コンテナ、Kubernetesへの対応で「AI基盤」と「ストレージ」はどう変わるのか:依然ハードルが高い「AI開発」
AIはもはや限られた研究開発部門のものではなくなり、「全社でいかに活用するか」が課題となっている。一方で、AI基盤は特殊性が高く、IT部門での対応は難しい。このギャップを解消する“汎用的なAI基盤”はどう構築すればいいのか。
特殊な“AI基盤”をどう整備するか
一部の先進企業のものだと思われていたAI(人工知能)だが、もはやビジネスに不可欠なものとなりつつある。エヌビディアジャパンの川井 源氏(エンタープライズ事業本部 データセンターGPU営業推進 シニアマネージャー)は「社会的なトレンドとしても、AIは普遍的な機能として組み込まれるようになりました。AIなしに企業競争力を維持することは難しくなっています」と分析している。
しかし、いざ活用しようとすると解決すべき課題は多い。川井氏によると、AI基盤で使う学習や推論のためのソフトウェアにはオープンソースソフトウェア(OSS)が多く、ライブラリやフレームワークの整合性を取る必要がある上に、バージョンアップなど状況の変化をキャッチアップしながら運用する必要があるという。
サーバやストレージなどの要件も一般的なITシステムの基盤とは異なる点が多く、IT部門が持つ従来のノウハウを生かしにくい。AI基盤の整備では、このギャップをどう埋めるかが大きな課題となる。
「これまではAIに詳しいメンバーのいる研究開発部門などが自ら基盤を用意し、限られた範囲で活用していました。社内のメインストリームで使うとなると、“汎用(はんよう)的なIT基盤”として活用するための仕組みが必要になります」(川井氏)
AIソフトウェアをコンテナ化して提供する「NVIDIA AI Enterprise」
そこで注目したいのが、AIに関するソフトウェアをコンテナ化して提供するソフトウェア群「NVIDIA AI Enterprise」だ。扱いが難しいAIのソフトウェア部分をコンテナ化することで「ライブラリとフレームワークの整合性を気にする必要がなくなります」と川井氏は言う。
標準的なサーバで利用でき、メーカーで動作検証が済んでいるサーバもあるため安心だ。コンテナを管理する「Kubernetes」のレイヤーについては、「VMware vSphere」(以下、vSphere)と「Red Hat OpenShift」(以下、OpenShift)をサポートし、どちらも動作検証済みだ。
「使い慣れたサーバやvSphereにAIのコンテナを組み合わせることで、これまでのITシステムと同じようにAI基盤を活用できます」(川井氏)
前述したように、AI基盤ではOSSを多用するが、その特性上、企業としてのサポートを受けられないというデメリットがある。NVIDIA AI Enterpriseはそうしたソフトウェアのサポートも提供している。「AI基盤全体として、エンタープライズレベルの保守性を保証する点がメリットです」と川井氏は語る。
NVIDIA AI Enterpriseは国内外で導入が進んでおり、国内では大手通信事業者などがAI開発用の基盤として採用。AIの開発者が利用する統合基盤として、vSphereで仮想化し、必要な分だけ割り当てるといった形で活用しているという。
「“AI基盤を仮想化する”という先進的な活用方法で、画像や動画、音声の解析などさまざまな用途に共通する汎用的な基盤として活用されています」(川井氏)
ストレージの性能、データの“可搬性”をどう保証するか
AIの開発において、忘れてはならないのが「データへのアクセス」だ。大容量のデータに高速でアクセスできなければならないため、データを格納するストレージには大規模な並列アクセスにも耐えられる高い性能が必要だ。そこで際立つのが、オールフラッシュストレージを展開するPure Storageの存在だ。Pure Storageは「FlashBlade」「FlashArray」といったフラッシュストレージを提供しており、オールフラッシュによる高速なI/Oを強みとしている。
最近では、Meta(旧Facebook)が開発を進めているAIスーパーコンピュータ「AI Research SuperCluster」でPure Storageのストレージが採用されたことが話題になった。
「Pure Storageは以前からAI検証済みの基盤『AIRI』(AI-Ready Infrastructure)を展開しています。AIRIは比較的規模が大きい専用基盤を提供するパッケージソリューションですが、NVIDIA AI Enterpriseが登場したことでAI基盤の価格を抑えられるようになりました。これによって、『AI活用のハードルを下げることができるのではないか』と期待しています」とピュア・ストレージ・ジャパンの青柳博史氏(パートナー部 パートナーテクニカルマネージャー)は話す。
