AWSユーザーで生成AIを使って社内情報活用 RAGの構築は難しくない:サクッと生成AI業務活用ガイド(4)(2/2 ページ)
「RAG」という技術を使い、多くの企業が社内情報の活用に取り組んでいます。一方で、「難しそう」と尻込みしている人も多いのではないでしょうか。今回は利用者の多いAWSで、コードを書くことなく簡単にRAGを構築する方法を紹介します。
ステップ3 テストと確認
データソース欄を見てみると、追加したS3バケットがデータソースとして「利用可能」な状態になっています。このままでは、まだRAGをテストできない状態なので、「同期」する必要があります。下図のようにチェックボックスにチェックを入れて、「同期」してあげましょう。
同期が完了すると、表示中ページの右上の「ナレッジベースをテスト」ボタンが押せるようになります。
しかし、このままでは「取得と応答生成」において、「取得のみ: データソース」しか利用できず、前回記事の Vertex AI Search のように良い感じの回答をしてくれません。ナレッジベースを活用した回答ができるよう、モデルのアクティベート(有効化)をします。
まずは、Amazon Bedrockの左側メニューに「Configure and Learn」というカテゴリがあるので、その配下にある「モデルアクセス」を選択し、ページを開きます。開いたページに「モデルアクセスを変更」というボタンがあるので選択します。
今回は「Claude Sonnet 4」を使います。一覧の中に「Anthropic」で分類されたセクションがあるので、その中から「Claude Sonnet 4」にチェックを入れて、「次へ」を選択し進みます。初回登録時は、企業情報や利用目的の入力が必要になります。利用目的は「技術検証のため」といった内容を入力して先に進みましょう。しばらくすると、モデルの利用が可能になります。
やっとテストの準備が完了しました! 「ナレッジベース」のページに遷り、「ナレッジベースをテスト」を選択します。
「設定と応答生成」欄のモデルボタンを選択し、先ほどモデルアクセスを有効にした「Claude Sonnet 4」を選択して「適用」を押下します。
あとはテスト欄で、実際にプロンプトを打ち込んで実行します(クリックでアニメーション表示)。
無事に、船員法から回答を生成できましたね。
※2025年9月現在、Amazon Bedrockには前回の記事で紹介したような、ウィジェットとしてRAGアプリケーションをサイトに手軽に公開する方法はありません。アプリケーションとして機能させるところまで紹介すると別の記事になってしまうので、今回は割愛しました。
Google Cloud Vertex AI SearchとAmazon Bedrock Knowledge Basesを比較して
AWSでも、Amazon Bedrockのようなマネージドサービスを活用することで、Google CloudのVertex AI Searchと同様にRAGを構築することができました。
さて、前回の記事も含めて読んでいただいた方々の中には、Google CloudとAWSのどちらを使うべきかについて気になる方もいるかと思います。月並みな回答ですが、既にAWSを使っているのであればAWSを、新しく始めるのであればGoogle Cloudを、というのが筆者のおススメになります。
誤解を恐れずに言えば、Google Cloud Vertex AI SearchもAmazon Bedrock Knowledge Basesも、RAGを構築するという目的の達成において大きな違いはありません。Geminiを使うかClaudeを使うかは一見大きな違いに見えますが、グラウンディング、つまり提供された資料に基づいて回答を生成する以上、LLMが自由に創造性を発揮する場面は限定的であり、同程度のモデル同士であれば、根本的な性能差は出にくいと考えられます。
実装方法やトラブルシューティングなどに関するインターネット上の知見へのアクセスのしやすさでは、AWSに軍配が上がります。社内にAWSエンジニアがいて、相談できる環境があるのであれば、さらにメリットが大きいでしょう。
一方の「Google Cloud Vertex AI」は前回の記事でも紹介した通り、HTMLタグを埋め込むだけで実装が不要であったりと、スピーディーな展開が可能です。「BigQuery」という非常に強力なデータウェアハウスへのアクセスのしやすさも見逃せません。また、Google Cloud は 「Google Workspace」との組み合わせもしやすいので、DX(デジタルトランスフォーメーション)に課題がある場合は非常に効果的です。Vertex AI Search からスモールスタートするのも良い選択肢ではないでしょうか。
まとめ
生成AIの専門家でなくとも、Google Cloud Vertex AI や Amazon Bedrock を活用することで、生成AIを「使う」から「育てる」へのシフトが進められるようになります。社内のナレッジ共有を加速させるのは、今からでも遅くありません。この記事が、そんな一歩を踏み出すきっかけになればと思います。
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