
IFRS最前線(20)
韓国勢に負ける? 会計グローバル化に遅れた日本企業
林恭子
ダイヤモンド・オンライン
2011/7/21
2005年にEUが適用を義務付けて以来、「世界標準」ともなりつつある国際会計基準(IFRS)。日本は2015年または2016年ともいわれる強制適用に向けて動き始めているが、韓国は2011年に強制適用と一歩先へ進んでいる(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年11月18日)。
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IFRSは「会計の共通言語」
日本が国際化するチャンスだ
日本企業の現状に対して、鹿島氏はこう警鐘を鳴らす。
「現在、多くの日本企業は、海外の関連会社と決算期がずれており、システムも会社ごとにバラバラの状態だ。そのために生じる『間接コスト』が大きいだけでなく、ズレを解消するための統一作業に時間がかかるため、経営の意思決定が遅れてしまうという側面がある。これでは、海外の競合他社に遅れをとってしまう」
日本企業と韓国企業の両面を知るチョン氏は、日本企業の良さを評価しながらも、韓国企業と比べた場合の取り組みの遅さを指摘する。
「確かに日本人は世界に誇れる素晴らしい技術を持っている。しかし、日本人は『分析』に時間をかけすぎていて、スピード感がない。それでは、スピードがありアグレッシブな韓国に負けてしまう」
確かに、日本人が時間をかけて行なう『分析』はリスクヘッジのためにも大切な行為だ。しかし、商品サイクルが急激に短くなり、スピードが求められる時代においては、「動かないことこそがリスク」にもなりかねない。
IFRSは初めてできた「会計の共通言語」である。もはや日本は、自国のマーケットだけを対象に資金調達を行なっていては、生き残ることができない。日本市場だけを対象にビジネスをしてきた今までは、肌感覚で意思決定や戦略を練ることができたかもしれない。しかし、これからの敵は国内ではなく海外にある。海外マーケットは、もはや肌感覚でどうにかなる市場ではなく、タイムリーなデータによって即座に対応、意思決定ができないと太刀打ちできない相手だ。
日本企業は、意思決定を迅速に行なう会計基準の統一、システムの統一など、インフラ整備を怠ってはいけない。
IFRS適用には、確かに大変な準備や多額のコストが必要となる。しかしこれは、アジア通貨危機などの経済危機を経ても国際化のタイミングを逸してきた日本にとって、「最後のチャンス」と考えることもできる。日本企業の経営者たちは、このチャンスを逃さず、今度こそ国際化へのきっかけをつくるべきではないだろうか。

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