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「自然の豊かさ」を超えたソフトパワーを長崎から今やらなければいけないことをやり続ければ、きっと明日は変わる

空気がきれいで、自然が豊かで、人が優しい。それはどこの地域も同じ。では、愛する故郷をもり立てるには、何を行い、何を伝えればいいのだろうか――。

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 「ジャパネットたかた」の創業者で、2015年1月15日まで代表取締役を務めた高田明氏のことは、テレビショッピング番組の軽妙な語り口で知る人も多いだろう。


A and Live 代表取締役 高田明氏

 現在「A and Live」の代表取締役として、また長崎を本拠とするプロサッカーチーム「V・ファーレン長崎」の「サッカー夢大使」として活動する同氏は、鎖国前まで国際的な貿易港だった平戸で生まれ育った。大学進学を機に長崎県を離れ大阪へ。言葉や食事の味付けの違いに多少の驚きを感じながらも、「僕はあまり過去を振り返る人ではなくて、入ったらそこにすぐ慣れてしまう方なんですよね」と当時を振り返る。

 京都の機械製作会社に就職し、ドイツ・デュッセルドルフを拠点にヨーロッパ各国を回って営業の通訳に携わったかと思えば、一転、親友とともに翻訳で起業を志した。だが頓挫の後に帰郷し、家業のカメラ店を手伝ううちにその世界にはまり、佐世保に店を出店、その土地で1番の売り上げを上げるまでに育てた後、ラジオ出演を機に通信販売の世界へ――こんなふうに一言ではくくりきれない経歴をたどってきた高田氏だが、唯一貫いてきたことがある。どんな状況にあっても、自分が今やらなければいけないことをやり続けるという姿勢だ。

 その高田氏に、長崎で働くことの魅力はどこにあり、高田氏自身はどんな魅力を長崎に作り出そうとしているのかを尋ねた。

※※編集部注:高田氏の「高」は正しくはハシゴダカです

通販大手に成長しても「あえて東京に出ていく必要はないはず」

 地元に帰ってしばらく家業を手伝い、「カメラのたかた」の佐世保営業所 所長を務めた後に独立した高田氏。最新のプリント機を導入して業績を伸ばし、地域の一番店に育て上げたが、あるときお店の宣伝として活用していたラジオ番組で紹介したカメラが5分で100万円もの売り上げに達したことが転機となった。

 「面白いな、こんなに商売になるんだなと思いました」

 とはいえ、当時はラジオショッピングはもちろん、テレビショッピングも黎明(れいめい)期。ましてや佐世保のカメラ店がいきなり長時間の枠などもらえる時代ではなかった。しかし高田氏は、全国各地のローカル局を行脚し、何度も通って信頼関係を築いていった。こうして信頼と実績を積み重ねながら東阪名のキー局にも進出していったという。

 それだけ会社が成長したならば、大阪や東京への進出も考えそうなものだが、高田氏は「逆に、なぜ東京に行かないといけないんですか? あえて行く必要はないんじゃないですかと言いたい」と述べる。

 「今ほどではなくても、全国どこでも流通網が整備されていましたし、決済手段もどんどん進化していました。だから事業の面で考えると、あえて東京に出る必要は本当にないと思っていました」

 そんな高田氏にとっての原風景は、平戸の自然だ。まだ平戸大橋が開通する前、父親に連れられて魚釣りに出掛けたり、山で鳥を追ったりと、豊かな自然の中で子供時代を過ごした。平戸から外に出ることもまれで、佐世保、まして長崎市に出てくる機会はほとんどなかったという。

 豊かな自然の中で、海の幸を存分に味わいながら育ってきた同氏だけに、やはり自然の豊かさ、そして人の優しさが長崎県の魅力であることは間違いないという。「小値賀町の野崎島に行くと野生の鹿が数百頭もいたりします。船で島に渡ったときには、船の中にアゴ(トビウオ)が飛び込んできたこともありました。僕もびっくりしちゃって。心が洗われるというか、感動しますよね」と、楽しそうに話す。転勤で長崎に来て長崎で働くジャパネットの社員も釣りを楽しんでいる人が多いという。

 「やっぱり自然に恵まれています。食べ物もおいしいし、観光名所も歴史もありますし、人もめちゃくちゃ優しいですよね。長崎には他の地域にはない歴史と文化があり、そういうところが一番魅力だと思うんです」


長崎は街がすり鉢状に形成されており(長崎市中心部が山に囲まれている)、長崎特有の斜面地に住宅が配置されている

自然や人の優しさだけでなく、「何か加えるものを」

 だが同時にこうも言う。「そこはそこで磨いていかないといけないけれど、何か加えるものがいると。時代の流れの中で変えていかないといけないものがあると思うんです」

 創業以来番組企画で全国各地を回ってきた高田氏は、自らの経験を踏まえてこんなふうに表現する。

 「どこの地域に行っても、空気がきれいで、自然が豊かで、人が優しいんですよ。僕もけっこう現場を回りましたが、人が優しくないっていう地域は1カ所もなかったです。地域の人と話してみると、みんな、すごくいい方ばかりでした」

 全国どこも自然が素晴らしく、人も素晴らしいなら、長崎県ならではの魅力とは何なのだろうか。その解として高田氏が考えているのが、新たなソフトパワーを作り出すことだ。

 「ふるさとを出て行った人に長崎に魅力を感じてまた帰ってきてもらうためには、何か新しいものを作っていかなければいけないと思うんですね。これは一企業だけはできません。いわゆるソフトパワーを発信することで、長崎を、日本を元気にしていけるんじゃないかと考えています」

