「あなたにKubernetesは必要ですか?」を、Kubernetes Meetup Tokyoのコアメンバーが議論:OpenStack Days Tokyo/CloudNative Days Tokyo 2019
「OpenStack Days Tokyo/CloudNative Days Tokyo 2019」で2019年7月23日、Kubernetes Meetup Tokyoのコアメンバーが、「あなたにKubernetesは必要ですか? Kubernetesのこれからについて話し合おう」というタイトルのパネルディスカッションを行った。
「OpenStack Days Tokyo/CloudNative Days Tokyo 2019」で2019年7月23日、Kubernetes Meetup Tokyoのコアメンバーが、「あなたにKubernetesは必要ですか? Kubernetesのこれからについて話し合おう」というタイトルのパネルディスカッションを行った。
このディスカッションは、「多分あなたにKubernetesは必要ない」というタイトルの、旅行予約サイトtrivagoに所属するエンジニアによるブログポストをきっかけにしたもの。
trivagoの一部のシステムを開発・運用する4人の開発チームで、既存システムとの連携のため、コンテナベースのアプリケーションをオンプレミスで動かしたい。だがKubernetesは構築・運用が複雑などの理由から、少人数では手に負えないため、コンテナオーケストレーションツールとして代わりにNomadを採用したという内容。
ディスカッションはサイバーエージェントの青山真也氏、ゼットラボの五十嵐綾氏、メルカリの内田誠悟氏、Google Cloudのイアン・ルイス氏がパネリストとして参加。モデレーターはゼットラボの須田一輝氏が担当した。
4人の開発チームではKubernetesは無理?
上記のtrivagoチームの判断に賛成か反対かという問いについて、青山氏は「Kubernetesでは、クラスターのバーションアップなどの運用作業で、2人の専任者は欲しい。(例えば)4人の開発チームではサービス開発に注力すべきなので、Kubernetesを使わずにニーズを満たせるなら、そのほうがいい」と話した。
他のパネリストも賛成した。
五十嵐氏は、Kubernetesの守備範囲が広がってきており、ストレージやネットワーキング、セキュリティ、コンテナランタイムなど、幅広い分野の進化を追う必要があることから、得意分野の異なる複数のチームで分担していると語った。各種ツールの調査を含めると、「10人以上の専任は欲しい」(五十嵐氏)。ゼットラボでは400以上のクラスターを運用していることも背景にはある。
ルイス氏は、「クラスターの数が1つならいいが、400になれば難しい」といい、須田氏も、「トラブルがなければいいが、何かあったときに、解決できる力がないと、悲惨なことになる」と続けた。
いつ、Kubernetesを使うべきか
では、他にCaaS(Container as a Service)やPaaS(Platform as a Service)、FaaS(Function as a Service)など、さまざまな選択肢があるなかで、どのようなときにKubernetesを採用すべきか。
内田氏の意見は、まだKubernetesを使ったことのない人は、まず「Heroku」のようなPaaSや、「AWS Lambda」のようなFaaSから入り、それで制約を感じるようであれば、より柔軟な環境を構築できるKubernetesを検討すればいいのではないかというもの。
青山氏は、Kubernetesでも、CI/CDツールなどとうまく組み合わせることで、カスタマイズできるPaaSに近い環境を作ることができるとした。また、五十嵐氏は、「開発者と運用支援担当が別チームとして役割分担しやすい」というKubernetesの特徴を生かせれば、開発者が最小限の設定で使えるようにできると話した。
ルイス氏は、Kubernetes上でPaaSやFaaSが稼働するような動きが今後進むことで、一部の懸念は解消に向かうのではないかとしている。
ツールが多すぎで進化も急速過ぎる?
ブログポストには、「Kubernetesではツールが多く、その進化も急速すぎる」と読める記述がある。これについてはどうか。
青山氏は、特に構築関連のツール(の進化)を継続的に追うのはつらいため、「最初は愚直にKubernetes単体で使うのがベスト」と話す。
「あせらないでいい。皆が使っているような状況になったときに選択するということでいいと思う」(青山氏)
一方、五十嵐氏は、Kubernetesの初期から関わっているため、「ツールが多すぎると感じたことはない」としながら、新たなツールについては必要性が生じたときに、使えそうなものから小さく試し、だめなら別のものに変えるつもりでやると困ることはないと話した。
学習コストについて、内田氏は次のように話した。
「Kubernetesでは、仮想化環境でもPaaSでもやらなければならないことがフレームワークとして整備されている。当初の学習コストは大きいが、十分なリターンが得られるので、学習する価値はある。(一方、)周辺のツールは成熟度がばらばらで、使うと深みにはまっていくものもある。このため(使うかどうかの)見極めは難しいと思う」
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