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「AIOps」で運用管理者の働き方はどう変わるのか特集:AIOpsとは何か(1)

ITがビジネスを加速させる昨今、多くの新規サービスが開発、リリースされ、運用管理者には安定したサービスの供給や、利用動向のログを解析することが求められている。だが、これに伴い解析すべきログや拾うべきアラートも増す一方となり、多大な負担が運用管理者の身に振り掛かっている。こうした中、AIを利用したIT運用「AIOps」が注目されている。では企業がAIOpsを取り入れる上で必要なこととは何か。運用管理者は、AIとどう向き合うべきなのか。本特集では、そのヒントをお届けする。

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もはや“β版”は許されない?

 「体験価値の創出」がビジネス差別化の要件となって久しい。「モノからコトへ」という言葉も社会一般に広く浸透し、業種を問わず、およそ全ての企業が“ソフトウェア企業”への転換を迫られている。重要なのは、求められているものが「人力だけで生み出せる価値」ではなく、「テクノロジーの力を使って初めて実現できる新たな価値」であることだろう。

 国内でもUBERなどから注目され始めたITサービス開発競争が活発化し、製造、金融、流通など各業種でテクノロジーを軸とした新たな市場原理が生まれている。モノの買い方、決済の仕方をはじめ人々の生活は大きく変わり、「いずれ銀行の支店はなくなる」といった数年前の指摘も年々現実味を帯びてきた。ビジネスのルール、社会の常識が大きく変わりつつあるのだ。

 こうした中、ITサービス/システム開発は「ビジネス展開」とほぼ同義となり、企業におけるITの位置付けは大きく変容した。体験価値の企画力とニーズの変化に応える「スピード」が差別化要素となった今、アジャイル/DevOpsのアプローチで“体験価値”を提供するまでのリードタイムをいかに短縮するかが勝負のカギとなっている。加えて昨今は提供スピードだけではなく、その後の運用品質も改めて問われるようになった。「7pay」のセキュリティ問題、「PayPay」の障害などは記憶に新しい。

 これらが注目されたのは、決済というクリティカルなサービスである故でもあるが、ITサービスがごく一般的な顧客接点、社会インフラの一部として認識されつつあることを表していると言えるだろう。こうした認識は各業種のサービスに広がっていくはずだ。対価が発生するものである以上、ビジネスとして成立させ得る「品質」が強く求められているのだ。

開発分野に後れをとってきた運用分野

 こうした潮流を受けて、サービス開発の「スピードと品質の両立」というテーマには一層高いレベルが求められている。特にサービス開発がビジネス開発と同義となっている今、いかに開発者の生産性を高めるか、いかに人的ミスをなくすかといったテーマが重視され、ビルド、テストの自動化だけではなく、サーバ構築、デプロイの自動化など、インフラ運用の自動化がWeb系企業を中心に進んで取り入れられている。

 だが今、必要なのはCI/CDで本番環境に展開するスピードだけではない。その後のサービス運用における品質だ。しかし本番環境では実に多様な問題が起こり得る。急激にトラフィックが跳ね上がることもあれば、何らかの要因でサーバリソースがひっ迫したり、パフォーマンスが低下したりすることもある。セキュリティ事件も頻発している今、何らか異常を検知したら即座に対応しなければならない。

 しかもオンプレミスの仮想環境、複数のパブリッククラウドなどでインフラはますます複雑化、大規模化している。1つの企業内で複数のインフラがサイロ化し、それぞれ異なるツール、プロセスで管理している例も珍しくない。開発から提供までのプロセスに自動化を取り入れても、その後の運用はいまだ人手作業に負っている部分が多く、いま求められている「品質」を保証する上では限界を迎えつつあるのだ。

 こうした中で、注目を集めているのが「AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)」だ。2016年にガートナーが提唱した概念で、ビッグデータと機械学習を組み合わせることで、ITオペレーションの主要機能を高度化・自動化し、「可用性とパフォーマンスのモニタリング」「イベントの相関付けと分析」「ITサービスの管理と自動化」などを行うことを指す。

参考リンク:「AIOps」とは何か、どのように始めるべきなのか

 より具体的には、OSS(オープンソースソフトウェア)も含めたマルチベンダー製品で構成されたITインフラから生成される大量のログデータや監視データをリアルタイムに収集。複数のアラートを関連付けて分析するなどして、障害の予兆検知、問題の根本原因特定、(既知の問題であれば)自動的な対応などを実現する。

 無論、「障害の予兆検知」をはじめ、これまでも同様の機能をうたう管理ツールはあった。だがAIOpsにおいては、従来のアプローチとは明確な違いがある。

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