検索
連載

「Google検索を脅かす」Perplexity、他の生成AIチャットbotとどう違うのかを聞いたPerplexity 創業者CEOインタビュー

AI関連で大きな注目を集め、著名人からの投資を次々に獲得しているPerplexity AI。「Google検索を駆逐する」と表現されることもあるが、何を目指したどんなサービスなのか。来日した創業者CEOに、いろいろと聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 Google検索を脅かす存在として急速に注目を集めるPerplexityが、日本に“本格進出”した。同社のサービス「Perplexity」はAI(人工知能)検索でもあり、AIチャットbotとも表現できる。今回は、携帯電話会社のソフトバンクとレベニューシェアモデルでの協業を発表し、人々の生活に寄り添うAIアシスタントとしての浸透を図るとした。

 来日したPerplexityの創業者でCEO(最高経営責任者)のアラヴィンド・スリ二ヴァス(Aravind Srinivas)氏に、会社として何を成し遂げたいのか、Google検索をどう意識しているかなどについて聞いた。

まず、Perplexityが何を目指しているか、ビジョンあるいはミッションについて教えて下さい。


Perplexity CEOのアラヴィンド・スリ二ヴァス氏

 私たちのビジョンは、全人類の好奇心に真の意味で応える企業になることです。

 誰でも好奇心を持っています。でも、誰にどういう質問をしたらいいのか見当がつかないことがよくあります。例えば、私は初めてソフトバンクと仕事をすることになりました。そのため、ソフトバンクがどうしてこれほど大きな会社になったのか、孫正義さんのようなリーダーから、私がPerplextyのCEOとして学べることはないのかなど、いろいろなことを知りたくなります。

 こういった、自分の生活に関わるような質問は尽きることがありません。でもこれまで、Web上に存在する膨大な知識を自分が求めるものに絞って取り込むことは、うまくできなかったのです。誰もが自分の好奇心の赴くままにどんどん質問を深掘りしていって、日常の判断をより良いものにできる、Perplexityではそういう世界を作ることを目標にしています。

既に生成AIチャットbotが幾つも存在していますし、どんな質問にも答えてくれます。根本的な違いはどこにありますか?

 Wall Street Journalが行ったPerplexity、「ChatGPT」「Microsoft Copilot」「Gemini」「Claude」の比較では、Perplexityが1位でした。ChatGPTが2位、Geminiが3位です。私たちはPerplexityが最も進んだチャットbotだと考えています。

 私たちのチャットbotが他と比べて優れている点は、まず特定のAIモデルに縛られていないことです。例えば、ChatGPTはGPTシリーズ、GeminiはGeminiモデルに特化していて、Claudeなど、他のさまざまなモデルを利用することができません。

 そもそも、他のチャットbotとはやり方が違います。「生成AIモデルに聞く」のではありません。オンライン上のリアルタイムで正確な情報をベースとし、情報源を必ず示してユーザーの求める回答を提供しています。

 もっとハイレベルの説明をすると、こうなります。

 生成AIチャットbotには2つの設計方法があります。一つは創造的なユースケースに重点を置く方法で、エッセイや詩の執筆、歌の作詞などをAIが提案します。もう一つは、オンライン上で検証され、他の人間によって生成された正確な情報に基づいて正確に回答するようなユースケースです。

 私たちは後者に焦点を当てています。Geminiは、創造的なユースケースと事実に基づくユースケースの両方に取り組んでいますが、そのせいで、正確さが求められるユースケースで誤った回答を提供することもあります。一方、私たちは正確な回答に特化しているため、この点で優れた結果を出すことができます。

Perplexityはどういう仕組みで動いている?

一番聞きたい質問はそこです。Perplexityでは他社のLLM(大規模言語モデル)を使っていますよね? 有料版の「Perplexity Pro」ではGPT-4oやGPT-4 Turbo、Claude 3などからユーザーが選べるようにしています。Perplexityの機能は、他社のLLMにどれくらい依存しているのですか?

 他社のLLMは、答えの要約に使っているだけです。個々のクエリを受け付けてから、正確な答えを最適な形で出すまでには、多数のステップから成る作業を行っています。ここにPerplexityの決定的な違いがあります。

 Perplexityでは、質問を受け付けたらこれを分割して、多数の異なる表現に再構成します。そうしないと、質問の内容を深く理解し、関連するページを取得するのが難しいからです。オープンソースのSLM(小規模言語モデル)を独自にトレーニングした複数のモデルを使用し、これを行っています。次に、再構成したクエリそれぞれを自社の検索エンジンに入力し、それぞれ関連するWebページ群を取得します。その後にフィルタリングによって高品質なコンテンツを抜き出し、使用します。

 この結果を、RAG(検索拡張生成)でLLMに送り、要約させます。LLMからの返答を得たら、Perplexity側で最終的にレンダリングをします。天気予報なら天気予報に適した表現で、回答を表示します。

