AGIは2031年、ASIは2034年に来る? 『AI 2027』から延期された理由:Deep Insider Brief ― 技術の“今”にひと言コメント
「AI 2027」は、なぜ自ら予測を修正したのか。最新のAI Futures Modelは、AGIやASIの到来時期を後ろ倒しにした。本稿では、その変更点を整理し、この予測をどう受け止めるべきかを考察する。
かつて「2027年にAGI(汎用《はんよう》人工知能)が実現する」という大胆な予測で注目を集めたプロジェクト「AI Futures Project」。SFチックなシナリオ故に、当時は話半分に受け止めた人も多かっただろう。「AI 2027」として物議を醸したあの発表から約8カ月。
同プロジェクトが、2025年12月版として予測モデルをアップデートした。そこで示されたのは、野心的な『2027年説』を大幅に見直し、現実的な検証を踏まえた「新たなタイムライン」だった。
AGIおよびASIの最新予測タイムライン(公式デモサイトおよび発表資料を基に編集)
※本図(および以下の本文)で示した月単位の年月は、主にAI Futures Modelの公式デモサイト(後述の情報元を参照)上で表示される代表的な想定値に基づく。右側のグラフはブログ本文の記述に基づいたものであり、本図は2つの情報源を参照して構成している点に留意されたい。
今回の更新における最大のポイントは、これまで2027年とされていたAGI/ASI到来「Xデー」の想定時期が、より現実的なタイムラインへと見直された点だ。旧モデルから見ると、予測時期は約4年後ろ倒しされたことになる。
具体的には、ソフトウェア開発をほぼ自律的にこなす自動コード生成システム(AC)が実用レベルに達し、AGI的な能力が見え始める時期の代表値は2031年5月、人類の知能を大きく上回るASI(人工超知能)の代表値は2034年7月とされている。なお、これらはあくまで確率モデルに基づく代表的な想定値であり、特定の年や月に必ず到来することを意味するものではない。
なぜこれほど慎重な予測になったのか。それは単なる計算ミスの訂正ではない。
旧モデルが「AIがAIを改良すれば、進化は無限に加速する」というソフトウェア中心の理論値に強く依存していたのに対し、今回の新モデルでは、「電力不足」「データセンター建設の遅れ」「半導体供給の限界」といった物理的な障害が、現実的な制約として詳細に組み込まれている。
その結果、AGIやASIの到来は、魔法のように一気に訪れるものではなく、泥臭いインフラ整備やエンジニアリングの積み重ねを経て進んでいくものだという前提が、確率モデルとして数値化された。つまり、今回のモデルの特徴は、「いつ来るか」を断言することよりも、「どのくらいの不確実性があるか」を明示した点にある。
――ここからは『Deep Insider Brief』恒例の“ひと言コメント”として、今回の動きから技術の“今”を少し深く見ていく。
Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。
正直に言うと、私が「AI 2027」を最初に読んだとき、この予測は「かなり占いに近いな」と感じました。AGIやASIが将来現れる可能性そのものを否定したわけではなく、「2027年」という具体的な年号まで含めて語られるそのシナリオは、技術予測というよりも、フィクションに寄りに感じられたのです。
というのも、最新AIの基礎技術であるディープラーニングを長く見てきた立場からすると、ブレイクスルーや転換点というのは、技術の連続性を知っている人ほど「既存技術の延長線上」と捉えてしまい、世の中の熱狂との間に温度差を感じてしまうことがあるからです。ChatGPTの登場がまさにそうでした。当時は正直なところ「騒ぎ過ぎだ」と思いましたが、振り返ってみると、あそこが大きな転換点だったのだと、ほどなく気付かされました。
AGIやASIも、おそらく同じ道をたどるでしょう。どこかの企業が「技術の延長」を出したつもりでも、気付けばそれが社会にとって不可逆な転換点になっている。明日なのか、5年後なのかは分かりませんが、少なくともシミュレーションで「X年X月」と言い当てることは難しい。というのも、本当の転換点は、あらかじめ「ここだ」と分かる形では現れず、振り返って初めて気付かされるものだと思うからです。
その意味で、今回のレポートは「未来の確定事項」としてうのみにすべきものではありません。しかし、決して無視してよいものでもないでしょう。「もしこの方向に進んだら、自分や組織はどう考え、どう動くべきか」。2026年を生きる私たちに求められているのは、これを「良質な思考実験の材料」として、徹底的に使い倒すことだと思います。
AI Futures Model(2025年12月更新版)の主な変更点
モデルの性質
- 確率的なシミュレーション: 特定の日付を断定するものではなく、何千回ものシミュレーションに基づく「中央値(確率分布の中心となる想定)」や、デモサイト上で示される「代表的なシナリオ(表示用の想定値)」として提示されている
- フィードバックの反映: 旧モデル(2025年4月)発表後に寄せられた「単純過ぎる」「物理限界を軽視している」といった指摘を踏まえ、より堅牢(けんろう)なモデルへと調整された
予測タイムラインの修正
- AC(自動コード生成システム)の実用化: 旧モデルの「2027年」から、新モデルでは「2031年5月(代表シナリオ)〜後半(中央値)」へ延期
- ASI(人工超知能)の出現: AC実用化からさらに約3年の「離陸期間(Takeoff)」を経て、「2034年7月ごろ」に出現すると予測
遅延の主な要因(現実の摩擦)
- 物理的な制約: データセンターの電力確保や冷却、GPU(計算チップ)の製造能力不足が、AIの進化速度にブレーキをかける要因として重視された
- 研究開発の自動化難易度: AIにプログラミングをさせることは可能でも、人間のような「評価能力」や「暗黙知」を持たせ、研究プロセス全体を自動化するのは想定以上に難しいことが判明
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