複雑化するインフラ管理、迫るWindows Server EOS対応――Microsoftが示す「現場を救う一手」とは:「Azure Arc」で実現する統合管理とセキュリティ強化
複雑化するハイブリッド環境の運用に加えて、分断された環境を統合し、現場の負担を解消に導くアプローチとは、一体どのようなものなのか。
オンプレミスとクラウドのインフラが混在するハイブリッド環境の運用管理に加えて、2027年1月に迫る「Windows Server 2016」のサポート終了(EOS)への対応がIT担当者の重い負担となっている。こうした状況でMicrosoftが、現場を救う手だてとして掲げるのが「Azure Arc」の活用だ。その導入によってハイブリッド環境の管理はどう変わるのか。
本稿は、2026年3月に日本マイクロソフトとパートナー企業3社が開催した「Azure Arc Summit 2026」から、Azure Arcの活用価値についてお伝えする。
クラウド/AI時代に不可欠な「三本柱」 Azure Arcがもたらす価値
日本マイクロソフトの小林治郎氏は基調講演で、事業や従業員を支援するクラウド/AIを活用するには、AI(人工知能)プラットフォーム・統合データ基盤・セキュアなインフラという「三本柱」が欠かせず、そのハイブリッド・マルチクラウド環境への対応が不可欠であることを強調した。
世界の企業の大半がマルチクラウドを採用し、その多くがハイブリッド運用を実施しているという。小林氏は警察庁の発表を取り上げ、「オンプレミスにあるから安全であるというのは大きな誤解です。最近のセキュリティインシデントの多くは、オンプレミス環境から発生しています」と注意喚起し、Azure Arcをオンプレミスとクラウドの「架け橋」として統合的に管理することがセキュリティ強化につながると述べた。
続いて登壇した日本マイクロソフトの内藤稔氏は、Azure Arcの価値を3つ挙げた。
1つ目は「クラウドからの統合管理」だ。エージェントを導入することでオンプレミスから他社クラウドまでAzureポータルで一元管理できる。更新管理、稼働監視、セキュリティポリシー適用などの運用を「シングルコントロールプレーン」に集約できる点が強みだ。
2つ目は「ライセンス調達のモダナイズ」だ。ソフトウェアライセンスやESU(拡張セキュリティアップデート)を従量課金モデルで調達できるようになり、初期投資を抑えた柔軟な運用が可能になる。
3つ目は「オンプレミスへのクラウドソリューション展開」だ。「Azure Virtual Desktop」や最新のAIモデルなど、「Microsoft Azure」で提供される技術を既存環境に持ち込める。
Azure Arcによる可視化と統合 EOS対応にも利点
Windows Server 2016のEOSを目前にしたユーザー企業の選択肢は「クラウド移行」「新OSへのアップグレード」「オンプレミス継続+ESU」に大別される。日本マイクロソフトの高添修氏は、半導体不足によるサーバ調達難などの影響から「単にOSをアップグレードすればよいという時代ではなくなっています」と指摘し、運用変革の重要性を強調した。
オンプレミス環境を重視するなら、Windows Server 2025のネイティブ機能「ホットパッチ」に注目したい。従来のようなリブートを常には必要とせず、稼働中のシステムに適用できるのが特徴だ。この管理には、Azure Arcを経由した「Azure Update Manager」を用いる。内藤氏は「今後、WSUS(Windows Server Update Services)は推奨しない方針です。更新管理の基盤をAzure Update Managerに移行することが理想です」と述べ、管理体制の見直しを勧めた。
攻撃されたらもう遅い Azure Arcによる統合管理から予測型防御へ
日本マイクロソフトの宮川麻里氏は、年次で公開している「Microsoft Digital Defense Report」を基に最新のサイバー攻撃動向を解説した。
同調査によれば、サイバー攻撃の目的は金銭目的が過半数を占め、中小企業や医療機関、自治体も標的になっている。「攻撃者は特定の組織を狙うのではなく、対策が不十分な環境を広く探しています。サーバに対してもエンドポイントと同様の保護を施すことが基本中の基本です」と宮川氏は強調した。
同氏が推奨するのは、「Microsoft Defender for Servers」の活用だ。Azure Arcを介することで、オンプレミスや他社クラウドを含む全てのサーバ群をDefender for Cloudから一元管理できるようになる。Azure Arc経由であれば、Azure Update Managerも含まれているため、セキュリティと更新管理を一括で導入できるなど費用面のメリットも大きい。
さらに宮川氏が重視するのは「予測型防御」の概念だ。「攻撃する側もAIを活用しており、従来のように検知してから対応する方法では間に合いません。今後は、AIが攻撃パターンを予測して、攻撃者を先回りし、自律的に防御する仕組みが必須となるのです」と述べ、「Defender XDR」「Microsoft Sentinel」を組み合わせて統合セキュリティ基盤を整えるメリットを説明した。
Microsoftのパートナー企業と歩むハイブリッド運用の実践
今回のセミナーに参画したパートナー3社のセッションでは、Azure Arcを活用するための具体的なアプローチが示された。
