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生成AIは“使う”から“作る”へ 自前構築を選ぶべき理由と「基本の型」とはサクッと生成AI業務活用ガイド(2)(1/2 ページ)

生成AIをサクっと業務活用したい人のための本連載。生成AIチャットbotの課題やリスクを超えるための「自前で構築する」という選択肢について解説します。

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 生成AIサービスは、私たちの働き方や情報収集の方法に革命をもたらしました。「ChatGPT」「Claude」「Gemini」といった強力なAIチャットbotが次々と登場し、多くのユーザーがその恩恵を受けています。しかし業務で活用する場合、これらの既存サービスを“利用する”だけでは見えてこない課題やリスクが存在します。本記事では、なぜ「自前で構築する」という選択肢が重要なのか、その理由と具体的なアプローチについて解説します。

既存生成AIサービスの限界とリスク:なぜ自前構築が必要なのか?

 便利な生成AIサービスですが、利用に当たっては幾つかのデメリットや潜在的なリスクを認識しておく必要があります。

製作者の意図とバイアス

 大規模言語モデル(LLM)は、学習データや開発者によって特定のバイアスを持つ可能性があります。例えば、特定の思想や価値観が反映されたり、意図的に特定の情報を強調したり、あるいは隠したりするケースが考えられます。過去には、あるモデルで特定の立場に偏った学習の疑いが指摘されたこともあります。自社のユースケースにおいて、このようなバイアスが問題となる場合、汎用(はんよう)モデルの利用はリスクとなり得ます。

ハルシネーション(幻覚)

 生成AIが事実に基づかない、もっともらしい嘘の情報を生成してしまう現象は依然として大きな課題です。特に、専門性の高い領域や、正確性が厳しく求められる業務においては、ハルシネーションによる誤情報は致命的な結果を招く可能性があります。

合法性と倫理性

 学習データに含まれる著作権物の扱いや、生成されたコンテンツの権利関係など、法的なグレーゾーンはいまだに多く存在します。そのため、著作権法に違反しない可能性が高い、生成AIが作成した画像を利用した場合でも、多くの批判を浴びる事例が存在しています。このように企業が利用する場合は、違法でなくても社会的信用を落とすリスクがあります。

機密情報の取り扱い

 生成AIチャットbotサービスでは、入力された情報がモデルの学習データとして利用され、他の利用者の回答に反映される可能性があります。多くのサービスでは、学習されないようにする設定も用意されていますが、あくまでもユーザーの設定に依存します。このため従業員が誤った設定をした場合、機密情報が漏えいするリスクがあります。

性能とカスタマイズの限界

 汎用的なLLMは幅広いタスクに対応できますが、特定の業界知識や社内用語、独自の業務プロセスへの深い理解は期待できません。例えば、特定の製品マニュアルや社内規定に基づく正確な回答を得たい場合、汎用モデルだけでは不十分です。また、Googleの「NotebookLM」のように、参照できるソース数に制限がある(無料版では1ノートブック当たり50ソース、有料版でも最大300ソース)など、サービスによっては機能的な制約が存在します。RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)のような技術で補う試みもありますが、既存サービス上でのRAG実装には限界のあることが多いです。

ナレッジの共有と組織利用

 個人での利用には便利なサービスでも、組織全体でのナレッジ共有や共同作業には向いていない場合があります。NotebookLMのように、共同で知識ベースを構築・活用する機能があるサービスもありますが、登録可能なソースの上限には限界があり、テーマをまたいだソースの共有も思うようにできません。そのため、組織独自のナレッジを効率的に活用・共有するには、専用の仕組みが必要となるケースがあります。

その他のデメリットやリスク

 継続的な利用コスト、外部サービスへの技術的・ビジネス的依存、ブラックボックス性(モデル内部の挙動が不透明)なども考慮すべき点です。

 これらのリスクや限界点を踏まえると、特に機密性の高い情報を取り扱う場合や、特定の業務ドメインに特化した高性能なAIが求められる場合、あるいは組織内でのナレッジ活用を推進したい場合には、生成AIサービスを自前で構築するという選択肢が現実味を帯びてきます。

 そこで今回は、自前で構築する基本の型2つをお届けします。これらを組み合わせることで、上記の課題を解消するシステムを作りましょう。

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