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AIの出力を「理解する時間」がどんどん増えていく Karpathy氏推奨の4手段:文章・図・Webページ・動画:Deep Insider Brief ― 技術の“今”にひと言コメント

AI研究者アンドレイ・カルパシー氏が「これからはLLMの出力を理解することに多くの時間を使うようになる」と述べ、理解しやすくするための手段を4段階で示した。文章、図、Webページ、動画の順に何を頼めばよいか、筆者が実際に試した結果も添えて整理する。

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 AIに書かせるのは速い。だが、書かれたものを人間が理解するには、相変わらず時間がかかる。AIが文章もコードも大量に生み出すようになった今、ボトルネックは「書く」から「理解する」へ移りつつある。

 AI研究者のアンドレイ・カルパシー(Andrej Karpathy)氏は2026年10月2日、Xでこの問題を取り上げた。「われわれは今後、言語モデルの出力を理解することに、ずっと多くの時間を使うようになる」。そう書き出した上で、出力を理解しやすくするための工夫を4つ挙げている。ポストは750万回以上表示された。

AIの出力が長すぎて理解に時間がかかる状態(左)から、文章、図、Webページ、動画の順に出力させることで理解が早くなる(右)。カルパシー氏が挙げた4つの手段(本記事オリジナル)
AIの出力が長すぎて理解に時間がかかる状態(左)から、文章、図、Webページ、動画の順に出力させることで理解が早くなる(右)。カルパシー氏が挙げた4つの手段(本記事オリジナル)

 4つの手段は、文章、図、Webページ、動画である。この順番にも意味があり、カルパシー氏は「一段ずつ先へ進む」形で並べている。文章を読みやすくする工夫から始まり、文章の代わりに図を使い、さらに操作できるWebページにし、最後は自分専用の解説動画を作らせる。後の段階へ進むほど、読む側の負担は軽くなる。

 最初の「文章」を読みやすくする手段が、特に話題になった。航空機の整備マニュアルのために作られた制限英語の規格「ASD-STE100」で説明させる、というものだ。LLM(大規模言語モデル)はこの規格をよく知っており、書き方への制約が強いぶん、出力がずっと読みやすくなるという。ただし規格が厳し過ぎるので、「ASD-STE100の8割くらいで」と頼むこともあると添えている。

 これらは新しい技術ではなく、今日から試せる頼み方の工夫だ。ただし、日本語でも同じような効果があるのか、何かが失われていないかは、使う側が確かめる必要がある。筆者は自分が作ったシステムを題材に、4つの手段を実際に試してみた。

――ここからは『Deep Insider Brief』恒例の“ひと言コメント”として筆者の考えを述べた上で、カルパシー氏が挙げた4つの手段と、筆者が試した結果を整理していく。


一色政彦

 Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。

 カルパシー氏のポストを読んで、「自分がやっていることと、ほとんど同じだな」と思いました。私も何かを理解したいときは、自分で書いて整理したり、AIに文章にしてもらったり、短くまとめてもらったりしています。さらに、図にしてもらう、Webページでインフォグラフィックにしてもらう、Gemini Notebookで動画にしてもらう、といったこともよくやっています。文章、図、Webページ、動画。この順番を意識していたわけではありませんが、気付けばカルパシー氏と同じ流れになっていました。

 今回は、LLM Wikiという仕組みをベースに私が設計した社内ナレッジベース「FactDB」を題材に、Claude Codeでこの4つを順に作ってもらいました(詳細は後述)。

 見比べてみると、それぞれの役割も見えてきました。動画は、内容を理解する入り口として一番分かりやすいと感じました。その後にHTMLページを見ると、情報がまとまっていて見やすく、全体像をつかめます。図も、それだけで分かりやすい入り口になりますが、HTMLページに組み込まれると、文章と合わせて見られるので、さらに役立ちます。文章は情報量が多く、細かい内容を確認したいときに読むもの、という印象でした。

 特に意外だったのは、最後に作ってもらった動画の出来の良さです。文章、図、Webページと積み上げてきたからか、AIも題材を十分につかめていたようで、場面の切り方も色の使い方も自然でした。4つの手段は「どれか1つを選ぶ」という使い方だけでなく、順に積み上げていくことで、最後に作るものの質も上がるのかもしれません。


 それでは、カルパシー氏が挙げた4つの手段と、筆者が試した結果を順に見ていく。

カルパシー氏が勧める4つの手段

  • 文章: ASD-STE100(航空機整備マニュアル向けの制限英語)で説明させる。短い文、1文に1つの事柄、能動態、1語に1つの意味といったルールを持つ規格で、LLMはこの規格をよく知っている。制約が強いぶん読みやすい。厳し過ぎるときは「8割くらい」と頼む
  • 図: 文章を書かせる代わりに、図や画像を描かせる。内容を捉えやすく、解釈しやすく、理解しやすい
  • Webページ: 「HTMLで」と頼み、見やすく対話的なWebページとして出力させる。LLMはフロントエンド(画面側の実装)がかなり得意になっており、きれいなビジュアル要素やアニメーションも作れる
  • 動画: 数学解説で知られるYouTubeチャンネル「3Blue1Brown」風の解説動画を、自分の知りたいことに合わせて作らせる。カルパシー氏が最も期待している形式

