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IFRS最前線(11)

IFRS導入前から進む「不動産評価」の国際化
企業が頼みにする“虎の子”の実態が丸裸に?

小尾拓也
ダイヤモンド・オンライン
2010/10/28

不動産の評価にも大きな影響を与えるIFRS。特に投資用の不動産には、かなり厳密な「公正価値評価」が求められる。だが、今から時価会計を心がけている企業なら、恐れることはない(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年4月15日)。

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IFRSでは事業用と投資用で
評価基準が変わる

 IFRSの導入によって不動産評価の考え方はどう変わるのか? 詳しく説明しよう。

 企業が持つ不動産には、大きく分けて、オフィスビル、店舗、倉庫、工場など、直接ビジネスに用いられる「事業用不動産」と、賃貸収入やキャピタル・ゲインを得る目的で保有される「投資用不動産」の2つがある。

 日本の会計では、事業用不動産は原則としてB/S(貸借対照表)上の「有形固定資産」に、投資用不動産は同じく「投資その他の資産」にそれぞれ計上されていた。それがIFRSに変わると、これらの不動産の価値は、「財政状態計算書」の「事業」という項目の中に設けられた「営業」「投資」などの科目に計上されるようになる。

 詳しくは後述するが、資産評価の方法によっては、不動産の評価が「包括利益計算書」にも反映される。そのため、不動産の価値が取得時より大きく目減りしていれば、企業の収益そのものに直接影響が出ることになるというわけだ。

 「そもそも、立地、用途、収益性など、あらゆる条件を考慮しなければならない不動産の評価は、煩雑で難しいもの。今後は不動産鑑定士などによる綿密な鑑定が必要になる機会が増えるため、企業は手間やコストがかなり増えるのではないか……」

 ある企業コンサルタントは、クライアントからこのような不安を打ち明けられるケースが増えたという。

 では、評価基準は具体的にどう変わるのか? 実は事業用不動産と投資用不動産では、選択できる基準がそれぞれ異なる。

 まず、事業用不動産の評価については、「原価基準」と「再評価基準」とのどちらかを選択することになる。「原価基準」とは、不動産を取得原価、つまり簿価で評価すること。また「再評価基準」とは、より公正な価値、つまり時価で再評価することである。

 ポイントは、「再評価基準」を選んだ場合、企業の負担がアップする可能性があることだ。「再評価基準」では、再評価によって評価差損が生じると、それを損益に計上しなければならない。また、これまで法定耐用年数を基にしていた減価償却の基準も一緒に見直さなければならない。それには、手間もコストもかかる。

 そのため、「IFRSが強制適用されると、ほとんどの企業がこれまでのやり方を大きく変える必要がない原価主義を選ぶのでは」と、企業コンサルタントは予想する。

 ただし、事業用不動産においては、減損後に不動産の価値が回復した場合は、「減損損失の戻し入れ」が可能になる。これは、日本基準では認められていなかった考え方だ。企業にとって有利になる場合も不利になる場合も、「限りなく実態に近い評価」を旨とするIFRSの精神が垣間見えるというものだ。

注意すべきはむしろ「投資用不動産」
公正価値モデルでも“注記”が必要に

 一方で、より影響が大きいと思われるのが、投資用不動産の評価基準である。多くの企業関係者が不安視しているのは、主にこちらのほうだ。

 投資用不動産の評価においては、「公正価値モデル」と「原価モデル」のいずれかを選択することになる。「公正価値モデル」とは、所有する全ての不動産を公正価値(第三者間での取引価格)で評価し、評価差益や差損を損益に計上する考え方。それに対して「原価モデル」とは、取得原価で評価する考え方だ。

 「それなら、投資用不動産も原価モデルを選べばいいじゃないか」と思う人もいるだろうが、そう甘くはない。事業用不動産とは違い、財務諸表への表記は取得原価でOKでも、「注記」で公正価値を記載することが義務づけられるからだ。

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