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[インタビュー]
Palmに聞く、開発者サポートと販売戦略

 

2001/11/17

 パームコンピューティングは、10月19日よりm500シリーズに「Documents To Go 4 日本語版」のバンドルをはじめた。また、米Palmは10月23日、Palm OSデベロッパーとの連携を強化する目的で、新たなデベロッパープログラムを実施すると発表した。

 そこで、パームコンピューティング(以下Palm)のデベロッパーサービス 矢内健治氏、マーケティングディレクター 山辺仁美氏、営業部事業推進部マネージャー 柳下剛利氏のお三方に、開発者サポートや年末に向けての販売戦略などについてお話を伺った。(本文中、敬称略)

■開発者向けの新たなサポートプログラム

[@IT]:米国で開始された開発者支援プログラムを日本でも始められるそうですね。

デベロッパーサービス
矢内健治氏

[矢内]:Palm OSのアプリケーションの開発者を支援するプログラムは、従来からも行っており、ワールドワイドで17万5000人、日本では4600人ほどの開発者が参加しています。

 今回発表した「Palm OSデベロッパプログラム」では、BasicとAdvantageの2つのレベルを提供します。Basicレベルは無料のプログラムで、従来より提供しているものです。Palm OSのROMイメージやSDKに代表される各種開発ツールのダウンロード、開発する上で有益な情報などを、Webベース(ワールドワイド:http://www.palmos.com/、日本:http://www.palmos-japan.com/)で提供しています。

 新たに追加されたAdvantageレベルでは、Basicレベルの内容に加えて、電子メールによるダイレクトな技術サポート、年4回発行される「Palm OS Resource CD」などが送付され、より手厚いサービスを提供することを目的としています。こちらは、有償で年間US 500ドルとなっています。ただし、サポートが英語のみとなるため、現在日本からAdvantageレベルへの登録はできません。

 日本向けの有償サービスですが、2002年3月上旬よりサービス開始を行うべく準備を進めています。内容的には、Advantageプログラム相当のものを日本語で提供することになります。

  Advantage
$500/年
Basic
無料
日本向け有償サービス
テクニカルリソース
デベロッパテクニカルサポート ×
現行およびリリース前のROMイメージの入手
リリース前の開発ツールと技術情報の提供
オンラインソースコードへのアクセス
SDK(ソフトウェア開発キット)
デベロッパメーリングリストへのアクセス
オンラインKnowledgeBaseと FAQ
マーケティングリソース
Palmos.comへのバナー広告の掲載 ×
Palm-Japan.com
サクセスストーリープログラムへの参加資格 × 代替案を検討中
Palm Powered Up Awardプログラムへの参加資格 × 未定
トレーニング、ニュース、情報
季刊Palm OS Developer Resource CDとPalm OS Confidential Developer CD ×
e-ラーニングプログラムのディスカウント × 他の特典を検討中
Palm OSプラットフォームニューズレター
Books 24x7割引
オンラインPalm OSマーケットリサーチ情報へのアクセス
Palm OSインフォメーションステーション
Palm OS Resource Pavilion Webサイト
※各項目の詳細な説明は「利用できるリソースとサービス」を参照

[@IT]:Palmでは、現在開発ツールを無償で提供していますが、有償で提供するツールなどの予定はないのでしょうか?

[矢内]:開発ツールと言っても、SDKと呼ばれるライブラリ、ヘッダファイル、サンプルコードあるいはドキュメントを無償で提供しています。コンパイラやリンカなどのビルド環境については、「CodeWarrior for Palm OS」(Metrowerks社)や「Satellite Forms」(Pumatech社)といった市販の開発ツールを使っていただくことにしています。

 また、フリーで使えるものとしては、GNUのCコンパイラがあります。

 現在、Palmは、CodeWarriorを開発者向けの推奨環境としています。これは、CodeWarriorの開発元であるMetrowerks社とは緊密な関係を結んだ結果です。今後PalmデバイスがARMベースへ移行することも考えると、コンパイラはコンパイラ専門の会社と緊密な関係を結ぶことで、いいものを提供していくことが、開発者にとって有益ではないかと考えています。

[@IT]:多くの開発者からPalmの開発環境はハードルが高い、簡単に開発できるツールがないといわれていると思います。また、追い上げてくるPocketPCにはEmbedded Visual Basicのような開発ツールがありますが、この辺はどのようにお考えでしょうか?

[矢内]:Visual Basicライクな環境としては、現在も「NS Basic/Palm」(NS Basic社)やSatellite Formsといったものが提供されており、日本語でのサポートも受けられるようになっています。Palmとしては、開発ツールの数などで後れを取っているとは思っていません。

 ただ、Visual Basic、またはVisual Basicライクな環境は、デベロッパ人口を増やす、デベロッパにとって使い慣れたツールをサポートするという意味で重要であると十分認識しています。まだ、具体的に提供時期などのお話しできないのですが、米本社ではVisual Basicライクな誰でも使える開発環境をPalmのツールとして提供するプロジェクトが動いています。

 また、今後Palmではエンタープライズ向け市場が重要で、エンタープライズ向けのツールを用意するのは重要なアクションプランとなっています。

[柳下]:先日行われた「Palm OS ソフトウェアコンテスト2001」では、NS Basicによる応募が予想以上に多かったです。これは、デベロッパ人口の増加を意味するものでしょう。NS Basicは。比較的安価※1なツールというだけでなく、書籍なども発売されているので、Visual Basicでアプリケーションを開発してきた方からみれば、やりやすかったと思います。

※1 編集部注:NS Basic/Palmの実売価格は1万5千円前後

[@IT]:エンタープライズ向け環境というと、どの辺から手を付けていくのでしょうか?

