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「Raptor mini」って何? VS CodeのGitHub Copilotに表示される謎モデルDeep Insider Brief ― 技術の“今”にひと言コメント

VS Codeに突如現れた実験モデル「Raptor mini」。公式情報が極端に少なく謎が多い。実際のところ何ができ、どんな場面で使うべきなのか。限られた情報とコミュニティの声を手掛かりに、その性質と使いどころを考察する。

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 Visual Studio Code(以下、VS Code)でGitHub Copilotを使っている読者は、既に気付いているかもしれない。モデル選択メニューに、突如として「Raptor mini」という見慣れない名前が現れていることに。

 GitHubは2025年11月10日(米国時間)、同社のAIコーディング支援ツール「GitHub Copilot」において、実験モデル(公開プレビュー)として「Raptor mini」(ラプター・ミニ)のロールアウト(段階的な展開)を開始した。執筆時点(2025年11月20日時点)では、Raptor miniを利用できるのはVS Codeのみであり、Web版のGitHub CopilotやJetBrains系IDE(統合開発環境)などでは利用できない。

Visual Studio Codeのモデル選択画面(右)
Visual Studio Codeのモデル選択画面(右)

 Raptor miniは、GPT-5 miniと同様に、無償のGitHub Copilot Freeプランでも選択できる。利用可能なプランはProとPro+に加えてFreeであり、逆にBusinessやEnterpriseといった企業向けプランでは利用できない(執筆時点)。

 また、Raptor miniはVS Codeにおける全てのモード、具体的にはAgent(エージェント)/Plan(作業の計画)/Edit(編集)/Chat(質問)で利用できる。

 このモデルは、OpenAIのGPT-5 miniをMicrosoftがファインチューニング(微調整)したものであり、GitHubが管理するAzure OpenAIテナント上でホストされている。ただし、詳細なスペック(仕様)をまとめたモデルカードは執筆時点で「Coming soon(近日公開)」となっており、具体的な仕様は依然として不明である。

――ここからは『Deep Insider Brief』恒例の“ひと言コメント”として、この謎に包まれた「Raptor mini」がどのような立ち位置のモデルなのか、そしてソフトウェアエンジニアにとってどんなメリットがあるのかを掘り下げていく。


一色政彦

 Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。

 「Raptor(ラプター)」は英語で「猛禽類(鳥)」を指す言葉で、語源として「奪う者」という意味もあります。恐竜の「○○ラプトル」や戦闘機の名前を思い浮かべる人もいるかもしれません。ここでは恐らく、「小型で素早く、俊敏に動く」というイメージを込めて名付けられたのだと思います。

 とはいえ、正直なところ「何、このモデル……」という戸惑いを持つ方も多いはずです。公式発表ページにも情報がほとんどなく、私自身も最初は「何これ?」と感じてスルーしていました。実際、常用している人はあまり多くないのではないでしょうか。

 そこで、RedditやXなどの技術系コミュニティに寄せられている意見を参考にすると、「チャットで長い議論をしたり、複雑なタスクで深い思考(リーズニング)を求めたりするよりも、小さめの指示に対して素早く実行可能なコード提案を返すことに特化した軽量モデル」という評価が目立っていました。

 逆に言うと、Raptor miniは使いどころが限られるので、実務での「常用」には向かないのではないかと思います。ということで、モデル切り替えが面倒な筆者はさらにスルーを続けることにします……。「いやいや、めっちゃ使えるよ!」というご意見があれば、ぜひSNSコメントなどで教えてもらえるとうれしいです。


 RedditやXなどのコミュニティで語られている意見を参考に、Raptor miniの性質と強み/弱みを以下に箇条書きで短く整理しておく。挙動は今後変わる可能性もあるため、参考レベルとして読んでほしい。

Raptor miniの性質(モデルの傾向)

  • 応答が軽量で速い
  • 深い思考(リーズニング)が必要な処理は苦手
  • 長文の文脈処理は、大型モデルに比べて弱い
  • 大規模なコード構造の把握は不得意
  • 自然言語生成は、大型モデルほど得意ではない

向いている用途(モデルの性質から導かれる具体タスク)

  • スピード重視の小規模なコード修正
  • 既存コードの部分的なリファクタリング(コード整理)
  • テストコード作成などの軽い開発支援
  • 関数レベルの実装や修正など、スコープが小さいコード生成

向いていない用途

  • 大規模コードベース全体の理解や整合性の判断
  • 深い思考(リーズニング)を必要とする複雑なタスク
  • 長い文脈を扱うチャット
  • 大規模な設計やアーキテクチャ構築
  • 自然言語による長文生成
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