筆者が試した結果

 題材は、先ほども説明した社内ナレッジベース「FactDB」である。事実として確認できた情報だけを1件ずつ登録し、LLMがそれを引用する仕組みだ。登録された情報は、まず「承認待ち」になる。内容が事実として正しいと確認できれば「承認済み」になり、LLMが引用してよい情報になる。間違いがあれば、内容を書き換えて承認待ちに戻す。この「事実かどうかを確認して承認する流れ」を、4つの手段で説明させた。Claude Codeでリポジトリを開き、次の順に頼んだ。

文章

 頼んだこと: 「FactDBの承認の流れについて、このリポジトリのコードとドキュメントから分かる事実を1行1件で列挙して」。その上で「同じ内容を、ASD-STE100の原則を日本語に適用して説明し直して。厳しさは8割くらいで。1文は短く、1文に1つの事柄、能動態、用語は統一、名詞を4つ以上連ねない、1段落は6文以内」。

 結果: 列挙された事実は99件あり、書き直し後も95件がそのまま残った。事実の欠落はなく、残る4件もファイル名などが省かれた程度だった。平均文長は41字から28字に短くなった。ただし文の数は増え、全体の文字数はむしろ14%増えた。今回の日本語での検証では、「読みやすくはなるが、短くはならない」という結果になった。

 なお、英語では異なる結果も報告されている。開発者のルチアン・ギンダ(Lucian Ghinda)氏が8月に行った小規模な実験では、ClaudeにASD-STE100の規格に従ってコードを説明させると、通常の説明に含まれていたコード固有の事実の46.8%が失われたという。題材や言語によって、短くなる代わりに情報が落ちることもあるようだ。カルパシー氏が「8割くらいで」と条件を緩めているのは、規格が厳し過ぎるためだが、結果的にこの種の副作用を避ける効果もありそうだ。

図

 頼んだこと: 「承認の流れを、Mermaid記法(文字で書いて図に変換できる記法)のフローチャートにして。要素は8つ以内」。

 結果: 登録から承認待ち、自動承認と人による承認の分岐、承認済み、廃止までの流れが、8要素の1枚の図にまとまった。文章では99件に分けて列挙していた内容を、流れ(フロー)として捉えられる。

Webページ

 頼んだこと: 「承認の流れを、1枚のHTMLファイルの解説ページにして。見出しで区切り、各ステップをクリックすると詳細が開く形に。外部ライブラリは使わず1ファイルで」。

 結果: 上部に先ほどの図が配置され、図の要素をクリックすると該当するステップの詳細が開くページになった。用語集と各ステップの説明がまとまり、全体像を1ページで追える。

動画

 頼んだこと: 「承認の流れを3Blue1Brown風に説明する60秒のアニメーションを、Manim(3Blue1Brownが使っているアニメーションライブラリ)のPythonスクリプトとして書いて。場面ごとのナレーション台本も付けて」。

 結果: 6場面のナレーション台本とともに、スクリプトが出力された。別の環境で描画すると、暗い背景の中で登録された情報が承認待ちになり、自動承認と人による承認に分かれていく60秒の動画になった。Gemini Notebookの動画解説なら、資料を読み込ませるだけで数分で動画を生成できるが、Manimは環境構築と描画の手間がかかる。もっと手軽に試すならGemini Notebook、本家に近い仕上がりを求めるならManim、という使い分けになる。

同じ題材から作った4つの出力。左上から、制限英語の原則で書き直した文章、フローチャート、クリックで開閉するHTMLページ、Manimで描画した動画の1場面(本記事オリジナル)
同じ題材から作った4つの出力。左上から、制限英語の原則で書き直した文章、フローチャート、クリックで開閉するHTMLページ、Manimで描画した動画の1場面(本記事オリジナル)

まとめ: 4つは選ぶものではなく、積み上げるもの

 カルパシー氏の4つの手段は、「AIが書き、人間が読む」時代の実用的な助言といえるだろう。

  • 読む努力ではなく、出力の形式で負担を減らす: 文章、図、Webページ、動画と、理解しやすい形を先に指定する
  • 制約の強い書き方には、読みやすさと引き換えに失うものもある: 英語の実験では情報が減り、今回の日本語の検証では文章が長くなった。「8割」のような加減が要る
  • 4つを順に作ると、後の段階の質が上がる: 文章で事実を整理し、図で流れを示し、ページで全体像をまとめ、動画で理解の入り口を作る

 AIの出力を理解する時間が増えるなら、その時間を減らす工夫は、使う側の技術になる。カルパシー氏の4段階を皆さんもぜひ試してみてほしい。

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