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PalmでLANにダイレクトアクセス

柳下剛利
パームコンピューティング株式会社
2002/1/10



おもな内容
LANダイレクトアクセスのメリット
Ethernetクレードルを利用したダイレクトアクセス
赤外線LANアクセスシステムを使ったLANダイレクトアクセス
ダイアヤルアップ(RAS)接続とVPN
Palm OSのTCP/IP対応について

 最近、Palmハンドヘルドは、「ビジネスマン個人の生産性向上のためのツール」としての使い方だけでなく、「モバイルSFA(Sales Force Automation)/モバイルフィールドサービスのツール」としての使い方が増えてきている。このような使い方が増えてくると、PCにクレードル接続するという従来の接続方式ではなく、イーサネットやPHSによるLAN(イントラネット)へのダイレクトアクセスが重要視されてくる。そこで、今回は、Palmハンドヘルドのイントラネットへのダイレクトアクセスの方法について整理してみよう。

 LANダイレクトアクセスのメリット

 LANダイレクトアクセスのメリットは、「時間や距離を意識せずにどこからでもアクセスができる」という点にある。それでは、フィールドサービスの端末として使う場合を想定して、このメリットを整理してみよう。

 一般的に、事務所や営業所にフィールドマンと同数のPCが設置されていることは少ない。これは報告書(紙)ベースでレポートし、社内の事務員がPCに入力する形態を取ることで、フィールドマン全員にPCを配布する必要性がないためである。Palmハンドヘルドをフィールドサービスの端末に採用する理由は、この紙ベースの報告書を電子化することで入力の省力化/業務の効率化を実現することにある。しかし、現実は1人1台のPC環境ではないため、PalmハンドヘルドをLANに直接接続する環境が必要になってくる。というのも、HotSync技術では同時に1台のハンドヘルドとしかPCが通信処理ができないために、効率化のために導入したPalmハンドヘルドが逆に効率を悪くするケースがでてしまうからだ。

 代表的なLANダイレクトアクセスの方法には、以下のものがある。

  1. Ethernetクレードル
  2. 赤外線LANアクセスシステム
  3. 携帯電話・PHSなどによるダイヤルアップ接続(RAS)

 順に、それぞれの特徴を見ていこう。

 Ethernetクレードルを利用したダイレクトアクセス

 Ethernetクレードルとは、その名のとおり、Ethernetに接続するためのクレードルだ。クレードルから出力された信号(IrCOMMプロトコル)をEthernetのTCP/IPプロトコルに変換する機能を持ったゲートウェイとなっている。

PalmハンドヘルドをEthernetに接続するMobile Dox。同時にバッテリの充電も行える

 ここでは、シーエフ・カンパニーより発売されている「Mobile Dox」を例に挙げる。Mobile Doxは米Portsmith社の製品で、Palm m500シリーズやIIIcに対応している(別売の変換アダプタを利用することでVxにも対応)。Palmハンドヘルド側はケーブル接続として動作し、LAN側はDHCPクライアントとして動作するため、標準同梱のクレードルと異なりモデム的な要素が強い(標準同梱のクレードルの場合、クレードルのボタンを押すだけでHotSyncを開始するが、本製品の場合、後述の通信設定を事前に行う必要がある)。

■Mobile Doxを使ってHotSyncする

 HotSyncマネージャのバージョン4.0以降では、ネットワーク経由(TCP/IP)でHotSyncが可能だ。ネットワーク経由でのHotSyncを行うためのネットワーク設定の方法を整理する。

●基本は「ダイヤルアップネットワーク」
 Palmハンドヘルドの設定は、Windows PCのダイヤルアップネットワークのそれと同様に「接続デバイス」と「接続ネットワーク」の設定に分けられている。

 「接続デバイス」は、「環境設定」アプリケーションを実行し、右上のメニューから「接続」を選択して設定する。リストには、すでに登録されている接続デバイスの設定一覧が表示される(図1)。