[柳下]:エンタープライズ向けのソリューションに必要なものの1つとして、セキュリティを挙げることができます。Palmデバイスにパスワードロックをかけて、紛失しても重要なデータを見られないようにするといったことだけではなく、Palmデバイスで入力した人が本人かどうかといったユーザー認証、VPNといった技術を提供する必要があると考えています。そういった基礎技術の上に、データベース連携や無線アクセスといったものが使われていきます。先日、米国で発表したRSA Data Security社との提携も基礎技術の向上を目的としています。

■年末から来春に向けての販売戦略は?

[@IT]:それでは、年末商戦に向けての販売戦略をお聞かせください。

[山辺]:ビジネスパーソナルなユーザー向けに、10月から「Documents To Go 4日本語版」※2をm500シリーズに標準でバンドルしています。また、16MbytesのSDカードもついてくるので、かなりお得になっています。

※2 編集部注:Document To Go 4日本語版は、米DataVis社が開発した、PalmとMicrosoft Word、Excel、PowerPointの互換を可能にする統合アプリケーション。Palm上で、Word/Excelのドキュメントの新規作成・編集も可能。

マーケティングディレクター
山辺仁美氏

 また、m500シリーズ向けに、ハギワラシスコムから通信アダプタ(Communication Card Adapter)が出たので、これまでPalmは通信が弱いといわれていたのを補えたと思っています。今後も、さらなる付加価値を加えていきます。

 市場が大きく変化する中で、Palmもこの変化に対応して、この業界のリーダーとしての地位を保持していこうと思っています。

[@IT]:米国では、m500シリーズはすでに値下げをしていますが。

[山辺]:そうですね。日本ではオープン価格のため、標準小売価格を設定していません。しかし、実際に店頭では5000円ほど安くなっており、さらにお買い求めやすくなっています。

 エンドユーザーの方は、ザウルスやPocketPC、Palmとたくさんの品ぞろえがあるのですが、どこが違うのかよく分かりません。しかし、会社で使っているOutlookやWord/Excelと連携できるということで、ビジネスパーソナルのツールとして明確に伝えていきたいと考えています。

 また、ソニーのCLIE、ザウルス、Pocket PCは正式にはMacintoshに対応していませんが、Palmは対応しています。「Documents To Go 4日本語版」もMacintosh対応版を提供しているということで、Macintoshユーザーからの評価も高いです。11月22日には、Macintosh版の「Palm Desktop2.6.3日本語版」のダウンロードもできるようになります。

[@IT]:価格の引き下げを行っている競合他社もありますが、価格競争に巻き込まれる可能性は?

[柳下]:Palmを何に使っていいのか分からない、どう使っていいのか分からないけれど、PDAは欲しい、という方は価格で選ぶ傾向があるかもしれません。基本的なアプリケーションが、スケジュールやコンタクト管理といったPIMアプリケーションのために、単なる電子手帳的に評価され、本来の製品の価値を過小評価されているようです。

 われわれとしては、本来の価値を理解していただきながら、市場を広げていくためにも、適切な価格設定をした上で、価値の訴求をしていく必要があると考えています。

日本トラストテクノロジーが12月1日から発売する「三省堂 デイリーコンサイス英和・和英・国語辞典

 今後は、価値を分かってもらえるようにするために、どんなシーンで使えるのかということにフォーカスしていきます。店頭でのデモ機に、自社のソフトだけではなく、サードパーティのアプリケーションを入れるなどして、どのように使えるのかをアピールしたいと思います。これも、1万を超えるサードパーティ・アプリケーションを有するPalmだからこそできるわけです。

 その中でも、辞書のニーズは高いと感じています。Palmが標準で提供している辞書では満足できないという方が多いようです。英和・英英だけではなく、独和や仏和などが必要という方もいらっしゃいます。そこで、最近、三省堂さんの辞書をマルチメディアカードで出すことになりました。

[@IT]:次に、企業向けについてはいかがでしょうか? こちらは年末というよりは年度末に向けてということになりますが。

TACが導入を決定した「Xiinoラーニング」の画面

[柳下]:営業マンの総合支援ツールとして、いかに使えるかを今年の後半からずっと提案し続けています。

 導入例の1つですが、ある製薬会社が自社のMR(販売担当者)2000名にPalmを持たせることになりました。いままでは、ノートパソコンを使っていたのですが、医療業界向けのCRMソフトとの連携を取れるようにシステムを組み上げました。実際のシステム稼働はこの11月からだと聞いています。

 多くの企業ユーザーは、事例を欲しがっています。実際、どのように使えるのかを知りたいということですね。

 先日も、イリンクスのWebブラウザXiinoを活用したeラーニングシステム「Xiinoラーニング」を、資格学校であるTACが導入することになりました。

■Palm OS 4.1アップグレードは?

[@IT]:最後になりますが、米国では、Palm OS 4.1のアップグレードキットの販売が始まりましたが、日本での予定はいかがでしょうか?

[柳下]:バージョンアップの方法などについては検討中です。日本のユーザーは、(1)既存アプリケーションが Palm OS 4.1上で正常動作することを事前に知りたい、(2)何か問題があったら、従来のバージョンに戻したい、という思いがとても強いと感じています。安心してバージョンアップしていただくためにも、デベロッパの方々にPalm OS 4.1での動作検証をしていただくことを最初に行いたいと考えています。

[@IT]:本日は、どうもありがとうございました。

[関連発表資料]
米Palm、新たなデベロッパープログラムを開始
パーム コンピューティング、Palm m500シリーズに「Documents To Go 4日本語版」を標準バンドル開始



 


 
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