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IFRS最前線(15)

日本企業に迫られた“会計の国際化”という発想

林恭子
ダイヤモンド・オンライン
2011/2/24

2015年または2016年といわれるIFRSの適用に向けて、日本基準のコンバージェンスが進んでいる。そのなかでも早期からコンバージェンスが行われてきたものの1つが、「棚卸資産」をめぐる会計方針だ(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年6月24日)。

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損益計算よりも資産・負債重視
会計の発想も“国際化”が迫られる

 「“低価法”の一本化」や「後入先出法の廃止」の背景には、ここまで述べてきたようにデメリットをなくすという目的がある。ただし、廃止にはデメリットだけではなく、日本基準とは異なるIFRSならではの思想も大きく作用している。

 その思想が端的に現れている例が、後入先出法によって「期末時点での棚卸資産の価値が時価から乖離し、実態に即さないものとなってしまう可能性が高いこと」を懸念することだ。

 なぜこれがIFRSならではの思想を現したものなのだろうか。そして、日本基準とIFRSの思想の差とは一体何なのか。

 日本では、収益から費用を引いたものが期間損益となり、それを内部留保して資産に溜め込んでいくという発想の「収益費用アプローチ」がこれまで取られてきた。その影響で日本企業の多くは、伝統的に期間の売り上げや利益を重視してきたフロー(費用収益)中心思考であった。先ほど紹介した石油業界でも、相場に合った利益の確保を意識しており、それこそが「実態にあった決算」に結び付くと考えていたのはそのためだ。

 それに対し、IFRSでは資産から負債を引いた純資産が期首から期末までにどれだけ増えたかを見る「資産負債アプローチ」を採用しており、日本とは利益に対する考え方が全く違う。

 また、IFRSは将来情報に資する財務諸表を作成し、企業価値を測定することに重きを置いている。そのため、棚卸資産そのものの評価が時価にあっているのかどうかが重視され、昔の単価のままの在庫が残る後入先出法も、時価と乖離しているかもしれない帳簿価額をそのまま使う原価法は相応しくないとされているのだ。

 後入先出法はごく限られた業界でのみ使われていた方法ではあるが、廃止はこのIFRSならではの発想が最も反映された会計方針変更の1つだと言える。

 後入先出法廃止の影響を受ける企業は多くはないと思われるが、数多の日本の経営者からすると、「当期の利益計算よりも資産の評価に重きを置け」というのは違和感が大きいかもしれない。

 とはいえ、いずれ迎えることになるであろうIFRSの適用によってこうした違和感を突然覚えないためにも、会計方針のコンバージェンスは進み、着々と準備が行われている。各企業が、急激に事業の国際化を進めているのと同様に、会計に対する発想も徐々に国際化していく必要に迫られているのかもしれない。

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