スポーツの力を生かし、ソフトパワーを発信

 ジャパネットでは既にそのための取り組みを始めている。1つは、サッカーやバスケットボールといったスポーツの力を生かしたスポーツ立県を目指すことだ。その一環として、スタジアムを核に商業施設やオフィス、ホテルなどを併設し、スポーツの視点から地域創生を目指す「長崎スタジアムシティプロジェクト」も進めている。

 高田氏は以前、JリーグのV・ファーレン長崎の社長を務め、集客やおもてなし、情報発信などさまざまな面で新しい取り組みを進め、ホームタウンのサポーターの盛り上がりを作り上げてきた。試合が行われるスタジアムに至る道のりでの歓迎ぶりに感激し、「また来よう」と思ったアウェーチームのサポーターも少なくない。

 「スポーツというのは、子供たちにすごく夢を与えてくれます。また、V・ファーレン長崎のサポーターって女性やご年配の方の比率も多いんです。そういう方たちが『1週間試合がないとさみしくて、さみしくて』と、生きがいにして楽しんでらっしゃるんです」と、スポーツが老若男女に夢を与えてくれていると話した。

 しかも「ヨーロッパにも南米にもサッカー文化があります。別にサッカーでなくても、ゲームやアニメ、漫画でも何でもいいんですが、企業の成長や効率といったものばかりではなく、ソフトパワーというものを長崎の中に作らなきゃいけないんじゃないかと思うんですよね」とも考える。

 さらに夢は広がる。「長崎は昔から異国との交流があったところです。だったら、長崎の子供たちを日本で1番語学に強い子供にしよう、グローバル化が進む中でインターナショナルな人間にしていこう、というアイデアだってあり得ます。サッカーを通して、フランス語もスペイン語もドイツ語も、英語も中国語もしゃべれる子供を育成する語学学校を作れば、それだけでもすごい人が集まるでしょう。そして『ああ、こんな場所なら子供を連れてIターン、Uターンしてみよう。環境もいいから』っていう形になるわけですよ」と述べる。

 また、広島と並んで世界で唯一被ばくした都市として、平和の尊さを発信していく力もあるだろうという。

 「V・ファーレン長崎やサンフレッチェ広島は、FCバルセロナやレアル・マドリードのように平和についての発信力は高いんですよ。これまで多くの人が蓄積してきたことを踏まえつつ、変えていくべきところは変えていかないと本当の問題解決は難しいでしょう。だから、県民の皆さんを巻き込み、全国の皆さんを巻き込みながら発信していくことで、長崎の魅力ができていくんじゃないでしょうか」


スタジアムイメージ:(c)ジャパネットホールディングス

魅力がきちんと「伝わった世界」を作り上げることも地方創生には不可欠

 豊かな自然や歴史にプラスすべき「何か変えていくもの」は、長崎だけではなく、どんな地域にもあるはずだと高田氏は考える。

 「新型コロナウイルスが拡大して、普通の生活の良さを感じた人は多いと思います。同じように、皆さん、町や市、県にあるすごいことに気付いていないだけなんじゃないでしょうか。今まで気付かなかったことに気付き、変えるべきところは変えていく、そしてソフトパワーを発信できる何かを加えていくことが大事だと思います」

 ただ難しいのは、その魅力を「どのように伝えるか」だ。

 「テレビ番組で全国あちこち回りましたが、皆さん本当に真面目に、一生懸命に取り組んでいらっしゃいます。一番難しいのは、そうした自分の町の魅力、自分の会社の魅力というものをどう伝えればいいかということです」

 だが、そこに手軽な解決策はない。

今やらなければいけないことをやり続ければ、きっと明日は変わる

 「着眼大局、着手小局」という言葉が大好きだという高田氏。紆余(うよ)曲折を経て、携わる業務が変わる中でも、「全体的な戦略は何か、そのために何を変えていかなければいけないのか、ずっと同じことをやり続けることが当たり前になっていないか」を問い続け、やり方を少しずつ変えながらチャレンジを続けてきた。

 そのとき、そのときで常に目の前のことに向き合ってきた自身の経験も踏まえながら、「今自分がやらなければいけないことを一生懸命やり続ければ、必ず明日が変わってきますし、1年後も変わってくると思います」と話す。

 「人間って、不確かな未来のことを考えて悩み、行動が遅くなってしまうこともあります。けれど今や、5年先、10年先はおろか、1年先のことですら状況が変わってしまう時代です。好きなことを一生懸命やっていく中では、目標も変化していくでしょう。そうなったら、またそこに向かって再挑戦していけばいいんですから、あんまり悩まないでほしいですね」とアドバイス。

 新型コロナウイルスの影響で先の見通しが立たないとしばしば言われるが、「時間はどのくらいかかるか分かりませんが、コロナはね、必ず収束します。必ず、新しい日常はまたやってきますから、あまりとらわれ過ぎず、どんな状況になっても、感染を予防しながら自分が今やらなければいけないことを一生懸命、メリハリを付けながらやり続けることだと思います。そういう中で明日が変わるし、自分の人生もいい方向になると信じています」と励ましてくれた。

皆さんも人生を長崎で過ごしてみませんか

 長崎に興味をお持ちの読者の皆さんに、高田氏からビデオメッセージをいただきました。

 「私は長崎生まれ、長崎育ちです。長崎の魅力といえば、まず、食べ物がおいしい。イカは最高です。自然も空気もきれいだし、釣りスポットがたくさんあるので、休みの日には各地で釣りをして子供さんと一緒に遊べます。

 今、長崎は100年に1度の変革期を迎えています。間もなく新幹線がやってきますし、長崎駅は大改造中、そしてサッカーのスタジアムを作り、スポーツ立県を目指しています。日本は東京一極集中と言われていますが、IターンUターンで長崎に戻ってくる人が増えています。皆さんも人生を長崎で過ごしてみませんか? 待っています!」

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