ソフトクリエイトの野田泰宏氏は、Azure Arc活用の前提として「クラウド移行はあくまで手段です。まず現状を正確に把握することが重要です」と述べ、同社が無償提供する「サーバ最適化アセスメントサービス」を紹介した。サーバごとにAzureへの移行コストとオンプレミス継続コストを比較提示し、最適な配置判断を支援する。さらに同社の「SCCloud EaseBase」を活用すれば、継続的なサポートを受けられるという。
大塚商会の近藤啓太氏と安部里志氏は「運用のサイロ化」を課題の本質として提起した。ハイブリッド化によって環境が増えるほど、管理ツールと担当者が分断されてセキュリティ統制も困難になる。この問題をAzure Arcで解決できると説明した。「Azure Arcは単なる管理ツールではなく、IT環境全体を統合し、お客さまと私たちITベンダーをつなぐ架け橋にもなります」(近藤氏)
デル・テクノロジーズの南部憲夫氏は、Azure Arc活用におけるハードウェア側の視点を加えた。最新の「Dell PowerEdgeサーバ」は、5年前の同社製品7台分の処理性能を1台に集約でき、電力コストを約65%削減できる性能だという。「EOSを機に老朽化したサーバを統廃合してオンプレミス環境をスリム化し、Azure Arcで統合管理する。この組み合わせがハイブリッド運用の現実解になる」と説いた。



左から、野田泰宏氏(ソフトクリエイト イノベーションテクノロジー本部 システムインテグレーション統括部 プラットフォームソリューション部 副部長)、近藤啓太氏(大塚商会 技術本部 テクニカルソリューションセンター クラウドグループ)、安部里志氏(大塚商会 技術本部 テクニカルソリューションセンター クラウドグループ)、南部憲夫氏(デル・テクノロジーズ インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 マイクロソフトソリューション部 ビジネス開発マネージャー)Azure Arcへの期待 統合管理やセキュリティに注目
講演後半では、会場に訪れた参加者のアンケート結果に基づいたパネルディスカッションが開催された。
「Azure Arcに興味を持ったきっかけ」「講演後に有用だと思った特徴」については、「ハイブリッドクラウドの統合管理」や「セキュリティ・更新管理」の声が挙がった。野田氏は「セッションの内容を踏まえAzure Arcの特徴を感じていただいた」と手応えを示し、高添氏も「Azure Arcの活用を通じてオンプレミスをよりセキュアにできること、ハイブリッド環境の運用効率向上の両方で注目していただいた」と述べた。
Azure Arcの印象については「夢と希望」「何でも屋」「エージェントを配る仕組み」といったキーワードが飛び出した。一方で、導入のハードルとして「意思決定者への説明の難しさ」が浮き彫りとなった。
デル・テクノロジーズの小部直寛氏は、「3〜5年単位でコストが明確なオンプレミスと異なり、従量課金は費用を説得しにくい」と実情を語ると、近藤氏も「『本当に何ができるのか説明しにくい』という意見は当社内にもあり、共感できる」とした。高添氏は「セキュリティを起点に、オンプレミスだけでは難しいからクラウドにつなぐ。それを容易にするのがArcといったシンプルな説明が有効だ」とアドバイスした。
Azure Arcの具体的な導入の決め手としては、Windows Server ESUの提供や、Active Directory(AD)の廃止などが挙がった。「Azure ArcにつなぐとWindows ServerでEntra ID認証が実行できるようになり、『脱AD』のきっかけにもなる」と高添氏。野田氏も「ESU対応など、お客さまが直接的に感じているポイントの支援が必要だ」と同意を示した。
目前に迫るWindows Server 2016の運用状況とEOS対応のタイミングについては、「OS更新・クラウド移行を検討中」が多く、トラブルやインシデントが発生するギリギリまで対応が難しいという実態も明らかになった。
近藤氏は「サポート期限切れは大きなリスクであり、インシデントが発生してからではなく、発生させない準備が肝要だ」と述べた。野田氏が「昨今のサーバ調達難からクラウド化へ動く顧客が増えている」と指摘すると、小部氏は「ハードウェアベンダーとしての支援不足を反省する面もある。まずはAzure Arcにつないで管理方法だけでも変えてみれば変化が見えるはず」と、スモールスタートを推奨した。
最後に、「Azure Arcは中小企業のIT管理者にもメリットがあるか」という質疑に対し、野田氏は「Azure Update Managerは中小企業でも有効だ」と明言。近藤氏も「Azure Arcで環境をまとめることで、私たちのようなITベンダーへの運用アウトソーシングも検討しやすくなる」と語った。
Azure Arcは次のステップへ渡るための架け橋
パネルディスカッションを通じて見えたのは、「架け橋」としてのAzure Arcの価値だ。登壇したパートナー企業からも「オンプレミスからクラウドへの『クラウドジャーニー』において、第一歩としてAzure Arcにつなぐことで次のステップが見えてくる」と、その実用性を高く評価する声が上がった。
ハイブリッド環境の統合管理やセキュリティの強化、そして将来のAI活用を見据える上で、Azure Arcは運用体制を変革するための現実的かつ有効な基盤となる。クラウド移行か、オンプレミス継続か――いずれの道を選ぶにせよ、複雑化するITインフラ環境の運用変革に向けた第一歩として、Azure Arc活用を検討してみてはいかがだろうか。
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