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「クラウドの巨人」の進撃が続く中、Nutanixが提供する価値とは何かVMwareから来たNutanix CEOが考えていること(2)

「ハイパースケーラー」と呼ばれる超大規模クラウド事業者が勢いを増している。Nutanix CEOインタビューの後編では、こうしたクラウドの巨人たちの間で、Nutanixは企業にどのような選択肢を提供できるのかを聞いた。

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 Nutanixは、ハイパーコンバージドインフラ基盤を、企業社内だけでなく、パブリッククラウドにも広げようとしている。クラウドが席巻しようとしている時代にNutanixが提供できる価値とは何か。Nutanix CEO(最高経営責任者)インタビューの後編では、これについてラジブ・ラマスワミ氏に聞いた。

――Amazon Web Services(以下AWS)やMicrosoft Azure(以下Azure)との関係は、どう発展していくのだろうか?


Nutanix社長兼CEO、ラジブ・ラマスワミ氏

 特にAzureとの関係は始まったばかりだ。両社の製品間のインテグレーション、共同マーケティング/販売の双方で、やれることはたくさんある。Azureのペアメタルサーバはちょうど展開が始まったところだ。同社は最初のパートナーの一社として、 Azure のベアメタルサーバ上でNutanixのプラットフォームをユーザーが動かせるようにする。

 大きな協業の機会としては、例えばディザスタリカバリがある。オンプレミスのシステムやデータのスナップショットをNutanixのオブジェクトストレージに取得し、パブリッククラウド側のNutanixに複製しておいて、災害時には必要に応じてクラウド側で立ち上げるというものだ。従来よりもコスト効率ははるかに優れている。

――ではAzureとは、他に例えばどのような協業が考えられるのか。

 Azure Arcに関する連携も発表済みだ。オンプレミスのNutanixプラットフォーム上で動くKubernetesクラスタを、Azure Arcで管理できるようにする。Azure Arcが気に入った人たちが、これをコントロールプレーンとして使い、さまざまな場所にあるKubernetesクラスタを統合的に管理できるようになる。

 パブリッククラウド事業者とは、今後ますます多様なコラボレーションを行っていくつもりだ。

――コンテナおよびKubernetesに関して、Nutanixは「Karbon」というプラットフォーム機能を提供してきた。これとRed Hat OpenShiftとの関係はどうなっていくのか。

 この分野では自社でやっていくよりもパートナーシップのほうがいいと判断している。Kubernetesに関しては、オープンソースのKubernetesディストリビューションを、Nutanixがサポートする形で提供していく。これがKarbonだ。 だが、オブザーバビリティ、管理、オートメーションなど、上のレイヤーを含めたスタック全体を考えると、パートナーシップにフォーカスした方が良いと判断した。 Red Hat OpenShift、Google Anthos、Azureなどと組んで、こうした機能を提供していく。

 あなたが言ったように、この世界には巨人たちがたくさん存在している。こうした世界の中で、自分たちが本当に得意なものにフォーカスしなければならない。当社は統合ストレージやマルチクラウドデータベースサービスを含めた、ハイブリッド/マルチクラウド基盤に注力していく。

 従って、Kubernetesスタック全体については、Red Hatなどとの協業で提供していく。

――製品戦略における現在の優先事項は何か?

 Nutanixのミッションは、「インフラを見えなくする」ことだ。さらにこれを拡張してクラウドを見えなくしていこうとしている。これによって顧客はビジネスで結果を出すことに集中できる。

 今後もこれを実現するハイブリッドクラウドプラットフォームを提供し、さらに分かりやすく市場に提供していこうと考えている。 考え方としてはソリューション視点で機能をまとめ上げ、顧客が容易に採用できるようにしていく。

 例えば当社は「Nutanix Validated Design」をリリースした。 これによって顧客は導入したいソリューションに合わせ、機能を組み合わせて迅速に導入できる。今後ますます製品ポートフォリオをシンプル化し、顧客が採用しやすくしていく。 一方でパートナーと組んで高度に統合されたプラットフォームを提供していく。

 究極的には、ハイパーコンバージドインフラストラクチャを ハイブリッドマルチクラウドプラットフォームに進化させていくことが目標だ。

――では、事業戦略における優先事項は何か。

 ビジネスをスケールさせ、全世界で成長することだ。 日本も非常に重要な市場で、トヨタ自動車、セブン&アイ・ホールディングス、三井化学をはじめ、多数の顧客がいる。投資を続け、顧客を増やしていく。

 重要なのは、あらゆる顧客のデジタル化が進んでいるということだ。日本でも政府が官民のデジタル化を推進している。デジタル化を進めるに当たって、インフラやアプリケーションをどうモタナイズしていくか、新しいアプリケーションをどう構築していくか、クラウドをどう活用していくかを考えなければならない。当社は、顧客が自身を変化していくのに必要な機能を提供することに集中する。

 もう1つの大きなテーマに働き方の変化がある。コロナ禍から脱した後も、ハイブリッドワークや分散ワークは続く。そしてこれは、ほとんど全ての企業にとっての優先事項となる。(Citrix Systemsなどとの協業で)こうした取り組みを支えるテクノロジーソリューションを提供することが、当社にとって不可欠だ。

 戦略パートナーやチャネルパートナーがビジネスをスケールできるように、協力を続けていく。チャネルパートナーにはより自律的にビジネスを推進できるようにトレーニングを行う。一方、HPE、Lenovo、富士通、日立製作所をはじめとした戦略パートナーとの関係は開花しつつある。協力して顧客にソリューションを提示し、共にビジネスを勝ち取っている。Red Hatなどとも、同じことを進めていく。

――ハイパースケーラーはオンプレミス、エッジ、通信事業者のインフラなど、あらゆるところに触手を伸ばし始めている。ガートナーも、2025年までに企業の50%以上が、こうした分散クラウドを何らかの形で使うようになると言っている。Nutanixはこうしたトレンドにどう備えようとしているのか。

 それは、「クラウドとは運用モデルだ」ということにつながる。当社は顧客がパブリッククラウドのいいところ取りができるようなプラットフォームを提供していく。あらゆるパブリッククラウドを最大限に活用できる一方、特定クラウドにロックインされないような柔軟性と自由を維持できるようにする。

 Nutanix自身の例を話そう。当社は「Test Drive」という、パブリッククラウド上でNutanixを試せる無料のサービスを展開している。多数の顧客がこれを使ってPoC(概念実証)を行うようになり、大きな人気を獲得した。しかし、利用量が増えてくると、当社がクラウドに支払う料金が大きく上昇した。そこで当社のCIOに、「このサービスは続けなければならない、最もコスト効率の良い方法を考えてくれ」と頼んだところ、自社のデータセンターで動かすしかないとの答えだった。そこでこれを実行しつつある。

 これが誰にでも当てはまるトレンドだとは言わない。 だが、クラウドの利用を拡大してきた企業の一部は、高くつくものであるということを認識している。

 「ハイパースケーラーはどこにでも進出してきている、どう対応するのか」というあなたの質問に答えると、当社の差別化要因はシンプルな使い勝手、柔軟性、単一のクラウド事業者にロックインされない自由さにある。 私が話をする大企業のほとんどは、ハイパースケーラーを2社、時には3社使っていると言う。だからこそ、彼らにとっては選択の自由を確保することが重要だ。当社はこうした顧客を助けられる。また、パブリッククラウド事業者は、オンプレミスのワークロードを自社に取り込むために、当社のような存在が必要だ。

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