VMwareのR&D組織が量子コンピューターの動向もウォッチする理由:レイ・オファレル氏が説明
VMwareの上席副社長兼CTO(最高技術責任者)であるレイ・オファレル氏は2019年7月4日、東京都内で同社のR&D戦略について説明した。この中で、量子コンピューターの進化についても研究していると説明した。
VMwareの上席副社長兼CTO(最高技術責任者)であるレイ・オファレル(Ray O’Farrell)氏は2019年7月4日、東京都内で同社のR&D戦略について説明した。この中で、量子コンピューターの進化についても研究していると説明した。
なぜ、VMwareが量子コンピューターを研究しなければならないのか。現在の公開鍵暗号が実用的なスピードで解読されてしまう日がそう遠くないうちに来るからだという。
「256 ビットのモジュラー楕円曲線暗号では約2300 Qubit、2048ビットのRSA暗号では約4000 Qubitの量子コンピューターであれば十分短時間に秘密鍵が見出せるようになる」(オファレル氏、以下同)
例えば2025年ごろには2000 Qubit規模のハードウェアが登場し、現在の公開鍵暗号方式では安全といえなくなる。このためVMwareでは、グループ会社のRSA Security、大学、業界団体などと連携し、自社製品における適切な耐量子暗号方式への移行を推進する。このための具体的なロードマップを策定しているという。「プロアクティブな(先手を打った、事前の)対応」が不可欠だと、オファレル氏は強調した。
量子コンピューターに関連する取り組みは、VMwareのR&D戦略における方針を表わす良い例だという。エンタープライズITプロダクトを提供する企業としては、次々に生まれる新技術や技術革新が、顧客にどのようなインパクトを与えるかを考え、先を見た活動を進めているつもりだと話す。
VMwareでは、「第4次産業革命」とも呼ばれる動き、具体的には「エッジ/IoT」「クラウド」「機械学習/AI」「モバイル」に着目しているという。これらは、あらゆる企業・組織、そしてVMware自身にとって、死活的な意味を持つと、オファレル氏は強調する。
「4つのスーパーパワーは、第4次産業革命の核心、あるいはデジタルトランスフォーメーションの次をけん引する原動力だといえる。そして、あなたのいる産業を根本的に覆すことになるかもしれない新技術が、間近に迫ってきているということだ。注意深くウォッチし、自社のいる産業における意味を考えなくてはならない。重要なのは、『あなたの会社の将来をどのように形作っていきたいか』ということだ。こうした技術革新にどう耐えて生き残るかだけではなく、技術変化から最大の恩恵を受けるにはどうしたらいいかを考える必要がある」
オファレル氏は、第4次産業革命の特徴として、これまでに比べ、「革命」のペースが飛躍的に高速化していること、複数の要素が相互に絡み合って価値をもたらす傾向が強まっていること、そしてこれらのことから、最初に成功した者が市場を席巻する可能性が高まっていることなどを挙げた。
オープンソースの世界との関わりは?
ところで、「エッジ/IoT」「クラウド」「機械学習/AI」「モバイル」の全てにおいて、オープンソースソフトウェア(OSS)プロジェクトの活動が目立つようになってきた。VMwareのOSS関連活動は、同社の技術戦略においてどう位置づけられるのかと聞くと、オファレル氏は次のように答えた。
「ソフトウェアにおいては、ますます多くのイノベーションが、OSSコミュニティから生まれるようになってきた。VMwareのような企業にとっては、OSSに取り組み、OSSコミュニティと協力し合い、さらにコントリビューションしていくことが死活的に重要だ。そこで数年前に、OSSに特化した部署を作り、当社が使ったり、売ったりしている製品とは無関係なOSSプロジェクトの開発者を雇用するなどして、コミュニティへの協力を進めている」
そして、Kubernetesを始めた3人のうち2人が始めたHeptioの買収がある。
「企業が真のデジタルトランスフォーメーションを進めるには、アプリケーションの開発が必要だ。なぜなら、アプリケーションによってこそ、他社との差別化が図れるからだ。より優れたモバイルアプリや機械学習モデルを開発するなどしていかなければならない。つまり開発者が必要であり、開発者はオープンなフレームワークをますます活用するようになってきている。コンテナにおけるオープンなフレームワークとしては、Kubernetesが事実上の標準になった。Heptioの買収で、私たちはKubernetesの非常に大きなコントリビューターになった」
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