「.INTERNAL」を私的用途のトップレベルドメインに ICANNが暫定的に決定、その理由とは?:パブリックコメントを募集開始
ICANNは、「.INTERNAL」を私的利用や内部ネットワークのトップレベルドメインに予約すると暫定的に決定し、パブリックコメントの募集を開始した。
ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)は2024年1月24日(米国時間)、「.INTERNAL」を私的利用および内部ネットワークアプリケーション用のトップレベルドメイン(TLD)として予約すると暫定的に決定した。ICANN理事会によるレビューと承認に先立ち、この選択が指定された手順に準拠しているか、文字列が不適切ではないかなどの見解を求めるパブリックコメントの募集も開始した。
「.INTERNAL」暫定決定の背景
2020年9月、Security and Stability Advisory Committee(SSAC:セキュリティと安定性に関する諮問委員会)は、SAC113「私的使用のTLDに関するSSAC勧告」を発表し、ICANN理事会に対し、「DNS(Domain Name System)のトップレベルに、私的使用のためのドメイン文字列が特定、予約されていること」「予約された文字列が決して委譲されてはならないこと」を確認するよう勧告した。
勧告の理由は、企業内や家庭内など閉じられたネットワークで、プライベートネットワーク事業者が独自のドメイン命名スキームを使用したいと望む場合があるためだ。IANAは、こうした用途のため、プライベートIPアドレスのブロックを割り振っているが、DNSには同様な規定がない。このため、慣行的に既存TLDの非公式な使用が行われる場合がある。これが、ルートゾーンやその他に指定された目的と衝突する可能性を生んでいる。
「.INTERNAL」を選定した理由
ICANNは、SSACの勧告に基づき、以下の4条件で35の具体的な文字列候補を選出した。
- 有効なDNSラベルであること
- ルートゾーンですでに存在していないこと
- 現存する他のTLDと紛らわしいものではないこと
- 比較的短く、覚えやすく、意味のあるものであること
候補となる文字列は全て、有効なDNSラベルであり、現在のルートゾーンに存在しないと評価された。各文字列について、類似の可能性、長さ、記憶に残りやすく意味のある文字列であるかどうかに基づいた分析と6つの国連言語(アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語)に基づいた定性的な評価が行われた。
その結果、多くの候補文字列は、意味がないため不適当と判断された。ICANNは、文字列が意味のあるものであるという要件を、特別な専門知識がなくてもその文字列の名前から予約の目的を読み取れるようにするためと解釈している。文字列として「DOMAIN」は意味があっても、その目的が私的用途であることは伝わらない。
今回の評価で評価基準を大まかに満たす候補は「INTERNAL」と「PRIVATE」の2つしかなかったという。どちらの文字列も、小文字、大文字小文字の混在、大文字小文字の適用において、視覚的に混同する可能性は確認されなかった。
「.INTERNAL」は、国際機関に指定されている「INT」と縮約される可能性があると指摘されたが、混乱を招くほどのものではないと判断された。一方で「.PRIVATE」は、「プライバシー」という意図しない印象を与える可能性があると指摘され、評価された言語の全域にわたって、意味が矛盾する可能性がより高いと考えられた。従って「.INTERNAL」が、私的用途のTLDとして選出された。
2022年9月、ICANN理事会は決議2022.09.22.08を可決し、ICANNに対し、初期手続きの作成、パブリックコメントの実施、手続き結果の報告を指示した。パブリックコメントが募集され、ICANN理事会はその後、決議2023.09.10.09でICANNに対し、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)が開発した評価基準を用いてSAC113の候補文字列を評価するよう指示した。この評価の後、DNSのトップレベルに予約される候補文字列として「.INTERNAL」が暫定決定された。
今後の流れ
前述の決議に従って、ICANNが提案した文字列がSAC113の第4.1項に定義された基準を満たしているかどうかパブリックコメントを募集する。ICANNは、パブリックコメントに寄せられた全てのコメントを検討する。場合によっては特定された候補文字列に関する評価を更新する可能性がある。
「.INTERNAL」が最終的に決定されると、その文字列はIANAとICANNおよびより広範な技術文献に記録され、私的用途や内部ネットワーク上のアプリケーションで正式に使用できるようになる。
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