GPT-5.1シリーズを一斉公開 CodexにMini版も加わり、“メリハリ思考”で実用性を底上げ:Deep Insider Brief ― 技術の“今”にひと言コメント
OpenAIが「GPT-5.1」「GPT-5.1-Codex」「GPT-5.1-Codex-Mini」の3モデルを一斉発表。今回はド派手な刷新こそないが、日常タスクの高速化とコスト削減、複雑タスクの精度向上といった“実用性の底上げ”が大きい。記事後半では筆者のひと言コメントも添えて紹介する。
OpenAIは2025年11月12日(米国時間、以下同)、フラグシップモデル「GPT-5」のアップグレード版に当たる「GPT-5.1」を発表した。また、GPT-5.1をベースにしたコーディング(プログラミング)用モデル群として、「GPT-5.1-Codex」と、その小型・低コスト版である「GPT-5.1-Codex-Mini」もほぼ同時期(翌日の11月13日)に公開された。これら3つの新モデルは、GitHub CopilotやOpenAI Codex、CursorといったAI開発ツールで既に利用可能となっている。
GitHub Copilotで利用できるAIモデル一覧(Visual Studio CodeでAgentモード選択時)。
※Copilot Pro/Pro+/Business/Enterpriseなどの有償プランでは、「GPT-5.1」「GPT-5.1-Codex」「GPT-5.1-Codex-Mini」(いずれも公開プレビュー版)を選択して使用できる。Visual Studio CodeのGitHub Copilot拡張やGitHub Copilot CLIなどから利用可能。
今回のアップデートで最大のポイントは、9月に「GPT-5-Codex」に先行導入された適応的リーズニング(Adaptive Reasoning:タスクの難易度に応じて思考時間や思考ステップを自動調整する機能)が、ベースモデルであるGPT-5.1にも標準搭載された点である。これによりGPT-5.1は、タスクの複雑さを自ら判断し、日常的な単純タスクはGPT-5よりも大幅に高速かつ低コスト(低トークン消費)で処理し、逆に複雑で専門性の高いタスクはGPT-5より長く熟考して精度と信頼性を高めるという、メリハリのある動作が基本となった。
実は今回の発表より少し前の11月8日に、より軽量でコスト効率の高いモデルとして「GPT-5-Codex-Mini」が、OpenAI Developersの公式Xアカウント上で静かに発表されていた(そのため気付かなかった人も多いだろう)。ChatGPT Plusなどの有料プランを利用していれば、OpenAI Codex(OpenAIによるAI開発ツール)内で既に選択可能になっていたものの、正式な説明や技術文書は存在しなかった。今回のアップデートでは、その後継となる「GPT-5.1-Codex-Mini」が正式リリースとして発表され、名称も5.1世代に統一された。これに伴い、GitHub CopilotでもMiniが初めて利用可能となった。
――ここからは『Deep Insider Brief』恒例の“ひと言コメント”として、今回の発表から技術の“今”を少し深く見ていく。
Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。
9月のGPT-5-Codex登場をお伝えした記事では、「単純タスクは高速に、複雑タスクは長く熟考」とタイトルに書きました。その時、「これ(適応的リーズニング)って良い機能だけど、コーディングだけにしか向かないのかな? 一般用途でも有用そうなんだけど……」と思っていました。今回ふたを開けてみると、Codexは先行導入に過ぎず、一般向けのGPT-5.1にも標準搭載される形になりましたね。
これでChatGPTなどの普段利用でも使いやすくなるとよいのですが、実際には気になる点もあり、例えば「GPT-5.1に変わって文字の一部が中国語(?)になる」現象や、「一度説明した内容を次の応答で反映してくれない」といった挙動に遭遇しました。これはモデル側の調整による一時的なものか、それとも適応的リーズニング(特に即答重視のGPT-5.1 Instantモード)の影響なのか、現時点では判断がつきません。まだ数日しかたっていないので、結論を急ぐ必要はありませんが、気になるところです。