「NVIDIA AI Enterpriseはサーバに内蔵されたストレージでも利用可能ですが、AIの利便性を高めるためには『容量や性能の拡張が容易で、複数のシステムから高速にアクセスできるストレージ』が不可欠です。ブレードやフラッシュモジュールを個別に追加できる FlashBladeは“高速な物理ストレージ“としてNVIDIAとの相性も抜群です。通常5年おきに発生するハードウェア更改に伴うデータ移行を心配する必要がないこともメリットです」(青柳氏)
NVIDIA AI Enterpriseのコンテナストレージにおいて重要なのは速度だけではない。さまざまなリスクに備えてバックアップ、DR(災害復旧)などの対策が必要だ。青柳氏はそうした懸念を払拭(ふっしょく)できるソフトウェアとしてPure Storageの「Portworx」を挙げる。PortworxはKubernetesでSoftware Defined Storage(SDS)を実現するソフトウェアだ。
「PortworxはKubernetes環境のストレージに必要な機能をソフトウェアベースで実現します。AI基盤をコンテナ化するならば、ストレージもPortworxによってSDS化した方がシンプルな運用につながります。Portworxはサーバ内蔵ストレージやPure Storage以外のベンダー製品でも問題なく動作しますが、高速性を求めるならば、物理性能のボトルネックをなくせるPure StorageのFlashBladeやFlash Arrayが有効です」(青柳氏)
バックアップやリストアを考慮する必要がなくなることもメリットだが、「データの可搬性」が上がる点も見逃せないポイントだ。
「特にハイブリッドクラウドが必要な企業にとって、データの可搬性を高く維持することは重要です。Kubernetesの『Container Storage Interface』(CSI)ドライバを使ってストレージをプロビジョニングすることもできますが、コンテナの可搬性を考えたときにデータが“足かせ”になりかねません。この問題を解決できるのがPortworxです」(青柳氏)
AI開発においても「DevOps」の重要度は変わらない
NVIDIA AI EnterpriseによってAI基盤を汎用化できれば、さまざまな業態、業種でAI活用を進めることが可能だ。ただ、AI基盤の選択肢が増えることは企業にとって喜ばしいことだが、自社に合ったものを選ぶのが大変ということでもある。
SB C&Sは、企業が最適なAI基盤を導入できるようにそれぞれの課題や要件に合わせた構成を提案している。SB C&Sの河上珠枝氏(ICT事業本部 ICT事業戦略・技術本部 技術統括部 テクニカルマーケティングセンター ビジネス開発課)は次のように話す。
「SB C&SではディストリビュータとしてNVIDIA製品やPure Storage製品の他、NVIDIA AI Enterpriseと組み合わせて利用する『OpenShift』や『VMware Tanzu』も扱っています。そのため、NVIDIA AI Enterprise導入時の顧客のニーズに合わせた提案が可能です」
「DevOps」はシステム開発、運用の重要なテーマとして長く取り上げられているが、AI開発においてもその重要度は変わらない。河上氏は「開発(Dev)と運用(Ops)が連携し、開発者がAI開発に集中できる仕組みづくりが必要だ」と指摘している。
「企業が『デジタルトランスフォーメーション』(DX)に取り組む上で、AIはもはや不可欠です。しかし、開発者が基盤の検討や立ち上げに時間を取られていては開発が進みません。NVIDIA AI Enterpriseを導入すれば、通常のIT基盤と同様にAI基盤もIT部門に運用を任せることができます。そこで必要となる製品を適材適所で紹介、提案できることがSB C&Sの強みです」(河上氏)
企業のAI活用を多方面から支援するSB C&S
AI活用が重要といっても、自社サービスにつなげられなければ意味がない。「with AI」の姿勢で自社競争力を高めるには、全社で活用する体制が必要であり、その基盤としてNVIDIA AI Enterpriseは有効な選択肢となる。ストレージについては他社に先駆けてAI基盤に特化したソリューションを提供してきたPure Storageがパートナーとなり、NVIDIA AI Enterpriseを活用するに当たってはPortworxがある。
これらの製品を幅広く取り扱い、先陣を切って日本市場で展開するのがSB C&Sだ。メーカー同士をつなぎ、新たな訴求ポイントを見つけ出すとともにSIerやエンドユーザーの声を聞き、新たな価値を提供できるのはディストリビュータだからこそだ。また、同社はDevOpsの啓蒙(けいもう)活動を進めており、人材育成にも注力している。
「AIを自社サービスにつなぐための人材が不足しているので、人材育成はこれからも重要になるでしょう。NVIDIAとしてAIを普及させ、活用のハードルを下げるためにはパートナーシップが生命線です。習熟した技術を活用しながら、AIを実現するアプローチを目指すには、Pure StorageやSB C&Sといったパートナーと連携した取り組みが重要だと考えています」(川井氏)
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