ソラコムが多数の発表、グローバルSIMの進化やFaaS対応、「プログラマブルターンキー」なカメラなど:IoTデバイスへのオンデマンドログインも容易に
IoTプラットフォーム企業のソラコムが、年次イベント「SORACOM Discovery」に合わせ、eSIM対応などのセルラーサービス新機能/価格改定、Amazon LambdaをはじめとしたFaaSとの連携、カメラソリューションなど、多数の発表を行った。
IoTプラットフォームサービスのソラコムは2019年7月2日、年次イベント「SORACOM Discovery」に合わせ、eSIM対応などのセルラーサービス新機能/価格改定、Amazon LambdaをはじめとしたFaaSとの連携、カメラソリューションなど、多数の発表を行った。
旧「グローバルSIM」の「SORACOM IoT SIM」がメインに、新機能や価格改定
ソラコムは「SORACOMグローバルSIM」と呼んでいた130カ国対応のSIMを「SORACOM IoT SIM」と改称する一方、国内のみに対応したSIMは「特定地域向けSIM」という位置付けに変更した。これに伴い、SORACOM IoT SIMを日本および世界で使いやすくするため、機能強化や価格改定を発表した。
SORACOM IoT SIMは、チップ型SIM対応や在庫が1年まで無料などのメリットもある。海外での展開を見据えたIoT活用を進めるユーザーが増えていることから、同社では今後SORACOM IoT SIMを特に推進し、グローバルなIoTプラットフォームとしての展開を目指していくという。
まず、SORACOM IoT SIMは国内でNTTドコモに加え、KDDIのLTEサービスにも接続できるようになり、国内でのマルチキャリア対応が実現した(限定プレビューとしての発表)。しかも、KDDI回線を利用する場合の料金は0.20 米ドル/MBで、NTTドコモ回線の場合に比べ10分の1という。一方2019年7月2日付けで、83カ国におけるデータ通信料金を引き下げ、例えばヨーロッパ中心の21か国では、0.08米ドル/MBから0.02米ドル/MBになったという。
また、SORACOM IoT SIMはこれまで、コントロールプレーン/ユーザープレーン共に、ドイツで制御/経由していた。2019年8月に、ユーザープレーンを処理するランデブーポイントを、日本、米国でも稼働するという。SIMは最も近いランデブーポイントを選択して通信を行う。このため、SORACOM IoT SIMを例えば日本国内で使う場合に、従来は数百ミリ秒の遅延が発生していたものが、数十ミリ秒に短縮できるという。
さらにSORACOM IoT SIMでは新スピードクラス「s1.4xfast」を発表。これまでの2Mbpsという速度上限を超え、8Mbpsの通信ができる。
一方、「特定地域向けSIM」の一部であるNTTドコモLTEサービスでは、データアップロード向けの新料金プラン「plan-DU」、そしてplan-DUに10/50GBのアップロード通信料を含んだ「DU-10GB」「DU-50GB」を提供開始した。
また、iPhoneなどで広がりつつあるeSIMへの対応を、テクノロジープレビューとして限定提供開始した。これにより、アプリやQRコードの読み込みだけで、eSIMプロファイルをダウンロードし、同社通信サービスを利用開始できるようになる。
カメラによるIoTでは「S+ Camera Basic」と「SORACOM Mosaic」
カメラを使ったノンプログラミングIoTソリューションのエコシステム拡大のため、「S+(サープラス)Camera Basic」と「SORACOM Mosaic」を発表した。ユーザーがカメラを設置し、電源を入れるだけで、顔/物体認識をはじめとしたエッジ処理を業務に活用できるような環境づくりを目指す。
「S+ Camera Basic」は標準的なRaspberry Piボードを使ったカメラ。マグネットや吸盤で取り付けられ、カメラは回転可能。セルラーSIMを搭載し、電源を投入しさえすればSORACOM管理コンソールで管理できるようになる。さらにコンソールからアプリケーションを選択してカメラへ遠隔インストールし、動画をエッジ処理するアプリケーションを適用できる。また、同時に発表したプラットフォームサービスのSORACOM Mosaicでは、デバイスのリソース管理/ログ取得、プログラムのデプロイ/世代管理機能を提供する。