Instantモードについては、デフォルトで「温かみのある、より会話的な表現」になったとされています。今のところ大きな違いは感じていませんが、以前より自然な会話に近づいたような気もしています。
開発用途では、一般向けのGPT-5.1よりも、コーディングに最適化されたGPT-5.1-Codexを使う方がよいと思います(厳密な性能比較をしたわけではないので、その点はご容赦ください)。
ただし、「普段使いはもう少し安く済ませたい」という方は、「GPT-5.1-Codex-Mini」を試してみてください。プレミアムリクエスト乗数(premium request multiplier:単位はx。例えば1.0xは通常価格)」によると、5.1-Codexの約3分の1に当たる0.33xという大幅に安い価格設定になっています。私が試した限りでは、本当に速くて、実際の動作もおおむね問題ないと感じました。
なお、プレミアムリクエスト乗数の公式ページを参照すると分かるように、GitHub CopilotでGPT-5.1シリーズを利用する場合は、執筆時点(2025年11月15日)で無償プラン向けの提供がなく、有償プランが前提となる点には注意してください。
今回のアップデートには他にも多くの改善点がある。長くなるため、主要項目だけを以下に箇条書きでまとめておく。
GPT-5.1: その他の開発者向け特徴
- 拡張プロンプトキャッシュ: プロンプトキャッシュ(一時保存データ)の保持期間を従来の数分から最長24時間に延長。キャッシュされた入力トークンは通常料金の90%オフで課金されるため、長時間のチャットやコーディングセッション、RAG(独自データへの検索連携)などでコスト削減と高速化を両立できる。
- コーディング性能の強化: SWE-bench Verified(ソフトウエア修正ベンチマーク)で76.3%を記録し、GPT-5より長時間にわたり、リポジトリ(コード群の保存場所)全体を扱える。各スタートアップ企業の評価でも「不要なアクションが減り、マルチファイル編集やPR(プルリクエスト)レビューが安定した」といった声が紹介されている。
- API利用時の「思考なし(no reasoning)」モード: パラメーターreasoning_effort='none'を指定すると、思考(リーズニング)をほぼ行わないモードで動作し、遅延(レイテンシ)が最小になる。ツール呼び出しの並列実行や、コード生成/Web検索ツール連携に強い。
- 新しいResponses APIツール:
- apply_patch: JSONエスケープを気にせず、パッチ形式でコードベース全体を編集できる。モデルは差分(パッチ)だけを返し、実際の更新はIDEや自作ツールが担当する。そのため、エージェントによる段階的なコード書き換えが容易になる。
- shell: モデルがシェルコマンドを提案し、開発者の環境側で実行して結果をフィードバックできる。ローカル調査、テスト、スクリプト生成など、“実行して確かめる”ワークフローを構築しやすくなる。
- 価格と提供範囲: gpt-5.1(=Thinkingモード)とgpt-5.1-chat-latest(=Instantモード)は、APIの全ての有料ティア(帯)で利用可能で、料金とレートリミット(利用制限)はGPT-5と同じ。加えてgpt-5.1-codex/gpt-5.1-codex-miniもAPI提供が始まった。※執筆時点で無償ティアではGPT-5.1シリーズは利用不可。
ChatGPT(GPT-5.1): その他の一般ユーザー向け特徴
- 対話能力の向上: GPT-5では「会話が楽しめない」といった声が寄せられていたため、GPT-5.1では「温かみ」「自然さ」「共感性」など、人間らしい対話の要素が大幅に改善された。
- パーソナライズ機能の強化: 応答トーンを以下の中から選択でき、その変更が進行中の会話にも即時に反映されるようになった。
- デフォルト(バランスの取れたスタイルとトーン)
- プロフェッショナル(洗練されていて几帳面)
- フレンドリー(温かくてフレンドリー)
- 率直(率直でポジティブ)
- 個性的(お茶目で想像力豊か)
- 無駄がない(簡潔で分かりやすい)
- 探究心が強い(探究心が強く、好奇心旺盛)
- 皮肉っぽい(批判的で皮肉っぽい)
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