Azure Cloud Shellは今後、Ubuntu 16.04 LTSからDebian 10ベースに切り替え:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(129)
Microsoftは「Azure Cloud Shell」を現在のUbuntu 16.04 LTSベースのイメージからDebian 10ベースのイメージに移行する予定です。オープンソースのAzure Cloud Shellツールイメージ(azure-cloudshell)は、既にDebian 10ベースに更新されており、ローカル環境にデプロイして利用可能です。
Ubuntu 16.04 LTSのライフサイクル終了に向け、Debian 10ベースに移行
「Azure Cloud Shell」は、Microsoft Azure環境を管理するためのコマンドラインツールである「Azure CLI」や「Azure PowerShell」、その他のツール(「code」や「emacs」エディタなど)を提供する、クラウドベースのシェル環境です。「Azureポータル」(https://portal.azure.com)または「Azure Cloud Shellポータル」(https://shell.azure.com)から素早く起動して利用できます。現在のAzure Cloud Shellは、Ubuntu 16.04 LTS(Long Term Support)ベースで構築されたLinuxコンテナとしてコマンドラインツールを提供します(画面1)。
画面1 Azureポータルに統合されたAzure Cloud Shell(画面左)とAzure Cloud Shellポータル(画面右)。2020年12月1日現在はUbuntu 16.04 LTSをベースに構築された環境
2016年4月にリリースされた長期サポート版の「Ubuntu 16.04 LTS」は、2021年4月に5年間の通常(Standard)サポートが終了となり、無償のセキュリティ更新が提供されなくなります。MicrosoftはUbuntu 16.4 LTSのライフサイクル終了に向けて、今後、Azure Cloud Shellを「Debian 10」ベースに移行することを発表しました。
- The Azure Cloud Shell image has been updated[英語](Microsoft Azure)
Azure Cloud Shellツールイメージはオープンソースとして利用可能
Microsoftは2020年8月に、Azure Cloud Shellツールイメージ(azure-cloudshell)のLinuxコンテナイメージをオープンソース化し、GitHubで公開しています(画面2)。GitHubで公開されている最新イメージは、既にDebian 10ベースに更新されています。
- Azure Cloud Shellツールイメージがオープンソースになりました(Microsoft Azure)
- Azure / CloudShell(GitHub)
Azure Cloud Shellツールイメージは、ローカルでビルドしてコードをレビューしたり、変更や要望を提案したりするなど、開発プロジェクトに貢献するために利用できます。また、ローカルにコマンドラインツールをインストールしたり、アップデートしたりする手間を省いて、Azureの管理に最適な最新のコマンドラインツールをローカル環境に簡単に導入、更新するために利用できます。
Azure Cloud Shellツールイメージは、Linuxコンテナを実行可能なDocker環境でビルド、実行できます。Windowsの場合は、以下のいずれかの環境になります。
- Windows Subsystem for Linux 2(WSL2)バックエンドのWindows版Docker Desktop CommunityのLinuxコンテナ環境
- Hyper-V(Hyper-V上のMobyLinux)バックエンドのWindows版Docker Desktop CommunityのLinuxコンテナ環境
- Experimental(実験的)機能「LCOW(Linux Container on Windows)」が有効なWindows版Docker Desktop CommunityのWindowsコンテナ環境
- LCOWが有効なWindows Server上の「Mirantis Container Runtime(旧称、Docker Enterprise)」
例えば、最新のコマンドラインツールをローカル環境に導入するには、次の「docker」コマンドを実行します。イメージの展開後のサイズは8GBを超えるため、初めてイメージを取得する際には時間を要しますが、イメージ取得後はLinuxコンテナとして素早く実行できます(画面3)。なお、GitHub上のイメージはテクニカルプレビューという位置付けであり、Microsoft Azureの公式なサポートの対象外であることに留意してください。
docker pull mcr.microsoft.com/azure-cloudshell:latest docker run -it mcr.microsoft.com/azure-cloudshell /bin/bash
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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