HoloLens 2、Azure、Kinect――de:code 2019の基調講演で見えたインテリジェントな「クラウド」と「エッジ」の具体的な姿:de:code 2019(2/2 ページ)
AI技術により、クラウドとエッジの双方がインテリジェント化されたコンピューティングプラットフォーム上で、地球上のあらゆる人々が、より多くのことを成し遂げられる世界を作る――近年のMicrosoftが掲げてきた、このミッションに向けたさまざまな成果が、急速に具体的な姿を見せ始めている。日本マイクロソフトが2019年5月末に開催した、開発者およびITエンジニア向けイベント「de:code 2019」の基調講演では、その一端が披露された。全体で約3時間に及んだ基調講演の中から、この記事では、主に直近の「オープン化」に関連した同社の動向と、「インテリジェントエッジ」にまつわる部分をまとめる。
HoloLensのハードウェアをカスタマイズできる「Lens Customization Kit」
「ビジネスの現場に導入後、すぐに価値を生み出す」という点では、各業界に明るいパートナーとの協力が重要だとキップマン氏は言う。HoloLens 2では、パートナーがHoloLensのハードウェアをカスタマイズできる「Lens Customization Kit」を提供する。これを利用して、工事現場などで着用されるヘルメットに、HoloLensの機能を組み込んだものも開発されている(参考「Trimble」)。
Azureと組み合わせることで、より広がりを見せるHoloLensの世界
「インテリジェントエッジ」を体現したデバイスであるHoloLens 2と、「インテリジェントクラウド」であるAzureとの組み合わせは、より大きな可能性を秘めているとキップマン氏は言う。例えば、Azure上にさまざまな空間データを構築し、それを共有することによって「ホログラムのインターネット」(キップマン氏)が生まれる。それに伴って必要となる大規模な処理(レンダリングなど)も、Azure上のリソースを使って高速に行うことで、よりリアリティーの高い3Dモデルを活用することが可能になるという。
「AzureとHoloLens 2との組み合わせによるMRスイートは、MRを限られた部屋の中から、建物全体、そして都市や世界へと拡張していく」(キップマン氏)
ビジネス向けに強化された「Kinect」もインテリジェントエッジを補完
基調講演では「HoloLens 2」の他にも、「インテリジェントエッジ」に属する新たなデバイスとして「Azure Kinect」が紹介された。
Kinectは、2010年にコンシューマーゲーム機である「Xbox 360」向けの周辺機器としてリリースされ、その後、Windows対応版も発売されたものの、2017年に生産が終了していた。Microsoftが2019年の2月に発表した「Azure Kinect」は、Kinectの備えていたイメージセンサーや深度センサー、マイクアレイを強化し、新たにモーションセンサーなどを加えて、ビジネス向けのIoTデバイスとして再登場したものだ。高性能化、軽量化に加え、複数台のAzure Kinectをデイジーチェーン接続することにより、1台だけではフォローできない、より広い空間を認識することも可能になっているという。
基調講演のデモでは、強化された深度センサーを用いて、カメラで捉えている人物の心拍数を推定するアプリケーションや、Azure Cognitive Servicesの音声認識機能との連携により、講演をしている人物の映像にリアルタイムで字幕を付ける様子などが披露された。Kinect単体でできることが強化されているだけではなく、Azure上にある各種サービスとの組み合わせがさらに容易になることで、その活用範囲や可能性はさらに広がりそうだ。
「Microsoftは、インダストリー、ワークスタイル、ライフスタイルの3つの分野でのイノベーションを、これからも積極的に推進していく。デジタルテクノロジーによってあらゆるものがつながっていく社会の中で、仕事の質、生活の質を高めていくために何ができるかを、開発者、ITエンジニアの皆さんと共に考え、取り組んでいきたい」(平野氏)
次回は、働き方改革(Microsoft 365関連)について
次回は、基調講演から働き方改革(Microsoft 365関連)についての内容をまとめてレポートする。
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