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IFRS最前線(6)

リースor購入どっちがおトク!?
煩雑化するリース会計攻略法を探る

林恭子
ダイヤモンド・オンライン
2010/7/8

メリットが理解され、企業で広く利用されている「リース」。IFRSの適用によってそのメリットがデメリットに変わる可能性がある。リースと購入ではどちらがいいのか。煩雑化するリース会計の攻略法を探る(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年2月4日)。

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資産のオンバランス化で
リース離れが進む!?

 例外処理が認められなくなることによって、どのような影響が及んだのだろうか。多くのメディアなどで取り沙汰されている懸念は、資産・債務がオンバランスされることによって、“財務諸表の見た目”が悪くなるという影響だ。

 リース会計の例外処理による賃貸借処理では、資産はオフバランスとなる。そのため、リース資産を簿外資産とすることによって総資産、つまり企業の業績を示す重要な指標の1つである「総資産利益率」(ROA)をよく見せることができたのだ。しかし、新リース会計基準では資産がオンバランスされることにより、資産膨張と利益率の減少を招くため、「いっそ購入してしまおう」と考える企業が増え、リース需要が減ったと言われている。

 だがこれに関して、三井住友ファイナンス&リースの山邊執行役員は、「確かに、新リース会計基準によってリース会社が受けた悪影響はゼロではない。しかし、その理由はオフバランスが問題ではない」と反論する。

 その理由は、「例外処理によってリース資産・債務がオフバランス化されていたと言っても、注記によってリース資産はこれまでも記載されていた。ROAなどの指標が悪くなり、金融機関からの資金調達が困難になるというのは、表面上のことにすぎない。金融機関関係者であれば、注記情報も考慮しているため、誤解を与えることはない」(山邊執行役員)からだ。

 では、何がリース需要に影響を及ぼしたのだろうか。それは、「手間がかかることを非常に懸念し、リースを止めようという判断をした顧客もいる」(山邊執行役員)というように、何よりも手間が最大の問題になっていることだ。

 これまでは、単に賃借料を損益計算書に計上しておけばよかったにもかかわらず、資産計上、減価償却、減損が必要になれば、“簡便さ”というリースの魅力がなくなってしまう。それなら、「自分で借金をして設備投資した方がマシ」と関係者が考えるのも、無理はない。

 しかし現在、賃貸借処理をする例外処理はなくなったものの、重要性基準によって簡便処理が認められているのが唯一の救いだ。現行の日本リース会計基準では、所有権移転外ファイナンス・リースに関して、「一契約のリース料総額が300万円以下のリース取引(ただし、企業の事業内容に照らしてその取引の重要性を判断する必要あり)」ならば、賃貸借処理が認められている。

 また、売買処理には、簡便処理が求められており、1契約あたりのリース料が300万を超えていても、リース比率が10%未満に留まり、「リース資産総額に重要性がない」と認められる場合は、簡便処理が認められている。そうした影響もあり、新リース会計基準によって「業界や周辺が想定したほどリース需要が減ることはなかった」(野村パートナー)ようだ。

IFRSで規則主義から原則主義へ
重要性の判定も自社で行うことに……

 では、IFRSに変更になれば、さらに基準はどう変わるのだろうか。あまり変化はないと言われているが、手間という点から言えば、さらに大変になることは間違いなさそうだ。

 まず、これまで所有権移転外ファイナンス・リースの簡便的な処理を認める「重要性の基準」がなくなってしまう懸念があると言われている。機械的に「300万円」や「10%基準」というものが使えなくなってしまうのである。

 第1回でも述べたように、日本基準の規則主義に対して、IFRSでは原則主義による会計処理が求められる。つまり、個々の企業が自らの実態に即した会計指針を決めて、処理を行なうことになる。重要性の判定も自社で行なわなければならず、それもまた煩雑な作業になりかねない。

 さらにもう1点、大きく変わるのが、これまで賃貸借処理を行ってきたオペレーティング・リースに関しても、資産と負債をオンバランスすることが求められるようになることだ。オペレーティングリースのオンバランス化による資産の膨張は、「リース自体のメリットがファイナンス・リースより大きいため、需要減への懸念はそれほど大きくない」(野村パートナー)というが、賃貸借処理という簡単な処理だけでよかったにもかかわらず、これに関しても非常に手間がかかることになる。

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