ネットワークエンジニアなら「回線の実体=レイヤーゼロ」を知っておこう:羽ばたけ!ネットワークエンジニア(11)(1/2 ページ)
日々、2000拠点を超えるネットワークの運用を手掛けていると、OSIの7階層モデルにないレイヤーゼロの話、つまり「回線」をいかに引くかという点をないがしろにできないことが分かる。今回はネットワークエンジニアが意外と知らないレイヤーゼロの基本について述べたい。
企業ネットワークの提案書や設計書にある「ネットワーク構成図」では、回線を1本の直線で表現することが多い。拠点を表す四角い枠に直線を1本引き、そこにルーターを接続する。もうすこし詳細な図では回線終端装置を表す箱をルーターの前に書く。日々、図を描くネットワークエンジニアは、線を1本引けば回線が引けたような気分になるかもしれない。
しかし、回線を現実に開通させるのはそれほど簡単ではない。はっきり言ってとても面倒で、日数もかかる。回線はNTTやKDDIといった通信事業者(キャリア)に動いていただかないと開通しない。申請から開通に至るまでにユーザーとしてやるべきことを押さえ、独特の用語を頭に入れておかなければ回線を引くことはできない。
筆者がプロマネを務める運用中のプロジェクトでは、毎月10本から多いときには20本を超える回線を開通させる。新しい店舗やオフィスの開設に伴うものがほとんどだ。期日までに開通できなければ店舗がオープンできず、大変なことになる。
回線の実体構成はどうなっている?
回線の実体と回線を引くための留意点を順に見ていこう。
図1はNTTコミュニケーションズやKDDIのVPNサービスで使う回線の構成だ。NTTコミュニケーションズ(NTTコム)、KDDI、ソフトバンク、いずれもラストワンマイルと呼ばれるアクセス部分の光ケーブルをほとんど持っていない。そのためNTT東西が所有する光ファイバーのうち未利用のもの、いわゆる「ダークファイバー」を借用して使うことが多い。
図1ではNTTコムなどのキャリアの光ケーブルを青で、NTT東西のケーブルを赤で示している。中継ケーブルや加入者光ケーブルはユーザーが目にするものではない。その代わり、ユーザーのビル内の設備を知っておくべきだ。図中の丸数字の順に設備を説明する。
- MDF室(Main Distribution Frame) 配線盤を収納する構内の共用スペース
- 木板 PT盤やジョイントボックスをビルの壁面に設置するための保護材。ユーザー(ビルの所有者)が設置する
- PT盤(Premise Termination) NTT東西がユーザービルに引き込んだ光ケーブルをまとめる光ケーブル接続キャビネット。図1には描かれていないが、PT盤から各フロアに分配する構内ケーブルをまとめる装置をPD盤(Premise Distribution)と呼ぶ。PTのことを第1PDと呼ぶこともある。その場合、各フロアのPDは第2PD、第3PDのように呼ぶ
- ジョイントボックスまたは光ローゼット ケーブル保護用の配線盤。NTT東西とキャリアの接続分界点。NTT東日本ではジョイントボックスと呼び、キャリアが設置する。NTT西日本では光ローゼットと呼び、NTT西日本が設置する
- ケーブルラック ケーブルの敷設に使う金属製や合成樹脂製のはしご状の支持架
- ターミネーションケーブル ジョイントボックスから回線終端装置までの光ケーブル
- EPS室(Electric Pipe Space) 各フロアを貫通している配管の収納スペース
- 回線終端装置(ONU:Optical Network Unit) 光ケーブル上の信号を端末のインタフェース(通常イーサネット)に変換する装置
小規模拠点では電柱を使う
図1では地下から光ケーブルを引き込んでいるが、小規模な店舗やオフィスでは電柱から架空で引き込むことが多い。その構成が図2である。
- 架空クロージャ― 電柱に敷設された光ケーブルを収納するグレーのボックス。なおメタル回線は黒いボックスを使う
- フック 電柱から引き込むケーブルを固定する金具
- PF管(Plastic Flexible Conduit) 光ケーブルを保護するための耐燃性のある管。じゃばら状のパイプで曲げやすく柔軟性がある
- 木板 図1と同じ
- PT盤 図1と同じ
- 光コネクタローゼット 図1の光ローゼットと同じ
- 回線終端装置 図1と同じ
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