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IFRS最前線(17)

IFRSの「初度適用」という落とし穴

小尾拓也
ダイヤモンド・オンライン
2011/4/21

「IFRS適用までにはまだ時間があるから……」。そう考えて準備を怠っている企業は、要注意。実は企業がIFRSを適用する際には、「初度適用」という思わぬ落とし穴があるからだ(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年7月22日)。

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例外ルールはあるものの
前倒しの対応が必要不可欠

 一方、日本基準とIFRSの間には、収益、不動産、リース、のれん、退職給付といった様々な会計項目について、大きな認識の差異がある。初年度にそれらを過去に遡って計算し直さなくてはならないため、一筋縄ではいかないことも多そうだ。

 特に不安視されているのが、製造業やリース業のように多くの固定資産を抱える企業だ。企業によっては、「不動産の台帳データの中身がいい加減」というところも少なくないだろう。取得原価が曖昧な不動産などにいたっては、「過去に遡って正しい時価で計算し直すことなどできるのか」という疑問もわいてくる。

 もちろん、不動産、従業員給付、為替換算調整勘定、金融商品、企業結合といった一部の基準の再計算については、作業を簡素化するための例外ルール(免除規定)が設けられているため、不安ばかりを募らせる必要はない。

 だがそうは言っても、原則としてほとんどの資産や負債を遡って見直さなくてはならないことに、変わりはない。初度適用にスムーズに対応するために、企業は今から周到に準備を進めておいたほうがよいだろう。

 そもそも企業がIFRSを適用する目的は、国際社会でも通用する透明性の高い企業になり、ステークホルダーの支持を得て、将来の経営基盤をより磐石にすることに他ならない。そのための「王道」は存在しないことを、心得ておくべきだ。

 IFRSに対応する上で不安はあまたあるが、初度適用はそのうちの1つに過ぎない「小さな落とし穴」かもしれない。だが、事前対応の巧拙を含めて、企業の心構えが試される試金石とも言えるのだ。

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