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Cloud SpannerでグラフDB機能「Spanner Graph」、ベクトル/全文検索を合わせて発表、日本で完結する構成も可能に

Google Cloudは各種オンラインサービスなどで使われているCloud Spannerで、グラフデータベース機能、ベクトル/全文検索対応などを一挙に発表した。日本国内に完全に閉じた構成もできるようになった。

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 Google Cloudは2024年7月31日(米国時間)、日本における年次カンファレンス「Google Cloud Next Tokyo 2024」の開催に合わせ、データ関連の発表をグローバルで行った。

 今回、特にスポットライトが当てられたのは、ゲーム、オンラインストア、金融などさまざまなサービスに使われている分散データベースの「Google Cloud Spanner」(以下、Cloud Spanner)。グラフ、ベクトル、全文検索対応などを一挙に発表した。マルチモデルで多様な用途に使えるデータベースに進化させたという。

 「ユーザー企業は、Cloud Spannerのスケーラビリティと高可用性を従来通り生かしながら、インテリジェントなAIアプリケーションをサービスに組み込む必要がある」(Google Cloudデータベース担当ゼネラルマネジャー兼バイス プレジデント、アンディ・ガットマンズ氏)

 今回発表の新機能は、こうしたニーズに応えるものだという。

Spanner Graphとは何か

 ガットマンズ氏は、特に「Spanner Graph」がゲームチェンジングだと強調している。この新機能は、オンラインサービスにおけるレコメンデーション、ナレッジグラフを使った分析、不正検出、運行ルート計画、顧客情報管理、データカタログなどに活用できる。

 一方、社内データを使った生成AIアプリケーション構築では、一般的にベクトル検索(場合によってはキーワード検索を併用)によるRAG(検索拡張生成)が行われるが、これだけではうまくいかないケースが多いとされる。そこでグラフによるRAGが注目され始めている。Spanner Graphは、こうした取り組みへの活用も想定している。

 Spanner GraphはCloud Spannerでグラフデータベースが構築できる機能。マルチモーダルで、データ間の関係性を管理できる。2024年4月にISO標準となったGraph Query Language(GQL)を使い、パターンマッチングやフィルタリングを実行できる。

例えばオンラインストアでは、ユーザーがカートに入れた商品と一緒によく買われている商品のレコメンドを、下のようにシンプルな記述で行える。

 Spanner Graphでは、Cloud Spannerという単一のデータベースでテーブルとグラフの双方に対応できる。グラフ対応のために、データを移動する必要はない。また、テーブルとグラフはマッピングできる。開発者はやりたいことに合わせて、SQLとGQLを使い分けられるという。

ベクトル検索と全文検索にも対応

 Cloud Spannerでは、ベクトル検索と全文検索への対応も発表された。

 ベクトル検索は、「Google AlloyDB」への実装を2023年末に発表済み。「同じ機能を、今回はよりスケーラブルなデータベースに搭載した」とガットマンズ氏は説明した。全文検索機能は、Gmailで使われているものと同一だという。

 Spanner Graphでは、これらを連携して利用できる。例えば、ベクトル検索を利用してグラフのノードやエッジをセマンテックに発見したり、全文検索によって特定のキーワードを含むノード/エッジを抽出したりすることができる。その上で、GQLを使ってグラフデータを活用するなどができる、という。

Cloud Spannerの「デュアルリージョン構成」は従来と何が違う?

 Cloud Spannerで注目されるもう一つの新機能は「デュアルリージョン構成」。一般提供を開始したという。

 「日本、ドイツ、オーストラリアなどのユーザー組織にとって大きなニュースになる。データレジデンシー要件を満たしながら、99.999%の可用性を実現できるからだ」(ガットマン氏)

 だが、「デュアルリージョン構成」といっても、Cloud Spannerを東京と大阪の2リージョン構成で動かし、可用性を高めている日本企業は既に多い。現状と何が違うのか。

 Google Cloudの答えはこうだ。

 これまで99.999%の可用性を確保するには、最低3つのリージョンでCloud Spannerを構成する必要があった。2つのリージョンで最小の可用性構成を組みたいとしても、第3のリージョンで「ウィットネスレプリカ」を動かさなければならない。ウィットネスはデータの読み書きは行わないが、書き込みコミットの投票に参加するレプリカだ。日本にはリージョンが2つしかないため、日本企業はソウルなどの他国リージョンにウィットネスを構成している。

今回の発表では、このウィットネスが不要になった。これにより、完全に日本に閉じた構成が実現したという。

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