IFRS最前線(18)
航空会社や家電量販店が受けるIFRSの意外な余波
林恭子
ダイヤモンド・オンライン
2011/5/25
我々の生活に定着してきた「ポイント」だが、数年後、多くの企業がその運営を見直すことになるかもしれない。というのも、国際会計基準の導入がポイント会計、ひいては制度の運営に大きな影響を及ぼすからだ(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年8月26日)。
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あなたのお財布には、一体何枚のポイントカードが入っているだろうか。航空会社のマイレージ、家電量販店のポイントカード、レンタルビデオ店や小売・外食チェーンなどで共通に使えるポイントカードまで、改めて調べてみればその数は想像以上に多いはずだ。
日本には様々な「ポイント」が溢れ、それは我々の生活に定着してきた。しかし、2015年または2016年、あなたの財布を圧迫している数多くのポイントカードは、何枚も姿を消すことになるかもしれない。
なぜなら、前回まで紹介してきた国際会計基準(IFRS)の導入が、日本のポイント会計、ひいてはポイント制度の運営自体に大きな影響を及ぼすからだ。
今回は、日本基準とIFRSにおけるポイント会計の違いと、IFRSの適用によって日本のポイント制度がどのような影響を受けるのか、具体的に見ていくことにしよう。
「将来発生する費用の引当」と見る日本と
「収益の繰延」と考えるIFRS
日本には、ポイント制度を採用する企業が多数存在している。しかし、実はポイントに関する会計処理の基準は存在していないのが現状だ。そのため各企業は、慣例的に「ある会計処理」を行ってきた。それは、ポイントを将来の費用として、引当金計上する方法である。
ポイントが付与された段階では会計処理は行わず、決算期末時に、顧客がポイントを将来行使して、商品などを購入したときに発生するコストを見積もり、引当金として計上する。その際、将来のポイント行使の確率を過去の実績から求めることが必要となる。
たとえば、期末時点で100ポイント(100円分)が残高としてあり、過去の実績から50%が行使されるとしよう。すると、「100ポイント×50%(行使の確率)=50ポイント」が翌期に見込まれるポイントになる。そして原価率が70%とすると、引当金処理されるのは「50ポイント×原価率70%=35円」のコストとなり、期末に計上される。
一方のIFRSでは、厳密にポイント会計処理の方法が定められている。IFRSの解釈指針設定機関である国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)が、2007年にポイント会計に関する解釈指針「IFRIC第13号」(カスタマーロイヤリティプログラムの会計処理)を公表。そのなかで、ポイントは「収益の繰延」(日本のように「費用」ではない)と認識され、「繰り延べる収益は公正価値で測定される」と定められた。
これによって、IFRSではポイントが付与される時点で、「繰延収益」として計上されることになった。その際、公正価値の測定を各社が行い、予想される引換率から繰延収益を割り出さなければならない。そして、実際にポイントが使用されたときやポイントの有効期限が切れた時点で繰延収益は取り崩され、正式に売上が計上されることになる。