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「マイクロサービスアプリ構築を容易にする」、Microsoftが始めたOSSプロジェクト「Dapr」について、生みの親に聞いたKubeCon+CloudNativeCon North America 2019報告(3)(2/2 ページ)

Microsoftは2019年10月、マイクロサービスアプリケーションの開発を容易にするオープンソースソフトウェアのプロジェクト、「Dapr(Distributed Application Runtime)」を開始した。その「生みの親」であるルーク・キム(Luke Kim)氏とヤーロン・シュナイダー(Yaron Schneider)氏に、2019年11月開催のKubeCon+CloudNativeCon North America 2019で聞いた。

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パブリッククラウド事業者がDaprを推進する理由

――素晴らしいことだとは思いますが、クラウドサービス事業者としては、こうした機能を持つソフトウェアをオープンソースとして公開しても、短期的なメリットがないですよね。なぜDaprを推進しているのですか?

キム氏 マイクロサービスアプリケーションの構築は難しすぎます。一般企業における開発者たちは、まだまだ3階層アーキテクチャでアプリケーションを書いているのが現状です。こうした状況を打開するため、マイクロサービスの開発をとても簡単にすることで、業界全体の底上げをしたいと考えています。そして将来的には、AzureがDaprを動かすのに最適な場所となるようにしたいと思っています。

――何をすればAzureがDaprにとって最適な場所になるのですか?

シュナイダー氏 Daprは(外部リソース統合などを実現する)さまざまなコンポーネントから成り立っています。オープンソースコミュニティーですので、誰でも好きなコンポーネントをコントリビューションできます。現在このプロジェクトの主宰者という立場にいるMicrosoftとしては、(コンポーネント開発を通じて)Azureが提供するあらゆるサービスを、Daprで最大限に活用できるようにし、Azureユーザーが安心してDaprを生かせるような環境を作っていきたいと思っています。

キム氏 Microsoft社内でも、Azureサービスの構築にDaprを活用していこうとしています。一般企業に限らず、Microsoftのような会社でも、分散アプリケーション開発は頭痛の種です。例えば私が以前所属していた社内の開発チームでは、ロギングフレームワークだけをとっても5種類あり、苦労していました。Daprを使えば、マイクロサービス構築における一貫性や標準化が実現できます。

 また、今後はクラウドとエッジにまたがるアプリケーションが求められるようになっていくと思います。パブリッククラウド、エッジ、オンプレミスのそれぞれで動くだけではなく、これらにまたがったアプリケーションです。こうしたアプリケーションの開発は非常に複雑ですが、Daprはとても容易にしてくれます。

――製品化に向けたロードマップを、どう描いているのですか?

キム氏 具体的な計画はまだ検討中で、伝えられるようなものはありません。ただし、Daprは数週間前に公開したばかりであるにもかかわらず、大きな反響を受けています。「データコンポーネント」と呼ばれるコンポーネントのコミュニティーからのコントリビューションは、既に7、8件あります。そこで私たちは、このソフトウェアのバージョン1.0に向け、活動していきます。コミュニティーが求める機能をカバーしたDaprの1.0を出し、プロジェクトが軌道に乗ってきたら、サービスとしての展開も検討したいと考えています。具体的な計画は、2020年前半に決めることになると思います。

シュナイダー氏 Daprでは既に、Microsoftのコントリビューターよりもそれ以外のコントリビューターの方が多くなっています。オープンソースプロジェクトでは珍しいことで、とてもエキサイティングだと感じています。

Daprは、分散アプリケーションを構築できる開発者の層を大きく広げる

――Daprはどれくらい大きなものに発展していくのでしょうね。

キム氏 私たちの上司であるマーク・ルシノビッチは、私たちが最近まとめて発表したOAMとDaprについて、次のように表現しています。

 「OAMは、プラットフォームから独立した形でアプリケーションを記述する標準として、業界全体が必要とするものだった。一方、Daprは業界全体を変革するものになり得る。なぜなら、全く新しい層の開発者たちに対し、さまざまな開発言語を活用して、各種クラウドにまたがる分散アプリケーションやマイクロサービスを開発できる力を与えるからだ」

 MicrosoftやGoogle、AWSなどで働いている開発者は、一日中分散システムのことを考えるのが仕事です。一方で、企業の事業部門にいて、ビジネスアプリケーションを開発している人たちがいます。この人たちの仕事は、ビジネスプロセスをアプリケーションに組み込み、形にすることです。こうした人たちが、一日中分散システムをやっている開発者が生み出したベストパターンやベストプラクティスをシンプルに活用して、ビジネスに貢献できるようにする。これがDaprにおける私たちのビジョンです。

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