実行プランに関連付けられた実行コンテキストの一覧を出力する:SQL Server動的管理ビューレファレンス(42)
「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、実行プランに関連付けられた実行コンテキストの一覧の出力について解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_exec_cached_plan_dependent_objects」における、実行プランに関連付けられた実行コンテキストの一覧の出力について解説します。対応バージョンは、SQL Server 2008以降です。
概要
SQL Serverでは、クエリを実行する際にはクエリのコンパイルにより作成された実行プランが使用されます。実行プランに従ってクエリを実行する際には、実行プランごとの実行コンテキストが作成、利用されます。カーソルを利用する際にも、カーソルごとのカーソルコンテキストが作成され、実行時に利用されます。
これらの実行コンテキストやカーソルコンテキストはプランごとに保存され、2回目以降のクエリ実行の際に再利用されます。また、既にクエリが実行中で、再利用できるコンテキストが無い場合には新しく作成され、使用が終わったらキャッシュに追加されます。
「sys.dm_exec_cached_plan_dependent_objects」動的管理関数を利用することで、実行プランに保存された実行コンテキスト、カーソルコンテキストの一覧と利用回数を出力できます。
なお、「sys.dm_exec_cached_plan_dependent_objects」動的管理関数にはプランハンドルが必要なため、「sys.dm_exec_cached_plans」動的管理ビューなどのプランハンドルを出力できる動的管理ビューと組み合わせて使用する必要があります。
構文と引数
構文 sys.dm_exec_cached_plan_dependent_objects(plan_handle)
引数名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
plan_handle | varbinary(64) | プランハンドルを渡す |
出力内容
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
usecounts | int | 実行コンテキストまたはカーソルが使用された回数 |
memory_object_address | varbinary(8) | 実行コンテキストまたはカーソルのメモリアドレス |
cacheobjtype | nvarchar(50) | プランのキャッシュオブジェクトの種類 Executable plan CLR compiled function CLR compiled procedure Cursor |
動作例
SQL Serverインスタンスに接続し、ストアドプロシージャを実行し、「sys.dm_exec_cached_plans」動的管理ビューと組み合わせて「sys.dm_exec_cached_plan_dependent_objects」動的管理関数を出力します(図1)。
実行したクエリの実行プランに対応する実行コンテキストの情報が「1」行出力されました。
次に、このクエリを同時に複数のセッションから実行し、「sys.dm_exec_cached_plan_dependent_objects」動的管理関数を出力します(図2)。
クエリを同時実行するとその分の実行コンテキストが必要なため、「usecounts」列の値から、最初に実行した際に作成された実行コンテキストは再利用され、新しく2つの実行コンテキストが作成されたことが分かります。
また、最初の実行時と比較して、「sys.dm_exec_cached_plans」動的管理ビューの「sizeinbyte」列の値が増加していることが分かります。作成された実行コンテキストのサイズは、実行プランのサイズに含まれるようです。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019 CTP2」をインストールした環境を想定して解説しています。
筆者紹介
椎名 武史(しいな たけし)
日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
伊東 敏章(いとう としあき)
日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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