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自ら動き出すネットワーク AIが求める次世代インフラとは:なぜネットワークの自律化が必要なのか

AI技術の進展は通信事業者に「決定論的な性能」「AIスケールによる自動化」「持続可能な収益化」の3つの課題を突き付けている。ネットワーク運用の自律化を担うAIエージェントの実装の在り方と、急増するAIトラフィックを支えるトランスポート網の進化とは。2026年8月開催の技術セミナー「Nokia Amplify Japan 2026」の講演から解説する。

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 ノキアソリューションズ&ネットワークス(以下、ノキア)の小島浩氏は「なぜネットワークの自律化が必要なのか」と課題提起した。運用系システムやインダストリー4.0、ドローン制御、ヘルスケアなど、通信ネットワークは幅広い用途への対応を求められている。小島氏は障害の検出やその対処、リソースの柔軟な制御といった要件を満たすには、ネットワークの自律化が欠かせないと説いた。

 「ノキアが目指すのは、運用側からの要求とAPI経由のアプリケーション側からの要求の双方を、インテントベースのネットワークとして制御する仕組みだ。ネットワークAPIを通じてアプリケーション側の要求を受け付けることで、ネットワークのマネタイゼーションの実現を図る」


ノキアの小島浩氏(コアソフトウェア技術営業 プリセールスリーダー)

 この構成は、無線・コア・伝送の各ドメインを制御する層の上に、エンド・ツー・エンドで分析やオーケストレーション、セキュリティ、アラーム制御を担うアプリケーション群を重ね、その上に収益化を図るビジネスオペレーションレイヤーを配置する多層構造だ。各ドメインから集まる膨大な品質・アラーム・セルの実績データを整理してカタログ化する工程にもAIを取り入れ、アプリケーション開発期間の短縮とタイム・ツー・マーケットの実現を狙う。


エンド・ツー・エンドのAutonomous Networks構成図(提供:ノキア)《クリックで拡大》

 6G時代に向けたAI活用は2つの観点に整理される。一つはネットワークの各機能でAIエージェントを稼働させ、運用の効率化と自律化を進める「AI for Core」の取り組みだ。もう一つはAIトラフィックやAIエージェント間の分散通信の急増を見据えて動的なリソース制御や低遅延化を実現して、AIネイティブなネットワーク基盤を構築する「Core for AI」のアプローチだ。

 ネットワークの容量設計や「CNF」(Cloud-native Network Function)の実装・アップグレード、監視・障害対応、容量拡張といった運用の各局面で自動化が着実に広がるだろう。

6Gを見据えて広がるAI活用 3つの実装パターン

 こうしたAIエージェントの実装形態について、小島氏は3つのパターンを紹介した。

 1つ目は、ネットワークの外部でデータを活用する形態だ。ネットワークとAIが切り離された状態で、蓄積されたデータを基にAIが分析・提案する。

 2つ目は、CNFごとに割り当てられたAIエージェントが、個々のネットワークファンクションの状態確認や構成変更を担う形態だ。「MCP」(Model Context Protocol)や「A2A」(Agent-to-Agent)プロトコルなどの標準インタフェースを介してAIエージェントや外部ツールと連携する。既存のコードに手を加えることなくCNFの状態確認や構成変更を自律的に実行できる点が特徴で、NF(Network Function)のヘルスチェックや自律的な構成変更などの用途に向く。

 3つ目は、アプリケーションやネットワーク機能の内部にAIを組み込む形態だ。低遅延かつ密結合な処理が求められる場面に適しており、標準インタフェースを介することでマルチベンダー環境でも相互運用性を確保できる。

 これらの適用範囲について、小島氏はネットワークのライフサイクル全体にわたる活用例を挙げた。設計段階ではAIエージェントによる容量設計の自動化や、生成AIを用いた設定情報の自動生成が進む。展開段階ではAIエージェントがコア用CNFやコンテナ環境の展開を担い、要求をインテントとして受け取って自動的に実行する。アップグレードではサービスへの影響を抑えながらCNFやコンテナ環境の更新経路をAIが最適化する。

 監視・トラブルシューティングでは、生成AIが生成したダッシュボードを介したAIによる根本原因分析・異常検知を通じて、テレメトリーデータに基づいた深い洞察と対応支援を活用する。運用・拡張の局面では、AIエージェントがリソースのスケーリングを判断して、構成管理やスライス運用といった日常業務の自動化を進める。

 こうしたAIエージェントは、役割に応じてライブラリとして体系化されている。オーケストレーションの不具合解消を支援するエージェントや、異常を分析して次のアクションを提案するエージェント、IPやホームネットワーク、固定アクセス、光ネットワーク、データセンターといった各ドメインに特化したトラブルシューティング専門のエージェント、セキュリティインシデントへの対応や脅威検知を担うエージェントなど、幅広いカテゴリーが用意されている。

 6G時代を見据えたサービスの開発も進んでいる。小島氏はIMS(IP Multimedia Subsystem)を例に、没入型の音声サービスやAIによる音声翻訳、AI音声パーソナルアシスタントといった新たなエンドユーザー向けサービスに加え、会話パターンの解析による詐欺対策やなりすまし防止といった応用も広がると説明した。

 「AIエージェントの種類は、新しいサービスやネットワーク環境が登場するたびに増えていく。ノキアは、通信ネットワークに適したAIエージェントに加えて、AIエージェントを開発する環境も提供する」

