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@IT > Master of IP Network > Mobile Connection > PalmとPC間のデータ同期技術を知る |
柳下剛利
従来の「紙の手帳」がシステム手帳になり、そして「レフィル」の追加でカスタマイズができるように進化したように、携帯情報端末(PDA)もスタンドアロンとしての「電子手帳」から、自分のスタイルに合ったアプリケーションを導入したり、PCのデータを「いつでも、どこでも」持ち運ぶことができるようになってきた。PDAにこの革新的な変化を最初にもたらしたものが「Palm Poweredハンドヘルド」であり、「HotSync技術」である。今回は、このHotSync技術を中心に、Palm PoweredハンドヘルドとPC/サーバとのデータ交換/同期技術について紹介する。
PC/サーバとハンドヘルドのデータ交換/同期技術には、デスクトップ型とサーバ/ゲートウェイ型の2つがある。デスクトップ型は1:1の同期であり、同期のためのソフトウェアを各PCにインストールする必要がある。また、サーバ/ゲートウェイ型は同時に複数のハンドヘルドとの同期を可能にするもので、TCP/IPベースのネットワークを介在するものがほとんどである。 まず最初に、デスクトップ型の同期技術について見ていこう。デスクトップ型同期技術の代表例がHotSync技術だ。HotSync技術は、拡張性を持った同期技術で、ハンドヘルドの標準機能として以下の機能を実現する。
これらの機能は、HotSyncマネージャと呼ばれるソフトウェアによって提供される。HotSyncマネージャは、ハンドヘルドに同梱されているPalm Desktopソフトウェアと一緒にインストールされるため、ハンドヘルドを購入すると直ちにこれらの機能を利用することができる。 PC常駐型のソフトウェアHotSyncマネージャの最新バージョン4.0(m500シリーズのCDよりリリース)は、従来のシリアル(ローカル シリアル、モデム)接続ならびに赤外線接続に加え、ローカル USB、ネットワークという新しい接続オプションが追加されている。ローカル USBは、バージョン4.0から正式にサポートされている。また、ネットワークは、TCP/IP経由でHotSyncマネージャが動作しているPCに接続する方法だ。
では、HotSyncマネージャはどのように動作しているのだろうか。その流れを見ていこう。
コンジット(Conduit)は、PC−ハンドヘルド間のデータ同期の中核モジュールで、アプリケーションごとに用意されている。コンジットは、WindowsではDLLで提供されており、HotSyncマネージャとSync Manager DLLと連携して同期処理を行う。ハンドヘルドとの通信は、Sync Manager DLLを介在して行うため、前述のさまざまな通信環境を意識することなく同期することができる。このコンジットはプラグインとして追加することができるため、サイボウズのグループウェアをはじめとして、さまざまなアプリケーションに対応することができる。
コンジットは、CDK(Conduit Development Kit)を使って開発することができ、Windows環境ではC/C++、Java、Visual Basicに対応し、Macintosh環境ではCodeWarriorに対応している。 コンジットの開発は、ハンドヘルド上のアプリケーション開発と関連するため、http://www.palmos.com/に掲載されている情報や書籍を参考にするといいだろう。
次にHotSync技術を活用した製品として、m500シリーズにバンドルされている、Chapura社の「PocketMirror」とプーマテック ジャパンの「Intellisync for Palm」を紹介する。 ■PocketMirror PocketMirrorは、ハンドヘルドとMicrosoft Outlook間のデータの同期をとるためのソフトウェアで、Outlookの[連絡先]、[予定表]、[仕事]および[メモ]を対象としている。この製品の特徴は、PocketMirrorの設定インターフェイスがOutlookにプラグインで統合されている点と、複数のPCからExchange Serverの同じメールボックスと同期することをサポートしている点にある。
Intellisync for PalmはPocketMirrorと同様に、アドレス帳、スケジュール、ToDoの同期を行うだけでなく、メールもサポートしている点が特徴だ。また、サポートしているPCアプリケーションがLotus Notes、Lotus Organizer、Outlook、Palm Desktopと多く、同期の方向を指定することができる点や、フィールドマッピングができる。筆者は、Lotus Notesの個人アドレス帳のデータをOutlookの連絡先に移行させるために、「Intellisync for Palm」を使い、フィールドマッピングの相違点にうまく対応することができた。
デスクトップ型の同期は、ホストPCとTCP/IPやシリアル、USBによって接続する必要があり、社外から同期をとるにはかなり制約が発生してしまい、現実的なソリューションとはいえなくなっている。これらの制約を解決したサーバ型の同期をサポートする製品が、出回り始めている。サーバ型の製品は、専用機をゲートウェイサーバとして設定する必要があるが、複数のユーザーを同時に処理することができる点、ネットワークセキュリティを意識すればインターネットを活用できる点が特徴となっている。 このサーバ型同期製品には、グループウェアをターゲットとした製品とRDBMSをターゲットとした製品の2種類がある。
今回は、IBM DB2 Everyplaceを例に、サーバ同期型のモデルを紹介する。先日、IBM DB2 Everyplace の最新バージョン7.2が発表されたが、ここでは7.1.1をベースに解説する。 DB2 Everyplaceは、ハンドヘルド上で動作するDB2 Everyplaceデータベース、同期処理を行うDB2 Everyplace同期サーバ、GUIによるアプリケーション開発環境DB2 Everyplaceパーソナルアプリケーションビルダーで構成されており、これ1つでモバイルDBアプリケーションを開発することができるようになっている。
「DB2 Everyplace同期サーバ」が動作するマシンには、DB2が動作しており、既存システム(ソースデータベース)のミラーデータベースが格納されている。このミラーデータベースとハンドヘルド上のデータベースが同期をし、その結果が既存システムの方へ反映されるという形態をとっている。また、同期処理もServletベースで行っているため、ミラーデータベースが稼動しているマシンを別にしてスケーラビリティを確保することもできるようになっている。また、最新のバージョンである7.2では、Windows NT/2000に加えて、AIXやSolaris、Linuxをサポートするとのことであり、サーバOSの面からもスケーラビリティを確保しているようである。
サーバ同期型のシステムの場合、インターネットを介在してアクセスさせるのであれば、ネットワークセキュリティをどう確保するかが重要な要素になる。一般的には、特定のTCPポートで同期処理をとるものが多いため、当該ポートをファイアウォールで穴をあけるなどの作業が必要になってくる。DB2 Everyplaceの場合、一般的なWebアプリケーションサーバの場合と同様に考えればいいだけでなく、ミラーデータベースでいったんきれるため、インターネットから直接社内のデータベースにアクセスしない点が優れている。また、ソースデータベース自身が他社のデータベースでも対応ができる点が特徴である。DB2 Everyplaceについては、評価版がCDに収録された書籍もあるので、モバイルDBシステムの構築を検討されている方は、一度チェックしてみるといいと思う。
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