AWSは「分散クラウド」も提供できる、「ローカルゾーン」がロサンゼルスから始まる理由:AWS re:Invent 2019
Amazon Web Services(AWS)が2019年12月3日(米国時間)に発表した「AWS Local Zones」は、AWSのサービス提供における新たな粒度だ。これがどう増えるのかは未知数だが、例えば数年後、AWSが世界中で数百の拠点を持つ「分散クラウド」になっている可能性はゼロではない。
Amazon Web Services(AWS)が2019年12月3日(米国時間)に発表した「AWS Local Zones」は、AWSのサービス提供における新たな粒度だ。これがどう増えるのかは未知数だが、例えば数年後、AWSが世界中で数百の拠点を持つ「分散クラウド」になっている可能性はゼロではない。
Local Zoneはプロダクト名ではなく、「リージョン(Region)」「アベイラビリティゾーン(Availability Zone)」などと並ぶ、構成単位の名称。Regionに求められるコントロールプレーンなどの仕組みを持たない小規模なデータセンター(群)を切り離し、特定地域に展開するものを、「Local Zone」と呼ぶことにしたようだ。このため、以下では「ローカルゾーン」とカタカナで表記する。
AWSはローカルゾーン第1号を、米カリフォルニア州ロサンゼルスに開設したこと発表した。同社はこれを、米国西部(オレゴン)リージョンの下にぶら下げる形で運用する。そして、Amazon EC2、Amazon VPC、Amazon EBS、Amazon FSx、Amazon ELBなど一部のサービスに限定して提供する。
典型的なエッジアプリケーションだけが、ローカルゾーンの用途ではない
ローカルゾーンは5Gエッジコンピューティングの「AWS Wavelength」と同様、遅延に敏感なアプリケーションをユーザーに近い場所で動かすための拠点だと、AWSは説明している。だが、エッジ/IoTアプリケーションとして一般的に想像できるものだけが、ローカルゾーンの用途ではないようだ。
ロサンゼルスがローカルゾーンの第1号となった理由には、コンテンツ制作スタジオのニーズがあるという。SFXなどのレンダリング処理を、AWSのようなクラウドで実行する例が多数見られるようになってきた。だが、ワークステーションも仮想化してクラウドに移せるかというと、クラウドとの間の遅延が理由でユーザーエクスペリエンスが劣悪になり、実現できないケースが見られる。だが、ローカルゾーンがあれば、ここで仮想ワークステーションを動かし、レンダリングは親リージョンで行うといった、従来はできなかったことが実現するのだという。
つまり、典型的なエッジアプリケーションとは言えなくても、上の例のようにユーザーの使い勝手を考えるとクラウドに移せないといったアプリケーションがあれば、ローカルゾーンがこれを救える可能性がある。
そこでAWS CEOのアンディ・ジャシー氏に、「例えば3年後、どれくらいのローカルゾーンを持つことになるかについて予想はできるか」と聞いてみた。同氏は「顧客の声を聞き、話しあうことが先決で、具体的に答えることはできない」という模範的な答えを返した。現在のところ予定しているのは数カ所だという。
特定エリアにおける低遅延ニーズが明確でなければ、AWSがその地域にローカルゾーンを作ることはないが、例えばスマートシティなら、用途として想像しやすいのではないだろうか。もちろんそれ以前に、まだリージョンが置かれていない国へサービスを展開する際にローカルリージョンを活用するという選択肢もあるのかもしれない。
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