図1 登録されている接続デバイスの一覧

 ここでは、[新規]ボタンをタップし、新規作成を行う。

  1. 接続名はネットワーク設定で参照される識別子。ここでは分かりやすく「Mobile Dox」と入力する(図2)。
  2. 接続先は、「PC」「モデム」「ローカルネットワーク」の3つから選択できる。ここでは「PC」を選択する(図2)。
  3. 媒体では、接続先との接続メディアを指定する。接続先が「PC」の場合、「クレードル/ケーブル」「赤外線」のいずれかを指定する。ここでは「クレードル/ケーブル」を選択する(図2)。
  4. [詳細]ボタンをタップし、通信速度やフロー制御について設定する。「速度」は接続メディアとの通信速度であり、「フロー制御」は接続メディアとの通信制御を指定する。、ここでは速度に「115,200bps」を、フロー制御に「自動」を選択する(図3)。
  5. [OK]ボタンを2回タップすれば設定が保存される(図4)。
図2 接続名と接続先、媒体を設定する 図3 通信速度などを設定する 図4 Mobile Doxの設定が保存された

 次に「環境設定」アプリケーションの右上のメニューから「ネットワーク」を指定して、「接続ネットワーク」の設定を行う。Palmハンドヘルドは、このネットワーク設定で表示された内容に従い接続するが、複数のアクセスポイントを登録している場合は、「サービス」から選択するようになっている。ここではサービスを新規に登録する。

  1. メニューから「新規」を実行する。
  2. サービスには、エントリーを分かりやすく指定する。ここでは「Intranet」と入力する。
  3. ユーザ名パスワードには、本来はPPP/SLIPで接続する場合のアカウント情報を入力するが、今回は何も入力しない。理由はDHCPクライアントによってIPアドレスが取得されるためである。
  4. 接続では、すでに登録されているリストから本エントリが利用するアクセスを選択する。ここではリストから「Mobile Dox」を選択する(図5)。
  5. [詳細]ボタンをタップする。接続タイプは「PPP」、切断までの時間(アイドル/無通信のタイムアウト)は「なし」を設定する(図6)。
  6. クエリーDNSIPアドレスの項目は、共にチェックする。
図5 ネットワークのエントリ設定。接続には先ほど登録した「Mobile Dox」を選択 図6 PPPの設定で、切断までの時間は「なし」にする

 次にネットワーク経由のHotSyncの設定を行う。これは、PalmハンドヘルドとホストPCの両方で行う必要がある。

●ネットワーク経由のHotSyncの設定(Palmハンドヘルド側)
 ネットワーク経由のHotSyncは、モデム経由のHotSyncの応用となっている。設定は「HotSync」アプリケーションから行う。

  1. 「オプション」メニューから「モデムHotSyncの設定」を選択する。ネットワークをタップして、ネットワーク経由のHotSyncの設定を行う(図7)。
  2. 「オプション」メニューから「LANSyncの設定」を選択する。LANSyncが選択されていることを確認する(図8)。
  3. 「オプション」メニューから「プライマリパソコンの設定」を選択する。HotSyncマネージャーが動作しているホストPCのアドレス情報を入力する(図9)。
  4. HotSyncの設定は「モデム」を選択し、モデム経由に設定する。その際にネットワークリストから「Intranet」を選択する(図10)。
図7 「ネットワーク」を選択し、ネットワーク経由のHotSyncの設定を行う 図8 「LANSync」を選択する 図9 接続するPCのアドレス情報などを入力する
   
図10 「モデム」を選択してHotSyncを行う    

●ネットワーク経由のHotSyncの設定(ホストPC側)
 ホストPC側の設定は、HotSyncマネージャで行う。

  1. HotSyncマネージャーのメニューで「ネットワーク」をチェックする。
  2. メニューから「起動/接続設定」を実行し、「ネットワーク」タブを選択する。ここではネットワーク経由のHotSyncを行うユーザーの指定と、ホストPCのTCP/IPアドレスの設定を確認する。このアドレス情報が、ハンドヘルドの設定にも反映されている必要がある。
 赤外線LANアクセスシステムを使ったLANダイレクトアクセス

 赤外線LANアクセスシステムを使ったLANダイレクトアクセスの特徴について、Ethernetクレードル経由との相違点から整理していこう。

  1. Palmハンドヘルドの機種を選ばない
    Ethernetクレードルは「コネクタ」に依存することもあり、対応していないデバイスがある。これに対して、赤外線LANはPalmハンドヘルドに共通のインターフェイスである赤外線(IrDA)を採用しているため、機種を選ばない
  2. ホットスポットサービスを利用できる
    Palmハンドヘルドの機種を選ばないので、ホットスポットサービスとして利用できる。例えば、キンコーズ( コピー、名刺作成、印刷、製本、コンピューターサービス、写真現像など多岐にわたる事務サービスを24時間提供している)では、一部の店舗で赤外線LANを使ったホットスポットサービスを提供している
  3. LANの中では低速であるが同時に複数のハンドヘルドを処理できる
    標準的なLANの速度は10/100Mbpsであるが、赤外線LANシステムとハンドヘルド間の通信に依存するため、最高4Mbps程度の速度となってしまう。しかし、複数ポートを同時に収容(赤外線モジュールを複数接続)できるため、フィールドサービス端末とのインターフェイスに使いやすい

