Zabbix 4.0では、運用管理者の負担を減らすためにどんな機能が追加されたのか:クラウド/コンテナ時代のZabbix再入門(後編)(1/2 ページ)
2018年10月2日にリリースされたZabbix 4.0の新機能について、運用管理者の負担を減らす機能を中心に紹介する。
前編では、Zabbixが「自動化」によって運用管理者の負担をどう減らしてきたのかを機能ごとに見てきました。後編となる本稿では、2018年10月2日にリリースされたZabbix 4.0の新機能を取り上げます。3.2や3.4で先行的に実装されてきた機能をさらに有効に活用して、より運用管理者の負担を減らす機能が追加されています。
Zabbix 4.0で追加された機能
2018年10月2日にリリースされたZabbix 4.0は、Zabbix 3.2、3.4といった「ポイントリリース」や「スタンダードリリース」と呼ばれるサポート期間の短いバージョンではなく、「LTS(Long Term Support)」と呼ばれるサポート期間の長いバージョンです。
下記は、Zabbix 4.0で実装された主な機能です。
- 「監視データ取得」ボタン追加
- 新しいHTTPアイテムの追加
- 時間範囲指定の簡略化
- SVGの「グラフ」ウィジェットの追加
- 単位変換の柔軟化
- サーバとプロキシ間の接続をよりセキュアに
- サーバとプロキシ間の通信を圧縮
- 電子メールにおいて、1つの設定で複数の宛先への指定が可能に
- イベント、値、トレンドのリアルタイムエクスポート
- logrt[]でcopytruncateモードでのログファイルローテーションに対応
- タグベースの権限設定
- タグによるメンテナンス設定の拡張
- 障害の深刻度が変更可能
- エージェント自動登録機能改善
- ポップアップウィンドウをオーバーレイに変更
- 閲覧(キオスク)モードの追加
- 障害画面に「コンパクト表示」モードを追加
- DNS名の長さを63から255に拡張
- MySQL 8.0をサポート
- スクリーンリーダー対応
特に有用だと思われるものを幾つか取り上げてみましょう。
表示系の改善
- SVGの「グラフ」ウィジェットの追加
Zabbix 3.4で、ダッシュボードをカスタマイズできて複数定義して保存できるようになりましたが、Zabbix 4.0では、使用できるウィジェットとして新しい形式の「グラフ」ウィジェットが用意されました。
グラフで描画するアイテムの選択方法が柔軟になっています。ホストやアイテムの指定時に、カンマ区切りで列挙したり、ワイルドカード(*)を使用して複数のアイテムを指定したりすることが可能になっています。
また、描画したグラフにマウスのポインタを移動すると、その時点の値をポップアップで表示してくれます。
これを利用することで、複数のホストの同じメトリクスを比較したり、同じホストの複数のメトリクスを比較したりすることが簡単になりました。
ちなみに、従来のグラフウィジェットは、「グラフ(クラシック)」という名前で用意されており、使用可能です。
- 「閲覧(キオスク)モード」の追加
さまざまな機能が追加されたため、メニューやダッシュボードを選択するためのリンクの表示領域が広くなってしまいました。このため、デザインして並べたウィジェットをより広い画面を利用して表示できるように、メニューやダッシュボードの選択を非表示にする「閲覧(キオスク)」という表示モードが用意されました。
デフォルトだとヘッダー部が以下のような表示になっています。
閲覧(キオスク)モードだと以下のような表示になります。
この中間の「フルスクリーン」という表示モードも存在します。
各モードの切り替えは、右上のボタンのクリック操作が必要なのですが、Zabbix 4.0.1では、直接「フルスクリーン」モードや閲覧(キオスク)モードに遷移できるURLパラメーターが追加されました。
例えば以下のようなURLでアクセスできます。
- フルスクリーンモード
http://{Zabbix}/zabbix/zabbix.php?action=dashboard.view&dashboardid=2&fullscreen=1 - 閲覧(キオスク)モード
http://{Zabbix}/zabbix/zabbix.php?action=dashboard.view&dashboardid=2&kiosk=1
「dashboardid」には、表示したいダッシュボードを表示したときに確認できるURLに表示されているのと同じIDを指定すれば、その特定のダッシュボードを表示できます。そのため、ユーザーの設定内の「ログイン後のURL」に設定して、ログイン後にユーザーに適したダッシュボードへ自動的に遷移させてしまうのもいいかもしれません。
操作や設定の改善
システムやサービスを監視する際、さまざまな役割や地位の方が運用に関わると思います。発生した障害によっては、通知すべき担当者が異なる場合も出てくるでしょう。
これまでは、ホストグループ単位でのアクセス権限設定のみでした。Zabbix 4.0では、タグを利用してユーザーのタグフィルターを設定することで、特定のタグが一致するトリガーにおける障害検知だけを通知するように設定できるようになりました。
監視や障害発生通知処理の改善
- タグによるメンテナンス設定の拡張
Zabbixには、メンテナンス期間という指定した期間内のアクションの通知を抑止する機能が用意されています。
しかし、これまでは、メンテナンス期間を設定できる単位が、ホストまたはホストグループでの単位でしか設定できませんでした。一部分のメンテナンス作業を行うために、メンテナンス期間の機能を使用すると、対象のホストの全部の監視を止めてしまうようなことになってしまっていたわけです。
トリガーの設定を工夫して、特定の時間帯のみ無視するような設定はできなくはないです。しかし、トリガーに設定してしまうと、メンテナンスのタイミングが変更されたときに、トリガーの設定を変更しなければならないというデメリットもありました。
そこで、メンテナンス期間の対象として、トリガーに設定したタグも併せて指定できるようになったので、特定のタグが付与されたトリガーのみをメンテナンス期間の対象とすることができるようになっています。
- エージェント自動登録機能改善
自動登録の機能も改善されています。
Zabbix 4.0より前のバージョンまでは、自動登録の機能を使用してホストを登録する場合、ホストとして登録してテンプレートをリンクさせることまではできていました。しかし、この登録処理が実行されるのは、最初の1回だけでした。
自動登録を利用して運用していると、リンクさせるテンプレートを変更したり、所属させるホストグループを変更したりしたくなりますが、すでに登録済みのホストに関しては、自動登録のルールを変更しても反映させることはできませんでした。
Zabbix 4.0では、自動登録時の判定に利用できるZabbixエージェントの設定内の「HostMetadata」「HostMetadataItem」という情報が変更されたときに、再度、自動登録の処理を実行させることができるようになりました。
これによって、自動登録時のルールの変更を、自動登録での登録済みのホストにも適用することがより簡単にできるようになっています。
バックグラウンド処理の改善
各種デーモンの改善も行われているのですが、ここではサーバとプロキシ間の通信の圧縮について触れておきます。
- サーバとプロキシ間の通信を圧縮
遠隔地の監視のためにZabbixプロキシを使用している場合、そのZabbixプロキシ配下の監視対象が増えてくると、ZabbixサーバとZabbixプロキシとの間の通信量が増加してきます。規模によっては、その通信量がサービスへの影響を与えかねない量になることも予想できます。
Zabbix 4.0では、ZabbixサーバとZabbixプロキシとの間の通信は、圧縮されるようになったので、サービス用のトラフィックへの影響を削減できることでしょう。環境や設定にも依存するとは思いますが、通信量を約5分の1程度にまで削減できた事例もあるようです。
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