トークン経済がもたらす変革 AIが物理層に求めるもの

 ノキアの鹿志村康生氏は、トランスポートネットワークの視点からAI時代の通信インフラのあるべき姿を語った。

 音声信号の伝達から始まった通信は長らくデータが主流だったが、近年はトークンに移り変わっている。「AIサービスの拡大に伴い、2025年で約300億ドル規模だったGPUaaS(GPU-as-a-Service)市場は2034年には2500億ドル超の規模に成長すると見込まれている。世界に流通するAIトークンも、2026年から2030年にかけて年平均100%を超える成長率で急拡大するとみられる」(鹿志村氏)


ノキアの鹿志村康生氏(ネットワークインフラストラクチャー事業部 IPルーティング統括本部長)

 こうしたAIワークロードの広がりは、コンピューティングをよりユーザーに近い場所に引き寄せている。学習を中心とした大規模データセンターへの投資は継続される一方で、電力や設置スペースの制約もあり、推論処理はエッジ側に分散する流れが強まっている。

 この分散を支えるのがトランスポートネットワークの役割であり、AIの処理単位であるトークンを低遅延で確実にアプリケーションやAIへ届けることが今後ますます重要になる。

 「AI関連のトラフィックは高い成長率で拡大を続ける見通しだ。AI同士が情報をやりとりするマシン・ツー・マシン(M2M)のトラフィック比率も大幅に伸びると予測されている」と鹿志村氏は語った。


AI技術の進展(提供:ノキア)《クリックで拡大》

 これに伴い、従来は「ノース・サウス」方向(インターネット/クラウドとクライアント間)が中心だったトラフィックに、「イースト・ウエスト」方向(データセンター間)のトラフィックが加わりつつある。アップロードの通信量も増加傾向にあり、これまで前提としていたトラフィックの比率と方向を見直す必要が生じているという。

 鹿志村氏は遅延についてもニーズが変化すると説明。「AIエージェントは複数のタスクを連続して処理するため、途中で発生する遅延が積み重なる点が問題となる。そのため、マシン・ツー・マシンでは、ミリ秒単位の低遅延を実現するトランスポート網が欠かせない」と述べた。

 物理層では、インタフェース速度の高速化が進むだろう。従来の100G・400Gから800G、さらには1.6Tに進化する見通しだ。IPルーターと伝送レイヤーの機能を統合するコヒーレント光技術の採用も広がっている。トランスポンダを光モジュールに集約することで、スペースや電力、運用コストを最適化できる点が評価されているという。

 鹿志村氏は「トラフィックの伸びに対応するキャパシティーの増強に加えて、インタフェースを高速化しながらコストを抑えて多量に投入するには、コヒーレント光技術によるIP層と伝送層の統合が重要だ」と説明。2025年にNokiaの光ネットワーク部門に統合されたInfineraのデジタル信号処理や光素子の製造技術を活用しながら、供給体制の強化を進めていると語った。

経路制御から暗号化まで 安全な通信を担うAI時代の論理層

 続いて鹿志村氏は、AI時代のトランスポートネットワークでの論理層とセキュリティの重要性について解説した。

 多様化する接続の要求に応えるためには、柔軟かつオンデマンドに経路を構成できる仕組みが求められる。ここ数年、新設のネットワークでは、セグメントルーティングの採用が広がっている。鹿志村氏は、今後必要になるスケーラビリティやプロトコルとしての拡張性・柔軟性を備える「SRv6」(Segment Routing over IPv6)が重要な技術になると説明した。

 もう一つの重要なキーワードが、データの安全性を確保する「耐量子安全性」(Quantum-safe)だ。量子コンピュータが現在の暗号方式を解読できるようになるまでにはまだ猶予があるとされる。しかし、将来量子コンピュータ技術が確立した段階で解読しようともくろみ、今のうちに暗号化データを取得しようと試みる脅威が生まれている。

 これに対抗する手段として、公開鍵暗号方式を高度化する耐量子暗号(PQC:Post Quantum Cryptography)と、量子鍵配送(QKD:Quantum Key Distribution)や事前共有鍵(PSK:Pre-Shared Key)などによる共通鍵配送という2つのアプローチが進められている。トランスポート層ではL2の暗号化技術である「MACsec」を拡張して、L2.5やL3にも適用する方式での標準化をノキアが提案しており、汎用(はんよう)プロセッサへの実装対応も確認されている。

 「MACsecを拡張することで、経路上の機器は暗号化そのものを意識する必要がなくなり、始点と終点だけで暗号化を制御できるようになる。これによって、セグメントルーティングと組み合わせた暗号化パスの構築が可能になる」

 最後に、鹿志村氏はデータセンター内部のネットワークに言及した。ノキアはGPU同士を接続するバックエンドと外部と接続するフロントエンドの双方でソリューションを提供している。米国西海岸に構える「AIネットワーキング・イノベーションラボ」では、NVIDIAやAMDのGPUと自社スイッチを用いた検証を重ねている。こうした検証を基に、GPUを接続する際のネットワーク設計・構築に関する推奨事項をまとめたドキュメントも発行している。

 「ネットワークの理想型は事業者や導入段階によって異なるが、顧客ごとに最適な将来像を描く議論を続けたい」

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提供:ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2026年10月29日

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