GitとGitHub、「ソフトウェアとオンラインサービス」以外の違いは?:競合する製品ではなく、相互に協力し、補完し合う
TechTargetは、「GitとGitHubの違い」に関する記事を公開した。ソフトウェアとオンラインサービスという違いはあるものの、GitとGitHubは競合製品ではない。
TechTargetは2024年2月7日(米国時間)、「GitとGitHubの違い」に関する記事を公開した。
「Git」と「GitHub」の主な違いは提供形態にある。Gitは開発者が自分のPCにインストールする無料のオープンソースバージョン管理ツールで、GitHubはクラウドでGitを実行するために構築された従量課金制のオンラインサービスだ。
GitとGitHubは競合する製品ではなく、相互に協力し、補完し合う関係となっている。
Gitとは?
Gitは「シンプルで使いやすい分散バージョン管理ツール」と自称している。
開発者はGitを使って、さまざまな時点でのコードのスナップショットを取得でき、ソフトウェア開発プロセスをマッピングする「バージョンの履歴」を作成可能だ(Gitがバージョン管理ツールと呼ばれるのはそのためだ)。開発者は、これらのスナップショットやコミットされたコードを、世界中の開発者と共有できる。
Gitの発案者はリーナス・トーバルズ氏。The Linux Foundationが管理しており、その成功は、過去20年間にわたってLinuxカーネルに貢献してきた何千人もの人々と何百もの組織によって証明されている。
Gitの欠点
Gitを理解し、愛用する開発者は多いが、欠点もある。GitHubをはじめ、「GitLab」「Bitbucket」などのSaaS(Software as a Service)ベンダーは、有料サービスを通じてGitの欠点に対処するために生まれた。
例えば、Gitは共同開発を支援する仕組みを提供するが、多くのユーザーはGitの分散的な性質を難しいと感じている。ほとんどの組織において開発者は、簡単に接続できる単一の「中央共有リポジトリ」を持つことを好むからだ。そして、それこそGitHubなどが提供するものだ。GitHubは、クラウドに1つの共有リポジトリを作成し、そのリポジトリがチーム全員にとって信頼できる情報源になる。
GitHubの利点
GitHubは、Gitを単にインストールするだけでは得られないさまざまな追加機能を提供している。例えば、Gitにはユーザー管理やユーザー認証の仕組みは組み込まれていない。そのため、仮にリモートユーザーがローカルのGitインストールにアクセスできる場合、リポジトリとコミット履歴を完全に制御できる。コミットをつぶしたり、ブランチを削除したり、バージョン管理システムを完全に破損したりできてしまうことになる。
それとは対照的に、GitHubは2要素認証とトークンベースの承認サービスを提供し、ユーザーがGitリポジトリに対して実行できる操作を管理している。
Gitの機能に含まれていない“承認”と“認証”は、ほとんどの組織で不可欠なものだ。そういった「組織が求めているもの」とGitが提供する機能の間にギャップがある場合、GitHubやGitLabなどのベンダーがそのギャップを埋めてくれるだろう。
しかし、GitHubを「クラウドベースのGitホスティングサービスで、幾つかの追加機能を提供するだけ」と説明してしまうと、その真の価値を過小評価していることになる。
GitHubとGitの違い
GitHubは、開発者、ソフトウェアチーム、組織の生産性を向上させることを約束する、Gitツールを中心としたDevOpsツールのエコシステムを構築している。GitHubがGitホスティングサービス以外に提供するツールには以下のものがある。
- Gitを使いやすくするWebベースのインタフェース
- ユーザーがCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインを作成できるようにする「GitHub Actions」
- 無料でWebサイトをホスティングできる「GitHub Pages」
- セキュリティを強化する「Branch protection rules」(ブランチ保護ルール)
- コードのマージとリベースを支援するプルリクエストのワークフロー
- 既知の脆弱(ぜいじゃく)性を特定するための「Code scanning」(コードスキャン)
- プッシュ、プル、フェッチの操作を簡素化する「GitHub Desktop」
- ソフトウェアチームを管理するツール
- AI(人工知能)ベースのプログラミング支援ツール「GitHub Copilot」
- ユーザーが他の開発者をフォローできるソーシャルメディア機能
GitHubは、ソフトウェア開発関連ツールのスイートを絶えず拡張している。一方で、Gitツールは驚くべき安定性を実現しており、APU(Application Processing Unit)のわずかな調整を除いてほどんど変更されていない。
基本的なGitコマンド
10年ほど前からGitを使っていた開発者であれば、現在も以下のコマンドを利用しているだろう。
- git init(リポジトリを作成する)
- git clone(リモートリポジトリをコピーする)
- git add(ファイルをコミット対象にする)
- git commit(コードをコミットする)
- git merge(ブランチを結合する)
- git rebase(ブランチを整理し、コミットの履歴を簡素化する)
- git fetch、git pull(リポジトリを更新する)
- git push(リモートリポジトリにコードをコミットし、他のユーザーと共有できるようにする)
- git squash、git clean(コミットログや不要なファイルを削除する)
近年のGitの変更としては「git switch」と「git restore」コマンドの追加があった。これは新しい機能の追加ではなく、「git checkout」コマンドの機能を分割したもの。Gitコミュニティーは以前から「git checkoutは一度の処理が多過ぎる」と考えており、それに対応した形だ。
GitとGitHubの競合
製品やツールの違いをはっきりさせたいのであれば、それらの競合製品、競合他社に注目するといいだろう。
Gitの競合は以下のような製品だ。
- Subversion(SVN)
- Perforce Helix Core
- Mercurial
- PVCS Version Manager
- IBM Rational ClearCase
GitHubの競合は以下だ。
- GitLab
- Bitbucket Cloud
- AWS CodeCommit
- Azure Repos
- SourceForge
- RhodeCode
Gitはバージョン管理機能を持つ個々のツールと競合しており、GitHubはGit関連のDevOpsツール群を提供する他のSaaSベンダーと競合しているといえる。
GitとGitHubのどちらを使うべきか?
結論からいうと、GitとGitHubはそれぞれを補完する技術のため、どちらか一方を選択する必要はない。
大規模なプロジェクトにおいて分散バージョン管理を確実に実行するためにはGitが有効だ。Linuxカーネルの保守でGitが利用されていることが、それを証明している。GitHub、GitLab、BitbucketなどのオンラインGitホスティングサービスに魅力を感じるのであれば、そちらを利用してローカルGitの使用を補完するのが合理的だ。
GitHubには、小規模チーム向けの無料ホスティングから、広範なCI/CDサポートとAI技術によって補完された開発サービスを持つエンタープライズ向けのパッケージまで、さまざまな価格帯がある。GitHubはMicrosoftが所有している。同社はOpenAI、つまり「ChatGPT」に多額に投資している。ゆくゆくはGitHubとMicrosoftのAzureクラウドを通じて提供されるDevOpsツールチェーンに、AI技術が統合されるだろう。
GitとGitHubの違いは何か。Gitは多くの実績と高い信頼性を持つ分散バージョン管理ツール。GitHubは、オープンソースのGitツールを中心に構築された、実績のある、信頼性の高いDevOpsおよび“GitOps”のツール群だ。GitとGitHubを一緒に使用することで、開発者は両方の長所を享受できる。
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