AIエージェントを導入したい企業が今すぐやるべき6施策 ガートナーが提言:「セキュリティは後で」では命取り
AIエージェントの導入が急がれる裏で、セキュリティ対策が置き去りになっている。国内企業の約6割が「セキュリティについて議論不足」と答える状況の中、ガートナーが今すぐ着手すべき“6つの防衛策”を提言した。
ガートナージャパン(以下、ガートナー)は2026年5月21日、AIエージェントのセキュリティ対策で企業が優先的に取り組むべき6項目を発表した。AIエージェントの導入が急速に広がる中、企業内では利用の検討が先行し、防御体制整備が追い付いていない実態が明らかになった。
同社が2026年2月に国内企業を対象に実施した調査によると、「AIエージェント活用や導入議論が先行し、セキュリティ面の議論が後回しになっている」と答えた企業は59.3%に達したという。
今からしないと手遅れ? AIエージェントを守るなら優先すべき6施策
ガートナーの矢野薫氏(シニアディレクター アナリスト)は「AIエージェント普及に伴い、防御モデル自体の変革が必要だ」と指摘する。従来の静的なセキュリティだけでは対応できず、動的かつ状況依存型の監視や制御を組み込む必要があるという。これを踏まえて、ガートナーが重点施策として推奨する6項目とは。
1つ目はライフサイクル管理だ。AIエージェントは増殖しやすく、古いエージェントが放置されると不正の温床となる危険がある。企業には登録管理や識別子付与、作成者や所有者情報の明確化などを通じた統制体制構築が求められる。
2つ目は認証だ。人間用の認証ではスマートフォンを使った2要素認証が広がっているが、AIエージェントには適用できない。現時点において、RPAやAPI管理で使われてきた秘密鍵ベースの認証技術の転用が有力視されている。短期的には既存技術を活用し、中長期的には新方式導入を視野に入れる必要がある。
3つ目はアクセス制御と権限管理だ。AIエージェントにも最小権限の原則を適用する必要があるが、自律型や再帰型エージェントでは権限設定が複雑化する。ガートナーは、危険度が高い用途では全社展開を急がず、限定運用から開始する方針が有効だとした。
4つ目は情報漏えい対策だ。AIエージェント活用の拡大に伴い、従業員が大量の情報に容易にアクセスできる環境が生まれる。情報管理に不慣れなユーザーによる誤操作や、AIエージェント自身による持ち出しも懸念材料となる。重要情報を扱う場面では、人間による確認工程を残す必要がある。
5つ目はモニタリングだ。AIエージェント分野において、プロンプトインジェクションやエージェントハイジャックなどの攻撃が問題視されている。自律性が高いAIほど行動予測が難しくなるため、リアルタイム監視技術の重要性が増している。ガートナーはAIセキュリティ・ポスチャ・マネジメント(AISPM)、AIランタイム・ディフェンス、ガーディアンエージェントなどの活用を挙げた。
6つ目はセキュリティ手順の設計と周知だ。企業はAIエージェント利用に対応した新たな規定や運用ルールを整備する必要がある。矢野氏は「ユーザーの業務内容やIT知識、扱うデータ種別に応じて説明内容を細分化し、個人ごとに最適化した教育を実施する動きが先進企業で広がっている」と説明した。
AIエージェントは業務自動化やデータ分析高度化を支える技術として注目を集めるが、新たな攻撃面を生み出す存在にもなっている。ガートナーは導入速度のみを優先するのではなく、運用統制と監視技術を並行整備する重要性を強調した。
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