装が最終的に成功すれば、破壊的改革の対象になる可能性がある。こうした企業は“ピア・ツー・ピア”エコノミーの一翼を担っているものの、依然としてビジネスの運営を仲介者に大きく依存している。ブロックチェーン技術の活用に成功した企業は、中央の権威者を一掃できるだろう。

 ただし、こうした業種におけるブロックチェーンを利用した変革には時間がかかるだろう。技術プラットフォームが、これらのビジネスにおける取引の規模や複雑さに対応できなければならないとすれば、導入自体が大きな課題になるからだ。

出典:The CIO’s Guide to Blockchain(Smarter with Gartner)

筆者 Kasey Panetta

Brand Content Manager at Gartner


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