クラウドとインフラの主な優先事項は「AIの統合」 SlashDataが欧米企業クラウド利用動向調査結果を発表:クラウドでAIワークロードをサポートするための取り組みも進展
調査会社のSlashDataは、欧米企業におけるクラウドサービスの利用動向調査結果をまとめたレポート「2025 Cloud Landscape in Europe and the US」を公開した。
調査会社のSlashDataは2025年9月26日(米国時間)に公式ブログで、欧米企業におけるクラウドサービスの利用動向調査結果をまとめたレポート「2025 Cloud Landscape in Europe and the US」を公開した。このレポートは、SlashDataがフィンランドのクラウドサービスベンダーであるUpCloudと協力して実施した、2025年5月のオンライン調査で収集したデータに基づいている。
調査では、クラウドベンダーの選定基準やAI(人工知能)に関するクラウドベンダーの取組状況などについて聞いている。その中で、SlashDataは「今後1〜2年におけるクラウドサービスとインフラに関する自社の主な優先事項」と「クラウドインフラ上で自社がAIワークロードをどのようにサポートしているか(またはサポートの準備をしているか)」という結果について解説している。
クラウドサービスとインフラに関する主な優先事項
今後1〜2年におけるクラウドサービスとインフラに関する自社の優先事項について聞いたところ、最も回答が多かったのは、「クラウドインフラおよびプロセスへのAIの統合」(33%)だった。
この傾向は特に米国で顕著で、欧州でのこの選択肢の回答率が28%だったのに対し、米国では40%に達した。また、他の役職と比べ、CEO(最高経営責任者)、CTO(最高技術責任者)、技術リードなどの経営幹部はAI統合を主な優先事項に挙げる傾向が高かった。SlashDataによると、これは経営層がAIをトランスフォーメーション(変革)、競争優位、運用効率のための戦略的手段と見なしていることを示しているという。
一方、AIの統合に次いで多かった回答は「スケーラビリティの強化」(32%)、「パフォーマンスの向上」(30%)となっており、SlashDataは「成長を柔軟にサポートし、一貫して高いパフォーマンスを提供できるインフラの必要性を浮き彫りにしている。こうしたインフラにより、企業は急速な変化の中で俊敏性と回復力を維持できるだろう」と分析している。
企業はAIワークロードをどのようにサポートしているか
企業がどのようにAIワークロードをサポートし、AIをクラウドインフラに統合しているかを理解するため、SlashDataはクラウドに関する意思決定者に、これらに関連する以下の7つの取り組みの実施状況を尋ねた。
- 開発者のクラウドベースAIツールとインフラのトレーニング実施
- クラウドベンダーが提供するAIプラットフォームおよびサービスの採用
- AIに特化したセキュリティおよびコンプライアンス対策の導入
- AIワークロードに最適なスケーラブルなインフラの確保
- AI処理効率を高めるための最新ハードウェアやアクセラレーターの利用
- クラウドとオンプレミスやエッジのハイブリッド環境整備
- AIモデルの運用と管理のための継続的な改善と最適化
その結果、企業の約半数以上(45〜56%)がこれらの取り組みを実施済み(または実施中)で、取り組みを実施しておらず、実施計画もない企業は、全体の11〜14%とごく少なかった。
なお、取り組みを実施済み(実施中)の割合が高かった上位3つは、「クラウドベースのAIツールおよびインフラに関する開発者トレーニング」(56%)、「クラウドプロバイダーが提供するAIプラットフォームやサービスの導入」(55%)、「AI固有のセキュリティおよびコンプライアンス対策の導入」(51%)だった。
その他の主な調査結果
これら以外の主な調査結果は以下の通り。
- 企業の大多数は、自社のある地域内に設置されたサーバにデータを保管している
- ハイブリッドクラウドは、従業員50人以上の企業にとって主流のアプローチだが、小規模な企業(従業員5〜50人)はパブリッククラウドに依存する傾向が強い
- 従業員1000人以上の企業の15%は、依然としてメインフレームに依存している。レガシーアプリケーションや大量処理の必要性が理由と見られる
- クラウドサービスプロバイダーを選択する際の重要な要因の上位3つは、セキュリティ、パフォーマンスおよびスケーラビリティ、データプライバシーおよびレジデンシー(所在地)
- 欧州のクラウドサービスベンダーを利用している(または利用しようと計画している)企業にとって、その主な理由はパフォーマンス(29%)、データプライバシーおよびレジデンシー(28%)、セキュリティ(28%)
- 無料のアドオンサービス、トライアルの仕組み、クレジットだけでは、クラウドに関する意思決定者を引きつけるには不十分
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