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2022年以降のクラウドネイティブ、世界で広がる開発・運用支援サービスとはGartnerが語る「Continuous Product-Centric Services」

クラウドネイティブ時代に、世界で企業向けの開発・運用支援サービスはどう変化していくのか。Gartnerは、開発・運用サービスが「プロジェクト中心」から「プロダクト中心」のモデルに急速に変化していくと予測している。

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 企業は、クラウドサービスやコンテナ基盤を手段として活用し、アジャイルなアプリケーション開発を進めようとしている。ビジネスに直結するアプリケーション(サービス)を高速、継続的に開発していく必要があり、このために内製化に取り組む企業が増えている。

 とはいえ、あらゆる企業が、全てのクラウドネイティブなソフトウェア開発を社内で行えるかというと、そうはいかない。そこで企業の取り組みを補完する新たなITサービスが広がろうとしている。日本では「共創型開発」「共創型受注」などという言葉で、SI事業者の新たなあり方が議論されている。

 ではグローバルで見て、企業向けの開発・運用支援サービスは今後どのように変化していくのか。Gartnerでは、同社が「Continuous Product-Centric Services(コンティニュアス・プロダクトセントリック・サービス)」と名付けたサービスの急速な普及を予測していると、ガートナージャパン バイスプレジデント、アナリストの桂島航氏は話す。

 このサービスが将来、ITサービス市場において従来のウォーターフォール型のサービスを置き換えていくと同社が考えていることは、上の図から読み取れる。

 Continuous Product-Centric Servicesは、「アジャイル開発とDevOpsの採用の拡大が、従来型のSIを時代遅れのものにしつつある」ために生まれたサービス。従来のウォーターフォール型開発では、開発開始時に要件はほぼ決まっており、決められたリソースと時間でいかに完了させるかという「プロジェクト」管理に主眼が置かれている。システム開発が終わればプロジェクトチームは解散する。しかし、アジャイル開発の時代に求められているのは、そうした「単発的で、プロジェクト中心」なものではなく、「継続的で、プロダクト中心」なサービス。顧客のビジネスにとって必要な「プロダクト」を継続的に発見・開発・運用する。

 Continuous Product-Centric Servicesでは、顧客のプロダクトの継続的な開発・運用を行うアジャイルチームをサービスとして提供し、顧客と協働させる。

 Continuous Product-Centric Servicesの定義は、「長期の契約期間に基づき 、アジャイル/DevOpsのアプローチでソフトウェアを構築、デプロイ、サポートするマルチディシプリナリーなチームを供給する、外部サービス提供者」。なお、「マルチディシプリナリーなチーム」とは、多分野の専門家たちが1つの目標に対して相互連携するチームのこと。

 桂島氏によると、具体的には次のような特徴を持つ。

  • DevとOpsを分けず、アジャイル/DevOpsに基づきソフトウェアの開発および運用を継続的に提供する
  • このアジャイルチーム内には、アーキテクト、スクラムマスター、開発者、UX/CXデザイナー、機械学習/AIエキスパート、テスター、CI/CDや各種自動化などのDevOpsエキスパート、SRE(Site Reliability Engineers)といった人材を要件に合わせてそろえ、ソフトウェアの開発および運用をチームとして行う。具体的には、ソフトウェア開発、CI/CDプロセスの自動化、本番への投入、 インシデントの解決、欠陥の修復、機能追加などを実行する
  • 顧客からはプロダクトオーナーを出してもらい、このプロダクトオーナーとサービス供給側のチームが一体となって動くことで、ビジネスニーズに基づいたソフトウェアの継続的な更新を可能にする

 継続的な開発と運用が前提であるため、契約期間は長い。対象となるプロダクトの終了まで、あるいは複数年にわたる契約などが考えられるという。また、単一のアジャイルチームが1社ではなく複数の顧客を担当し、サブスクリプションサービスとして提供する場合もあるという。Continuous Product-Centric Servicesを提供する企業が上述のスキルや基盤整備を付加価値とし、適切な値付けができるならば、人月商売にはならないと、桂島氏は話す。

企業はContinuous Product-Centric Servicesをどう使う?

 では、企業は内製化とContinuous Product-Centric Servicesをどう使い分けることになるか。

 「内製化は中長期的に見て、より本質的な方向性だといえる。特に、SIerに依存し過ぎている企業が多い日本では、内製化に舵(かじ)を切ることの重要性は高い。

 しかし、全てのデジタル・イニシアティブにおいて、内製化によるアプローチがコストおよびスピードで勝るとは限らない。クラウドネイティブな開発と運用に必要とされるさまざまなスキルや基盤を、社内で備えていくのにも時間がかかる。Continuous Product-Centric Servicesを活用するほうが、ビジネス上の要件に効果的に対処できるケースはある」(桂島氏)

 ただし、こうしたサービスを利用する前提として、ユーザー企業の側が、プロジェクト中心からプロダクト中心へと、IT開発についての考え方を変えなければならない。「プロダクト中心」とは、自社のIT機能/サービスが、それ自体売り物であるという考え方だ。

 こうした考え方に基づき、「計画を遂行する」のではなく「顧客とビジネスにとっての価値」を最優先課題とし、「厳格な変更管理」の代わりに「変更への柔軟な対応」を図り、 「完成したらチームを解散」するのではなく「ビジネス/ITの混合チームで 継続的改善」を進める必要がある、と桂島氏は指摘する。

 Continuous Product-Centric Servicesと一体となって動くプロダクトオーナーにも、幅広い知識と能力、コミットメントが求められる。

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