 このような特徴を持っているので、それぞれの特性に合わせてシステムを選択するといいだろう。

 具体的な製品としては、Clarinet Systems社の「EthIRシリーズ」があり、国内ではTORICAおよび兼松コミュニケーションズが扱っている。

 ダイヤルアップ(RAS)接続とVPN

 次に社外からのネットワークアクセスについて整理しよう。社外からのネットワークアクセスといえばRAS(Remote Access Service)接続になる。RAS接続の場合は、直接電話をかける形態であり、通信料定額/準定額制のサービスのメリットを享受するためには、通信事業者が提供するサービスを導入する必要がある。最近ではADSLを使って自宅からアクセスするケースも想定されるため、包括的な手段としてVPN(Virtual Private Network)が注目されている。ここではPalmハンドヘルドのVPN機能について簡単に紹介する。

 カナダCerticom社より出荷されている「movianVPN」がそれだ。Certicom社はインターネットセキュリティ製品を出荷している企業で、彼らの楕円暗号技術はPalmハンドヘルドで使われており、具体的には、イリンクス社のWebブラウザ「Xiino」や「Webクリッピング」で採用されている。movianVPNは、CISCOをはじめとしたVPN Gatewayに対応しているだけでなく、設定も容易だ。同社のサイトにて評価版が提供されているので、これらのVPN Gatewayをすでに導入している企業は評価してみたらどうだろうか。

 Palm OSのTCP/IP対応について

 最後にPalm OSのTCP/IPへの対応について述べておこう。ビジネスソリューションの一部としてPalmハンドヘルドを見た場合、Web技術の活用が重要視されている。これは定額/準定額制のデータアクセス料金を背景に、既存イントラネット環境にアクセスさせることで開発・展開の時間を短縮できるためである。これらの要望に対して、Palm OSはいくつかの回答を提供している。

■「Webアプリケーション開発」の視点から

 「Palmの新サービスWebクリッピングとは?」で、PalmハンドヘルドのWeb技術であるWebクリッピングを紹介した。すでに凸版印刷によるPDA専用のコンテンツセレクトショップ「@irBitway(エアビットウェイ)」やソリマチ技研の「QuickPlus」のように、既存の基幹アプリをサポートする製品がリリースされており、今後も増えてくることが容易に想像できる。

 また、iモードサイトを表示できるブラウザとして、NTT データポケットの「WonderPortlet Pocket」や北海道日本電気ソフトウェアの「iディスプレイ for Palm OS」がリリースされている。これらは、iモードのタグをすべてサポートしているわけではないが、軽微な修正でiモード対応のアプリケーションをPalmハンドヘルドでも利用できるようになる。これらについては別の機会で紹介していきたい。

■「Palmwareの開発」の視点から

 Palmware開発の必需品であるSDKには、以下のとおりさまざまなAPIが提供されている。

  • Net Library
     TCPやUDPなどを使って通信するためのライブラリ。インターフェイスにはPPPやSLIPを選択することができる。SMTPやHTTPなどのプロトコルは本ライブラリを使って実装する必要があるが、ターゲットと直接通信することが可能。
  • Internet Library
     Webクリッピング技術で採用しているViewerアプリケーションと連携してコンテンツアクセスするためのライブラリ。URLを指定するだけでアクセスできるためアプリケーション開発が容易。

 HTTPやHTTPSは、従来Net Libraryを使って独自に開発する必要があったが、Internet Libraryを活用することで、Webクリッピング技術に依存してしまうものの、本来のアプリケーション開発に注力することができる。2002年2月(米国)、3月(日本)に実施される開発者向けカンファレンスであるPalmSourceでは、アプリケーション開発の最新情報(Webクリッピング技術の動向も含めて)が提供されると思われ、要注目である。



 


 
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