日本企業は「OSSには価値がある」と実感も、体制整備に課題:商用サポートへの高い依存も明らかに Linux Foundation調査
Linux Foundation Japanは日本企業におけるOSS活用動向の調査レポートを公開した。69%がビジネス価値向上を実感する一方、商用サポートへの高い依存など、日本独自の傾向も判明したという。
Linux Foundation Japanは2025年12月8日、日本企業におけるOSS(オープンソースソフトウェア)活用の現状をまとめた日本語版の調査レポート「日本のオープンソースの現状2025:戦略的なオープンソース活用によるビジネス価値の加速」を公開した。
調査は2025年5月に実施された。同レポートは、日本に本社を置く組織に勤務する141人の回答結果に基づいている。
オープンソース活用でビジネス価値向上を実感も、体制整備に課題
調査によると、過去1年間でオープンソースによりビジネス価値が向上したと回答した日本の組織は69%で、世界全体の54%を上回った。将来においてもオープンソースが自社に価値をもたらすと考える割合は74%に達しており、オープンソースがビジネスに与える価値認識の観点では、日本が世界をリードしている現状も明らかになった。
一方、ガバナンスの成熟度にはギャップがある。OSPO(オープンソースプログラムオフィス)を設置している日本の組織は41%、明確なオープンソース戦略を策定している組織は39%にとどまった。自社の方針を対外的に公表している組織は33%で、2024年調査からの伸びも見られず、体制整備への投資が不足している状況が浮き彫りとなった。
商用サポートへの高い依存も明らかに
日本企業のセキュリティ評価やサポート要件については、外部依存の傾向が強く見られた。コンポーネント選定時にコミュニティーの活動状況を確認している企業は26%で、世界全体の47%を大きく下回った。セキュリティフレームワークでは、セキュリティ評価基準のコモンクライテリア(ISO/IEC 15408)を利用する企業が52%(世界全体は13%)と特定の枠組みへの依存度が高かった。
重要な問題について12時間未満の応答をOSSサポートベンダーに求める日本の組織は89%に達し、世界平均の69%を上回った。LTS(長期サポート)を期待する割合は45%、迅速なセキュリティパッチ(修正プログラム)適用を期待する割合は35%だった。
また規制の厳しい産業分野では45%、機密データを扱うシステムでは43%が有償サポートを「不可欠」と回答していた。これらを踏まえ、Linux Foundation Japanは「オープンソースがコスト削減のための代替手段から、サービスレベル契約(SLA)が必要な基盤的なビジネスインフラへと進化している」と述べている。
AR/VRやAI分野で競争優位性を確保へ
日本の導入分野では、クラウド技術の導入率が33%(世界全体52%)と遅れが見られる一方、AR/VR(拡張現実/仮想現実)は39%、AI/ML(人工知能/機械学習)やクラウド関連技術は28%と、特定の新興分野で注目度が高かった。
オープンソースプロジェクトへ積極的に関与している組織では、73%が競争優位性の向上を実感しており、受動的な組織の56%を大きく上回った。貢献によるメリットとして、セキュリティの向上(78%)、イノベーションの促進(77%)、スタッフの知識向上(74%)などが挙げられている。
一方、IP(知的財産)に関する懸念(52%)や社内ポリシーの欠如(51%)、ROI(投資対効果)への確信不足(34%)がオープンソースへの貢献の障壁となっている。オープンソースの戦略的価値を認識している経営幹部は70%で、他の従業員の85%を下回っており、経営層との認識に差があることも課題として指摘されている。
Linux Foundation Japanは調査結果を踏まえ、「正式なガバナンスの確立と、受動的な利用から積極的なエコシステム参加への転換が、競争優位性を得るための鍵だ」と結論付けている。
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