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連載:監査法人に聞くIFRSのコツ(1)

PwC Japan「IFRSのチャンピオンを育てましょう」

垣内郁栄

IFRS 国際会計基準フォーラム

2010/1/7

IFRSの任意適用が決まり、企業の財務・会計プロセスをサポートする監査法人がIFRS適用支援のサービスを活発化している。新連載「監査法人に聞くIFRSのコツ」では、各監査法人のIFRS適用支援サービス担当者に聞いたIFRS適用に向けてのポイントをお届けする。第1弾は、あらた監査法人を中心とするプライスウォーターハウスクーパース ジャパン。

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 プライスウォーターハウスクーパース ジャパン(PwC Japan)は複数のファームが連携して顧客企業のIFRS適用を支援している。中心となるのは、あらた監査法人と、コンサルティングファームのプライスウォーターハウスクーパース株式会社だ。

 後者のプライスウォーターハウスクーパース株式会社は、PwC アドバイザリーとプライスウォーターハウスクーパース コンサルタント(旧ベリングポイント)、プライスウォーターハウスクーパース HRSの3社が統合し、2010年1月1日に誕生した企業(参考記事)。監査業務に加えて、経営コンサルティングやM&Aや事業再生などのアドバイザリー業務、ITコンサルティング、システム導入まで、カバーエリアの広さがPwC Japanの特徴だ。

 PwC JapanのIFRSプロジェクト室リーダーで、あらた監査法人のパートナー 木内仁志氏、同サブリーダーで、プライスウォーターハウスクーパース株式会社のパートナー 服部基之氏、同じく同社パートナーでIFRSプロジェクト室に所属する鹿島章氏(いずれも公認会計士)に、PwC JapanのIFRS適用支援について聞いた。

欧州、韓国の経験を生かす

――IFRSプロジェクト室のメンバー構成を教えてください。

木内氏 PwC Japanでは、IFRSプロジェクト室を中心にIFRS関連サービス全般を提供しています。プロジェクト室は約10人で構成されていますが、実際にサービスを提供するというよりは、活動全般を統括するコックピットのような役割を果たしています。具体的にはPwC Japanとしてのサービス全般の方向性の決定や、各部署への指示、外部への情報発信などです。PwC Japanではプロジェクト室以外に「IFRS ACS」「財務報告アドバイザリー」「IFRS業種別スペシャリスト」「IFRS業務改善システム対応」「IFRS対応プロフェッショナル」の各チームにおいて、それぞれが専門性を発揮し、総勢2000人体制でIFRS関連サービスの提供に取り組んでいます。

 前述の「ACS」とはアカウンティング・コンサルティング・サービスの略で、会計専門家が集まる監査法人の中でも会計について特に高いスキルを持つメンバーを集約し、会計上の解釈に関するレビューやIFRS財務諸表のレビューなどを行っています。財務報告アドバイザリーはIFRSおよびコンバージョンのスペシャリストで構成され、IFRSの導入を直接サポートしています。IFRS対応プロフェッショナルはIFRSの実務経験を有し、IFRSに関する研修を受講したプロフェッショナル1200人が、監査と同時にIFRS対応も支援しています。業種別スペシャリストは、IFRS導入における業種ごとの特徴を把握した上で、適切なアドバイスを行います。業務改善システム対応のメンバーは、主にプライスウォーターハウスクーパースに所属するコンサルタント約500人で構成されており、財務報告関連の業務プロセスやシステム、内部統制などのサポートを実施しています。

 さらにIFRSプロジェクト室で特徴的なのは、欧州デスクと韓国デスクを有していることです。IFRS適用に当たっては、すでにIFRSを適用している、あるいは適用プロセスを先行している企業の事例が重要となります。PwC Japanでは、欧州でIFRSの適用事例を経験したメンバーが在籍しているほか、企業の歴史や風土が日本と近い韓国での経験者も有しています。韓国は2011年から強制適用が始まりますので、プロジェクトがいま最終段階を迎えているところですね。

会計処理だけの一方通行ではダメ

――サービスの特徴は何でしょうか。

木内氏 1つ目は、監査法人とプライスウォーターハウスクーパース株式会社が協働し、一丸となってサービスを提供できる点です。これはとても重要だと考えています。IFRSの導入は会計処理の変更だけでなく、その周辺の業務プロセスやITシステムにも影響を与えます。会計処理が決まればそのほかの処理が決まるという一方通行ではなく、業務プロセスやITシステムの両方をにらみながら会計処理を決めていく必要があり、1つのチームの中に会計と業務プロセス、ITの専門家がいることで、初めて的確なアドバイスができます。

 2つ目は、グローバルリソースの活用です。PwC Japanを構成する各法人は、世界151カ国757都市に16万3000人を擁するプライスウォーターハウスクーパースのメンバーファームです。このため、海外のメンバーファームと緊密に連携することで、豊富な経験やスキルを共有することができるのです。この2つが大きな特長であると考えています。

 さらに、IFRS適用に当たっては、企業の方々のスキルアップを重視するということも特長の1つといえるでしょう。IFRSの導入は適用時のみの一時的なプロジェクトではなく、IFRSを導入後も継続的に対応していかなければならないため、企業の方々のスキルアップは必須です。スキルアップによって初めてプロジェクトをスムーズに推進することができると思いますし、早い段階で企業の方々のスキルアップを図ることが回り道のようで実は近道だと思っています。IFRSのそれぞれの項目が具体的に企業の実務にどう結びついてくるのか、実務における課題を考えながら学んでいくことが必要です。そのため、スキルアップはどちらかというとディスカッションベースで行っています。

PwC Japanの鹿島章氏、木内仁志氏、服部基之氏(左から)

この2〜3カ月で流れが変わった

――日本でのこれまでの実績を教えてください。

木内氏 国内ですでにIFRS適用プロジェクトを支援している企業がいくつかあります。また、会計マニュアルの作成や、予備調査、勉強会などのサポートを提供している企業も多くあります。

 少し前までは強制適用まで待つという企業が多かったのですが、この2〜3カ月で何らかの対応を始めようという企業が増えてきました。その中には、もともと早期適用は考えていなかったが、トップマネジメントが早期適用を望んだことでプロジェクトを始動したという企業もあります。この2〜3カ月で流れが変わり、関心度が高くなってきました。

服部氏 来期の予算取りのタイミングの時期で、IFRS関連でどのくらいの予算を見込めばいいのか、スケジュールがほしいという声があります。ただ、単純にスケジュールのみを提示することは難しいので、その前に調査をしたり、勉強会を行ったりしています。

鹿島氏 IFRSをきっかけにしてグループの経営管理を高度化したい、という企業が比較的早めに動いています。IFRSだけで終わらせたくないという企業が多いですね。日本企業がこれまで弱かった、勘定科目のグループ内での統一化や、レポートの標準化などがIFRSで可能になります。経営管理の質を上げるという意味でも、IFRSを積極的に活用したいという声を耳にします。

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