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金融庁が中間報告案、任意適用は2010年3月期から

国際会計基準、強制適用は2015〜16年 段階適用の可能性も

2009/06/11

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 国際会計基準(国際財務報告基準、IFRS)の2010年度3月期からの任意適用はほぼ確定、強制適用は2015年また2016年に開始。しかし、一部企業からの段階適用もあり得る――金融庁の企業会計審議会 企画調整部会が6月11日に公表した「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告・案)」の内容をまとめるとこうだ。今年2月に公表された公開草案と比較すると任意適用については記載がより明確になったが、強制適用については将来の判断に幅を持たせたといえるだろう。

 中間報告案は同日の企画調整部会で承認。6月下旬に開催される企業会計審議会で確定した後に金融庁告示が公表され、実際にIFRSの導入が始まる見込みだ。

ifrs01.jpg 会見する金融庁 企業会計審議会 企画調整部会の部会長 安藤英義氏(専修大学教授)

任意適用に3つの前提条件

 公開された中間報告案は大筋では2月の公開草案と同じ。しかし、任意適用については「2010年3月期の年度から任意適用を認めることが適当である」と公開草案よりも明確に記した。任意適用を認める企業の要件についても明確化し、「国際的財務・事業活動を行っている企業」として、そのような「企業の連結財務諸表(およびその上場子会社の連結財務諸表)を対象」とした。公開草案では「国際的な財務活動を行っている企業または市場において十分周知されている一定規模以上の企業」を対象としていた。

 実は公開草案の条件では対象企業が千数百社になる可能性があった。しかし、中間報告案ではその対象は10数社に減る。その中で実際に2010年3月期にIFRSで連結財務諸表を出す企業は数社になると見られる。その理由は条件の厳しさにある。

 中間報告案ではIFRSの任意適用を認める企業として前述どおり「国際的財務・事業活動を行っている企業」としているが、その前提条件も記載されている。それは「継続的に適正な財務諸表が作成・開示されている上場企業」かつ「IFRSによる財務報告について適切な体制を整備」し、「IFRSに基づく社内の会計処理方法のマニュアル等を定め、有価証券報告書等で開示している」の3つだ。金融庁の総務企画局 企業開示課長 三井秀範氏は、このうち「IFRSによる財務報告について適切な体制を整備」の条件が「一番ハードルが高い」と指摘する。

 三井氏によると「IFRSによる財務報告について適切な体制を整備」の意味は、IFRS初年度の前年度の期首時点での貸借対照表を、IFRSベースで出せることだ。これは「IFRSの初度適用」が定めている要件。例えば、2010年3月期にIFRSを適用することを考えると2008年4月1日時点での貸借対照表をIFRSベースで作る必要がある。そして2009年3月期はIFRSと日本の会計基準の2つで財務諸表を作成する。過去の決算をあらためて別の基準で出す作業は、多くの企業が避けたがる。そのためこれらのすべての条件を満たすことができる企業は「数社しかいないだろう」と三井氏は見る。

強制適用は段階適用の可能性

 任意適用についての記述が明確になったのに対して、強制適用については将来の選択の可能性を残した。強制適用をするかどうかの判断は公開草案と同じ2012年。中間報告案では「前後し得るが、とりあえず2012年を目途」とした。実際に強制適用が決まった場合の適用時期は、公開草案では「(2012年から)少なくとも3年間」として2015年からの適用を示唆していた。対して中間報告案では「2015年または2016年に適用開始」と明記した。時期については中間報告案はより明確になったといえるだろう。

 将来の変更の可能性が高まったのは強制適用の方法だ。公開草案では「上場企業の連結財務諸表を一斉にIFRSに移行」と一斉適用を明記していたが、中間報告案では「段階的に適用するか、一斉に適用するかは、IFRSの強制適用を判断する際に、改めて検討・決定」として、段階適用の可能性を残した。強制適用の時期を2015年または2016年としたのも、段階適用の可能性があるからだ。

 段階適用か一斉適用かの判断は起業の準備状況や各国のIFRS適用状況、米国の状況を見定めて判断する考えだ。アジア諸国では2010年以降にIFRSへの移行が始まり、米国も2014年には一部企業からIFRS義務化が始まる見込みだ。しかし、オバマ新政権となり、金融危機に苦しんでいる米国ではIFRSのアドプションが前政権のロードマップどおりに進むかは微妙。IFRSの早期適用を目指す日本企業の多くは米国のニューヨーク市場などに上場していることもあり、米国のロードマップ変更から大きな影響を受ける。

 三井氏は「世界の状況が今後どうなるかは分からない」と話し、「(強制適用について)フリーハンドは残しておく」と語った。2015年、2016年とする強制適用の時期がその年度を指すのか、暦年を指すのかについても「まだ細かいところは決めていない」として、日本企業の準備状況や世界でのIFRS適用状況を注視する考えを示した。

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