 Pro版であなたが例えばGPT-4oを選んだとしても、要約で使うだけです。他のステップでは全て、私たち自身のさまざまなモデルを使っています。こうした複雑な作業を効率よく、高速に、スケーラブルな形で実行するのも簡単ではありません。運用面でも大きな強みがあると思っています。

 生成AIモデルを選べるようにしているのは、モデルによる言い回しの違いを確かめ、好みのものを使いたいユーザーのためです。ほとんどのユーザーはLLMの違いに興味がないと思います。そのうち、生成AIモデルをユーザーが選択する必要はなくなります。クエリやタスクの内容に応じて、Perplexity側が最適なモデルを自動的に判断するようになるからです。

マネタイズ方法についての計画を教えてください。

 現時点では、コンシューマー向けの有料プランがあります。企業向けには、「Perplexity Enterprise Pro」というサービスがあります。これは、企業がPerplexityを活用したアプリケーションを作るためのAPIを提供するものです。

 今後、広告によるマネタイズも考えています。ただし、ビジネスを始めた時点で、広告を主な収益源とするような妥協はしないと決めていました。無料のユーザーを増やして大量の広告を浴びせかけるのではなく、有料ユーザーを増やすことに力を入れています。

 私たちの根本的な存在目的は、できるだけ多くの人が、毎日できるだけ多く質問できる環境を作っていくことです。これをサステナブルにやっていくためには、収益源を分散する必要があります。

しかし、広告をサービスに導入することはユーザーエクスペリエンスの劣化に直結するのでは?

 広告リンクを出したりすればそうなります。しかし、ユーザーエクスペリエンスを犠牲にすることなく、広告主がユーザーにリーチできるようなやり方はあります。いずれにしろ、現在は検討段階ですし、導入は急いでいません。他の収益源があるので、焦らずに済んでいます。

企業向けのサービスにはどのような狙いがあるのですか?

 現状では、あらゆる組織のあらゆる従業員が、仕事でGoogle検索を使っています。プログラマー、マーケティング担当者、人事採用担当者、投資家、財務アナリストなどが、常に多くの質問をGoogleに投げかけています。

 誰もがGoogle検索にキーワードを入力し、URLリストから情報を選んで読み、答えにたどり着こうとしています。その代わりにPerplexityを使えば、欲しい情報を手に入れる作業が大幅に効率化できます。

 ただし、PerplexityはAIネイティブのサービスであるため、Googleとは異なり、セキュリティ要件が高いです。人々はプロンプトとして入力したデータが漏えいすることを望んでいません。この要件に応えるため、「Perplexity Enterprise Pro」を出しました。

 シングルサインオンやコンプライアンス、セキュリティ、ユーザー管理など、Perplexityを仕事で使用するために必要な機能を備えています。入力されたクエリやデータについては、7日間経つと自動的に消去されるようになっています。

 従業員や雇用主が安心して使え、仕事における全てのワークフローに生かせるようになります。既に1000以上の組織が利用しています。

Google検索をディスラプトする?

将来どんな状況になったら、Perplexityのミッションを達成できたと判断しますか?

 世界中で数十億人が私たちのサービスを使用するようになったら、自分たちのミッションが一部は達成できたと感じるだろうと思います。一方で私たちは、永遠に達成されることのないミッションを選んだともいえます。この会社や製品が時代を超えて存在し続けて欲しいと考えています。


スリ二ヴァス氏(左)とPerplexity最高ビジネス責任者のドミトリ・シェヴェレンコ氏(右)

 常により良い回答、より速い回答、より安価な回答、そしてより読みやすい回答を提供するために進化を続ける必要があります。新しい情報がどんどん生み出され、オンラインの情報を整理したり事実を確認したりする方法、信頼できる情報源も時間とともに変化します。そもそも、情報を作成する方法が時間とともに変わっていきます。Perplexityのようなサービスの利用方法やデバイス、人々がコンピューターとやり取りする方法も変化し続けます。常に革新していかなければ、他のスタートアップに打ち負かされる可能性があります。

 「知識を提供し、全人類の好奇心を満たす」という私たちのミッションは、時代を超えて変わらないものです。言い替えれば、私たちは時の試練に耐えるミッションを選んだと思っています。

その過程で、Google検索をディスラプトすることを考えているんですか?

 今後も、伝統的なナビゲーション検索を使用してWebサイトに移動したり、特定のリンクにアクセスして情報を入力したりする人々は存在し続けると思います。Perplexityは、こうした用途には必ずしも最適ではありません。従って、Googleが完全に使われなくなるとは思えません。

 しかし、Google検索とPerplexityのようなサービスの使い方を明確に区別できる世界が存在すると考えています。

 これまで、Webサイトの閲覧は独立した行為でした。しかし、最近では情報の深堀りを含めたリサーチのフローを1つのツールで完結し、意思決定につなげたいというニーズが高まっています。従来型のWebナビゲーションはGoogle検索で行われ続けると思いますし、これに全く異議はありません。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

[an error occurred while processing this directive]
ページトップに戻る