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アマラの法則(Amara’s Law)とは?AI・機械学習の用語辞典

「私たちは、技術の短期的な影響を過大評価し、長期的な影響を過小評価する」という言葉で知られる経験則。近年では生成AIの議論でもこの傾向が指摘されている。なお、アマラの法則における“過大評価”はハイプサイクルの「過度な期待のピーク」に、“過小評価”は「幻滅期」に重ねて語られることもある。

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用語解説

 アマラの法則Amara's Law)とは、米国の未来学者ロイ・アマラ(Roy Amara)氏が1970年代に述べたとされる「私たちは、技術の短期的な影響を過大評価し、長期的な影響を過小評価する」(We tend to overestimate the effect of a technology in the short run and underestimate the effect in the long run.)という言葉に由来する経験則である。新技術に向けた評価が「短期では過大」「長期では過小」に偏りやすい(=時間軸で評価が偏りやすい)傾向を説明する際に用いられ、Gartnerの「ハイプサイクル」や生成AIの議論でもしばしば引用される(図1)。

図1 アマラの法則とハイプサイクルの関係
図1 アマラの法則とハイプサイクルの関係
アマラの法則は「人が未来をどう見誤るか」という認知的傾向を示すもので、ハイプサイクルのように時系列で社会的評価を描いたモデルとは性質が異なる(後述)。この図は、英語圏で両者が並べて語られる例に基づき、便宜的に重ね合わせた概念イメージである。

 ハイプサイクル(Hype Cycle)とは、Gartnerが提唱した、新しい技術が登場してから「過度な期待」や「幻滅」を経て、最終的に社会へ定着するまでの過程を示す概念モデルである。このうち、「過度な期待のピーク」はアマラの法則における「短期では過大評価」を、また「幻滅期」は「長期では過小評価」を想起させるため、特に英語圏では両者を重ねて語られることがある。ただし、アマラの法則は“今、私たちが未来をどう誤って見ているか”を示し、ハイプサイクルは“その誤解が時間とともにどう修正されていくか”を描いている点で異なるため、厳密には同一の概念とはいえない(と筆者は考えている)。

 ハイプサイクルのような時系列変化はひとまず置いておき、アマラの法則が示す「短期的な過大評価」と「長期的な過小評価」は、インターネットの歴史にも見られる。ブームの時期には「全てがネットに置き換わる」といった過剰な期待が広がったが、すぐにそうはならなかった。しかし長い目で見れば、インターネットは社会基盤として静かに、そして確実に生活や経済の構造を変えていった。短期的には影響を大きく見積もり、長期的にはその影響を見くびる。この構図こそ、アマラの法則の典型例といえる。近年では、生成AIの議論においても同様の傾向が指摘されている。

 アマラの法則は、目の前の熱狂や失望に振り回されず、長い時間軸で変化を見通すことの大切さを教えてくれる。新しい技術の価値は、ブームが落ち着いた後にこそ静かに根を張り、社会を変えていく。AIの時代を理解する上でも、忘れてはならない視点である。

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