ソラコムはIoTカメラ事業に参入するつもりはなく、カメラを活用したハードウェア/ソフトウェアソリューションのエコシステムを広げるためのきっかけにしたいという。まず、カメラについては、SORACOM Mosaicに対応するデバイスをハードウェアパートナーに開発してもらいたいという。また、アプリケーションについても、現時点でソラコムが提供するのは定期的な画像アップロードのみ。パートナーに、アプリケーション/ソリューションの選択肢を増やしてもらうことを期待している。
ソリューション関連では、東京センチュリー、ビープラッツと共同で提供しているIoTソリューションマーケットプレイス機能「IoT SELECTION connected with SORACOM」で、7つのソリューションを追加したという。従来は「スマート農業」「リアルタイム車両管理」「音声翻訳機」「トイレ満空管理」「高機能タブレットPOS」「屋外監視カメラソリューション」の6種だった。これに「センサー×AI 見守りシステム」「排尿リズム見える化サービス」「画像監視サービス」「積層信号灯監視サービス」「IoTオールインワンデバイス」「リアルタイム所在管理システム」「みまもりGPSボタン」が加わった。
デバイス関連では、LTE-Mボタンで簡易位置測位機能など
ボタンを押すだけで各種処理が実行できる「SORACOM LTE-M ボタンシリーズ」では、「LTE-M Button for Enterprise」「LTE-M Button Plus」と「plan-KM1」の組み合わせで、通信基地局位置を元にした位置情報をデータに付与して送信できる機能を、2019年8月に提供開始される。
また、従来より提供しているマイコン「M5Stack」では3G 拡張モジュールの提供開始が発表された。
IoTデバイスからFaaSを直接利用する「SORACOM Funk」
ソリューション構築を新たな角度から支援する「SORACOM Funk」(2019年7月2日に提供開始)は、クラウドのFaaS(Function as a Service)をIoTデバイスから直接活用できる機能。提供開始時点では、「AWS Lambda」「Azure Functions」「Google Cloud Functions」に対応する。これにより、IoTデバイス上での構成と処理をシンプルに保ちながら、クラウド側にサーバを立てることなく、使っただけのコストで複雑な処理を実現できる。また、IoT デバイスは処理結果を直接受け取ることもできる。
SORACOM Funkを使い、IoT側の構成と処理を最低限にすることで、デバイスファームウェアのメンテナンス性やアプリケーションの柔軟性が向上するとしている。
オンデマンドでの簡単なリモートアクセスを実現する「SORACOM Napter」
ソラコムのサービスでは、基本的にIoTデバイスへの直接アクセスはできないようになっている。これに対し、トラブルシューティングなどを目的とした、オンデマンドでの容易なリモートアクセスを実現する新サービスが「SORACOM Napter」。コンソールで機能を有効化するだけで、SSHやRDPによるリモートログインができる。
「SORACOM Harvest」ではファイルの送受信が可能に
データ収集・蓄積の「SORACOM Harvest」は、ログの収集を目的とした簡易データ管理サービスとしてスタートしたサービス。今回は「SORACOM Harvest Files」を発表した。IoTデバイスから大容量ファイルを受けたり、逆にIoTデバイスへファームウェアなどを送信したりできる。前述のデータアップロード向けの新料金プラン「plan-DU」との組み合わせが可能。
閉域網サービスではVPGの料金体系を変更
ソラコムの閉域網構築サービスでは、VPG(Virtual Private Gateway)が大きな役割を果たしているが、VPGの料金体系が変更になった。SIM単位の料金は廃止し、ピアリングも1接続まで無料として、料金を「small」「medium」「large」の3段階とした。これにより、場合によっては従来比73%の値下げになったという。さらに、VPG経由のBeam、Funnel、Funkのリクエスト料金が無料となった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.