複雑化するネットワークをどう管理するか AI技術による「自律型運用」への道筋:コスト抑制と品質維持の板挟みを解消
ネットワーク構成の複雑化と専門人材の不足によって、従来の運用体制は限界を迎えている。長年の課題であるコスト抑制と品質維持を両立させる鍵として注目されるのが、AI技術による「自律型運用」への転換だ。ネットワーク運用管理の自動化を加速させる鍵は。
ネットワーク運用管理の作業工数とコスト削減の鍵はAI
IT部門は「人材不足」と「システムの複雑化」という2つの大きな壁に直面している。特にネットワーク運用管理において、管理画面では正常に見えるにもかかわらず「つながらない」「遅い」といった不満が発生する「サイレント障害」への対処は、現場を疲弊させる大きな要因だ。セキュリティ対策の強化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に応じてネットワーク機器の追加と設定変更を繰り返した結果、IT担当者がシステムの全容を把握できず、運用負荷は増大している。
こうしたネットワーク運用管理の行き詰まりを打破する鍵として注目を集めるのがエージェンティックAI(自律型AIエージェント)だ。この技術を組み込むことで、リアルタイムに障害の予兆を検知して、プロアクティブ(予防的)に修復できる。日本ヒューレット・パッカードの中村裕也氏は「エージェンティックAIの活用によって監視の限界を補いつつ、障害を未然に防止して、ダウンタイムを短縮します」と説明する。
目指す姿は、ネットワーク運用を「人が常に監視し続ける前提」から脱却させることだ。専門人材の確保が難しくなる中、障害発生後に対応する従来型の運用では限界がある。AIが異常の兆候を継続的に検知し、対応の優先度や改善方針を提示することで、限られた人員でも安定したネットワーク品質を維持できる体制への転換が求められている。
HPEは5段階のステップから成る自律運用のネットワーク「Self-Driving Network」を提唱した。高品質なデータの収集に始まり、AIの活用によるインサイトの提示、解決策の推奨、IT部門の監視の下での自律運用、そして人の手を介さない完全な自律運用だ。HPE Networkingのネットワーク運用管理製品は、既にStage 4や5の自律運用に近いところに到達しているという。
AIOps機能を拡充したHPE Aruba Networking Central
Self-Driving Networkの理念を具現化する製品として、HPEはクラウド型管理基盤「HPE Aruba Networking Central」におけるAI技術の活用範囲を広げた。最新バージョンはユーザーインタフェースの刷新とともにAIOps(AI技術を使ったIT運用)機能を強化した。「AIアシスタントとの対話によって設定の修正箇所を特定するといった、運用管理を効率化する便利な機能が加わりました。従来は複数のログや設定情報を突き合わせて原因を特定する必要があったが、AIとの対話によって問題箇所の候補を迅速に把握できるようになる。専門知識の有無にかかわらず初動対応のスピードを高められる点も大きい。高度な専門知識がなくても、直感的な操作で状況を迅速に把握できます」と中村氏は解説する。
HPEの他システムとの連携も進めた。その一例が、マルチベンダーシステムの可観測性を高める「HPE OpsRamp Software」との連携だ。オプションライセンスを追加すると、HPE Aruba Networking CentralとHPE OpsRamp Softwareが連携して、HPE製品と他社製ネットワーク機器のステータスをHPE Aruba Networking Centralで確認可能になる。
現実のネットワークはさまざまな事情で複数社の製品が混在している。ネットワーク管理プラットフォームは多くの場合、自社製品しか管理できないものが多いが、HPE Aruba Networking CentralとHPE OpsRamp Softwareはこうしたベンダーロックインを回避する柔軟性に強みを持つ。他社製品の混在による運用のサイロ化を解消し、複数の管理画面を渡り歩く手間も減らせる。
最新バージョンのHPE Aruba Networking Centralは、クラウドネイティブのネットワークアクセス制御(NAC)の「HPE Aruba Networking Central NAC」を内包する。「認証、認可、ゲストアクセスなどの機能により、ロールベースのアクセス制御、ゼロトラストセキュリティの迅速な構築を実現します。従来のオンプレミスの認証ソリューション『HPE Aruba Networking ClearPass』もラインアップとしては併存します」と中村氏は説明する。加えて、費用面のアドバンテージもSaaSならではの特徴だ。日本ヒューレット・パッカードの植田凌央氏は「HPE Aruba Networking Central NACの基本機能だけならば、HPE Aruba Networking Centralの標準ライセンスに含まれており、同じ管理画面から簡単に設定できます。物理サーバやソフトウェアの個別調達が不要なため規模拡大や拠点増加に対応しやすく、初期コストを抑えて短期間で導入できるのもクラウドならではの強みです」と語る。
IT担当者の運用負荷を軽減する機能も多数備える。「昨日ネットワークの調子が悪かった」と問い合わせがあった際に、ログだけで調査することは困難だが、「Health Metrics」機能を活用すると、ダッシュボードから任意の時間にさかのぼって、ネットワークの状態、どのようなアラートが発生していたかを確認できる。夜間や休日に発生した障害を翌営業日に調査するといった柔軟な働き方を実現可能だ。
自律型運用の導入を支えるDISの供給体制
ネットワーク運用管理にAI技術を取り入れることで、IT担当者は定型的な作業から解放され、より戦略的な業務に時間を投入できる環境が整う。「労働人口が減少する中、自律型運用によってネットワークの適正な維持管理を省力化することは、ユーザー企業のみならず販売パートナーにとっても、効率的で持続的なビジネスができるという意味で大きな利点があります」と大手ITディストリビューターであるダイワボウ情報システム(DIS)の宮城真将氏は話す。
DISは全国47都道府県に112カ所の営業拠点を構えて、各地域の販売パートナーとの協力体制に基づく「顔の見えるサポート」を強みとしている。ネットワークエンジニアの常駐が難しい地方の拠点こそ、AI技術による自律運用が有効だ。物理障害が発生した場合も、DISの物流網を生かした迅速な機材供給によってダウンタイムを最小限に抑え、事業継続性を確保できる。DISの浅田港氏は「弊社は豊富な在庫を維持して、販売パートナーを通じて製品を迅速に納入できる体制を整えています」と説明する。
複雑なシステム構成やライセンス管理を支援する仕組みも充実している。DISにはHPE製品に精通した専任チームがあり、構成の検討や見積もりを支援する。HPE Aruba Networking Centralライセンスの手配チームもある。加えて、HPE Aruba Networking Centralの利用が前提となるネットワーク機器(アクセスポイント「AP-7xxシリーズ」など)をDISの販売パートナー向けECサイト「iDATEN(韋駄天)」で注文する際には、ライセンスの調達漏れを防ぐ機能を実装した。こうしたシステム面でのチェックと専任チームによる検証が、手配ミスに伴う納期遅延を未然に防いでいる。
少子高齢化による労働力不足が進む中で、ネットワーク刷新の意思決定は長期的な視点が求められる。「ネットワーク不調時に『これはプロを呼ぶまでもないだろう』と考えてネットワーク設定を変更した結果、事態を余計に悪化させてしまったという話もよく耳にします。ネットワーク刷新は数年に一度の大きな投資です。トラブル対応をAI技術に委ねる自律運用の仕組みを組み込んでおくことが、将来的な運用コストの抑制と企業の競争力を支える安定した通信環境の確保につながります」と宮城氏は語る。HPE Aruba Networking Centralは、その基盤を構築するための有力な選択肢となるはずだ。
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